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偽勇者は世界を統一したいのです!  作者: 冥界
第五十五章 『雪花が彩る正義の形』
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第八百二十八話 『雪花は吹雪、火花散る』

「リンクヘッジさんっ! ご苦労様ですッ!!」


「リンクヘッジ兄貴ッ!」


「お疲れ様ですッ!」



 リンクヘッジに連れられ、クロノ達は作戦会議の場へと到着した。他と比べ少し大きめの建物の前には数名の男達が待機していた。彼等は姿勢を正し、ほぼ同じ動作でリンクヘッジに頭を下げる。



「なんだなんだ怖い人達がいるぞ」



「多分ラーナを拠点にしてる勇者達だ、ここの勇者はリンクヘッジさんの影響に染まってるんだ」



「まぁ悪い奴等じゃねぇ、祭りの当日はこいつ等も全力で国の防衛に回るからよ……邪険にしねぇで仲良くしてやってくれや」



「おいおいなんだそこの無表情なガキは、ここはガキの来るところじゃねぇぞあぁん?」



「ガキはお家でこたつとみかんでぬくぬくしてやがれおらぁっ!」



「国の平和は俺達が守るからよぉっ! 引っ込んでろおらぁっ!!」



「ひいい絡んで来たぞ!」



(絡んでんのかなぁ?)



 ガラの悪い勇者達に囲まれ、我等が切り札は戦意を喪失して震えていた。いつも通り情けない姿だが、見兼ねたリンクヘッジが一歩前に出る。



「馬鹿野郎共っ!! テメェ等の目玉は節穴かっ! こちらは流魔水渦の切り札だぞっ! 弁えろっ!」



「「「すいませんでしたっ!」」」



「ひぃ!」



 一斉に頭を下げられ、セツナは違う意味で震えている。多分何をどうしても情けない。



「悪いな嬢ちゃん、こいつら顔は怖いし頭も悪いしよく勘違いされんだよ」



「本当に勇者なのか……?」



「けど国を想う気持ちはマジなんだ、それだけは信じてくれ……もし気を悪くしたならすぐ俺に言ってくれりゃあ顔の形変わるくらい焼きを入れてやるからな」



「穏便な未来が待っている事を祈るぞ……」



「アホな漫才は良いから早く案内しなよ、レヴィは足疲れたよ」



「おっとすまねぇ、確かに他の奴等も待たせちゃいけねぇしな」

「お前等、他は揃ってんのか」



「はい、殆ど揃ってます」



「そんじゃ……最後の詰めといきますか……!」



 リンクヘッジはそう呟きながら建物の中に入っていく、クロノ達もそれに続くと、広間の中心に国の立体映像が浮かんでいた。



「なんだあれ、フローの発明くらいぶっ飛んでるな」



「お察しの通り、今回の作戦の為にラベネのお姫さんが用意してくれたもんだ」

「ちょっと良く分からない速さで色々進んで、つい最近用意されたもんなんだぜ」



「超絶天才に常識は通じないからな」



「あぁ、ビビったぜ」



(ここで突っ込むと色々面倒くさい事を切り札は知っている)



(レヴィも知ってる)



 凄まじい精度で空気を読み、セツナ達は己を優先する。フローのやばさを久しぶりに感じたクロノは周りを見渡し、マルス達の姿を見つけた。



「よぉ、元気そうだな」



「そっちもよく休めたようじゃないか、元気そうで心底苛立つよ」



「そんな無理に憤怒しなくても……」



「いや、単純に僕はお前が嫌いだからな」



「レヴィちゃ、レヴィさんくらい友好的な態度取ってみろよ」



「さん?」



「レヴィはマルスの器を脅してやったんだよ、あと友好的ではないよ」



 ちなみに今レヴィはセツナの腰の辺りに引っ付いてじゃれている、おかげでセツナの転倒回数はかなり抑えられていた。



「まぁ本人の意思を尊重するが、あまり染まるなよ」



「レヴィの嫉妬は誰にも染められないよ」



「愛、だね」



「うわ、出た」



 ミライがいつの間にかセツナとレヴィの背後に立っていた。とりあえず関わると話が進みそうにないので、クロノはマルスの方に避難する。



「で、今から何をするんだ?」



「今日まで何度か会議は進めてきたが、祭り当日の流れを確認していく」

「俺達は神聖討魔隊サンクチュアリナイトに対する最大の餌、配置場所は重要だ」



「……迎え撃つ準備は万全にするとしても、いつ攻めてくるかは向こう次第……不意を突かれるリスクは……」



「それに関しちゃ予測は出来るぜェ、奴等は十中八九吹雪が国を覆ってから動く筈だァ」



「ディッシュさん、その根拠って」



「祭りの最中特にこの辺は吹雪に包まれる、雪花吹雪とか言ったかァ? 元々祭りの安全処置の為に国は結界に包まれ国の一部を除いて雪は積もりもしない……猛吹雪でも安心安全でお楽しみ頂けちまう」



「それも結界の中での話、猛吹雪が吹き荒れている間は国の外には出ないよう注意される」

「吹雪の間、この国は一時的に閉鎖状態だ」



「温泉国の一件から考えれば、奴等は事前に内部に忍び込み……閉鎖と同時に内から暴れ出そうとするはずだァ、構成メンバーの顔も名前もほぼ情報がねェから忍び込みやすいだろうしなァ」

「まぁ切り込み役の三人の内二人を失ってるし、攻め方は忍び込み一択じゃねぇだろうが……事が起こるのは吹雪と同時なのは間違いねェと思うぜ」



「ドゥムディの保持してる能力の中には感知系もある、既に国中の人間は最低限のチェックは済ませ怪しい者は居ないと確認済みだ、ミライも能力でひっそり口を割らせ調査を進めてる」



「じゃあ雪花吹雪と同時、祭りの開催と同時に奴等は動くのはほぼ確定か」



「その前提で人材の配置は進んでるなァ、祭りの進行スケジュールもそれを見越して外部に流してる」

「最初の予定は国の外周だけ結界を緩め、そこに積もりまくる雪を使って大型雪像をどのグループが一番最初に作り上げるかって奴だ」



 大型雪像建設用の大通りがラーナフルーレには用意されており、国をぐるっと囲むように配置されていた。確かに過去も同じようなイベントは行われていたし、その為に用意された大通りは特殊広場と同じように魔法陣が仕込まれそれ専用の仕掛けが組まれている。



「吹雪避けの結界とは別に、元々仕込まれている緊急防衛用の結界……それに加えラベネの姫さんと流魔水渦が合同で組み上げた三つ目の結界で祭りの参加者達がひしめく観客席部分を覆う」

「緊急避難用に流魔水渦のゲートも仕込み、守りの布陣として戦える奴等を配置……」



「それに加え、今回の雪像イベントは僕達大罪の悪魔が参加すると外部に流してもらっている」

「大罪の悪魔率いる七つのグループがどんな規格外な雪像を作り上げるのかってね」

「吹雪で閉鎖される国、その外周に大罪の悪魔が全員アホ面で雪像をせっせと組み上げてるんだ、来れるもんなら来てみろよって挑発丸出しでね」



「そこを迎え撃つって? そんなの罠ですよって言ってるようなもんだろ、そこに飛び込んでくるわけ……」



「いいや来る、来ないわけが無いのだ雑種」



 何やら煌びやかな椅子に座り、さっきから踏ん反り返っていた傲慢が口を開く。



「……ツェンさん」



「奴等は正義を語った、大口でな」

「己が正義を貫く為ならば、大事なのは己が信念ただ一つ……舞台がどんな形でも関係ないのだ」

「我等のような巨悪が人の国を我が物顔で侵攻している……その事実に背を向けるのなら奴等の正義など塵同然……奴等は来るしかないのだ」

「傲慢故、奴等に選択肢など最初から無いのだ…………」



「傲慢故に引くに引けなくなった奴が言うなら、説得力が違うな」



「黙れマルス、悪魔が欲を貫けぬならそれこそ雑種よ」

「我等は後悔してはならん、背ける事も恥じる事も許されないと忘れるな」



「安心しろ、自分への怒りだけは忘れた事はない」



 その言葉を聞き、ツェンは目を閉じ顔を背けた。少し空気が重くなったが、そこにセツナを引きずったレヴィが顔を出す。



「って言うかレヴィの知らない内に雪像イベに強制参加させられてるんだけど?」



「なんだァ? 負けるのが怖くて自信がねェのかレヴィ?」



「捻り潰してあげるよ、能力の使用は当然オッケーなんでしょ?」



「当然だが能力の使用は禁止だ、身体能力だけで雪像を作り上げる」



「それとグループでの参加だからなァ、チームワークってのが大事だぜェ」



「ちなみにチームはもう決まってるのか?」



「その辺を今から決めるんだ、お前や切り札も参加してもらう」

「流魔水渦の精鋭や協力者達も、国の防衛と雪像チームに分かれてもらう予定だ」



「は? セツナが入ったチームが負ける未来しか見えないよ」



「虐めみたいな事言うなっ! でも私もそう思う! 今崩れてくる雪像に潰される未来が視えた!」



「変な未来視ないでよ、本当に起こりそうじゃん!」



「実質雪像チームは神聖討魔隊サンクチュアリナイトを迎え撃つ可能性が一番高い、だからそのつもりで気を引き締めて……」



「来なけりゃ次のステップに切り替えつつ、勝敗はきっちりつけるからなァ」



「やるからには負けないよ……」



「愛と愛のぶつかり愛なら……真剣勝負だよね」



「粋がるな、勝者は常に我と決まっている」



 作戦とは全然違う方向で火花が飛んでいる、このままでは作戦どころではない。



(まともなのはマルスだけか……みんな熱くなってるし……)



 残りの大罪を頼ろうと視線を泳がせるが、ドゥムディは離れた場所で真面目に他の人と話を進めているし、プラチナは床に転がって寝ていた。頼れる者が居ない事が分かったので、クロノは覚悟を決めた。



「クロノ、クロノ、私は切り札としてどうすれば……」



「セツナ、俺は向こうでリスクヘッジさん達と大事な話をしてくるからここは任せたぞ」



「え?」



「この作戦は失敗は許されない、出来る事を全力でやって、絶対勝とうな」



「え、うん……それは勿論だけど……」



「よし、頑張るぞ! おーっ!」



「おー?」



 そしてクロノは切り札を囮に火花を散らす大罪達から距離を取った。作戦と関係ない争いに労力は割きたくない。



「って待てっ!! 逃がすかっ!!」



 セツナに回り込まれた、そんな馬鹿な事が……。



「離せセツナ! この戦いに意味なんてない!」



「意味のない戦いに私を置き去りにするつもりか!? 尚更逃がすか!」



「離せセツナ! 俺は真面目な話をしにきたんだっ! 大罪同士の馬鹿げた戦いなんて勝手にやらせておけっ!」



「一緒に馬鹿をやろうじゃないか……ふふふふ……」



「ふざけてる場合じゃないんだよ! やめろおおおおっ!」



 セツナの道連れを喰らい、ずるずるとアホ領域に引きずり込まれていくクロノ。そんなクロノを遠巻きに見て、リスクヘッジは思わず吹き出していた。



「大した奴等だ、この状況で馬鹿やってやがる」



「あそこ何やってんすかね、真剣にやって欲しいっす」



「いいじゃねぇか、囮みたいにしてるがそもそも祭りなんだ」

「それに見ろよ、流魔水渦ってのはマジで狂ってる……この状況でも祭りを諦めてねぇんだ」



 そう言ってリスクヘッジは一枚の紙を叩いてみせる、書かれている内容は狂気としか言い表せないものだった。



神聖討魔隊サンクチュアリナイトなんかに何も奪わせない、全部守って祭りも成功させる」

「だったら大馬鹿大歓迎じゃねぇか、敵を倒す、みんな守る、祭りも成功させる……全員笑顔のハッピーエンドさ」



「いやきっついっすよ……」



「お前も勇者なら気張れ、守りたい笑顔があるから勇者名乗った筈だぜ」

「向こうが正義を掲げるってんなら、俺達も俺達の正義でお相手してやろうじゃねぇか」



 それぞれの正義を胸に、作戦会議は滞りなく進む。雪像チームも無事決まり、真剣勝負の場が整った。最後に勝つのは誰の正義か、最も優れた雪像は誰の物なのか。



 雪花氷祭りの、時が来た。



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