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偽勇者は世界を統一したいのです!  作者: 冥界
第四十九章 『大罪珍道中、切り札を添えて』
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第七百三十六話 『超絶進化』

「結局各国を襲った討魔紅蓮の奴等は一か所に集められてな、話を聞いたり罪状纏めたりと面倒なあれこれが沢山あったんだぜ? なんせ数が数だったからなぁ」

「特に能力持ちが癖が強いのなんの……うちを襲った奴にも洗ってみりゃ犯罪者スレスレの悪人が結構いたんだぜ?」



「ガルア様が仕留めた者など、討魔紅蓮の名を盾に好き放題やっておりましてね……エルルゥ・ホロウ行きとなりましたわ」



 ユリウス達から最近の世情などを詳しく聞くクロノ。話の途中、聞き覚えのある国の名前が出てきた。



盤世界ファンタジア24ヶ国の一つ、エルルゥですか」



「そうだ、エデンと同じく四大陸外の孤島にある国……そこにある監獄、エルルゥ・ホロウ」

「最大堅牢の監獄故、エルルゥのある孤島は監獄島とまで呼ばれてはいるが……まぁ国自体は普通だ、王も気さくだしな」

「大会の方針を決める会議にゃ出てないが、此度の世界中を巻き込んだ魔物関係の話にゃ耳を傾け割と協力的だ」

「悪魔騒ぎで取っ捕まった悪魔は流魔水渦が引き取っているが、悪魔にそそのかされたり利用されたり、同じように悪に手を染めたりしてる人間はエルルゥが引き受けてくれてる」



「あまりにも協力的で、裏に何か居るんじゃないのかと声も上がってはいますが……」



「あの国に関しちゃその可能性は極めて低い、なんせ王の能力が能力だからな」



「聞いたことがあります、『絶対真実クリアコール』でしたっけ? 王の問いに真実しか話せなくなる固有技能スキルメント



「そう、その力でもってあの国は王自らが罪人を裁き処罰を決める」

「地下深く続き、天高くそびえ立つ天上地獄の再現とも称される監獄、エルルゥ・ホロウ……天に近いほど罪を注ぐ罰は気高く身を焼き、地に深いほど永遠に近しい罰に沈む……どちらに入っても狂うか人が変わったように善人化するって噂だ」

「討魔紅蓮関係も悪魔騒ぎも、あの国にとっちゃ監獄を肥やしただけの些末な日常に過ぎねぇんだろうな」

「とはいえ世界中で一番動きがあったといえば、エルルゥだろうよ」

「そういえばカリアもそうだが、今回襲ってきた討魔紅蓮の内何人か国で引き取っただか?」



「国で?」



「一旦エルルゥで判決言い渡された奴を引き取った国が幾つかあんだよ、まぁ理由は国で色々あんだろうがな? まぁ許可下りてる時点でやべぇ案件ではないんだろう」



「エルルゥでは人だから、魔物だからと贔屓的な判決はなく、判決について反論等はあまり出なかったそうですよ」



「ふぅん……まだ行った事ないんだよな」



「向こうは気にも留めてないだろうが、急に牢獄にぶち込まれる数が増えたんだ、原因の一つであるクロノは顔出しておいた方が今後便利だと思うぜ」



「どういう意味ですか……」



「面倒かけるが今後ともよろしくなって、もしかしたらあらぬ罪で牢にお世話になるかもしれねぇぞ?」



 ケラケラ笑うユリウスと釣られて笑うロニア、勿論冗談だと分かっているのでクロノも笑いたかったのだが、何故か笑えなかった。更に言えば、何故か牢屋の映像が脳裏に浮かんだ。



「いやいやまさか……ははは……」



「勿論お前が牢に入ったら口は利いてやるさ、こいつはぶっ飛んだ阿呆だが犯罪とは無縁だってな!」



「トラブルとは縁がありそうですけどね、うふふ」



「いやいやいやいや……洒落にもならないですよ……」



「そういえばクロノ、お前聞いたか? 最近アゾットの王が何の気まぐれか表に出て来てんだぜ」

「錬金術をどうたらこうたら……ラベネの超絶天才も何日か前にアゾットを訪ねて来てるとか」



「え、フローが?」



 あの超絶天才は本当にフットワークが軽い、世界中を駆け回り今も何か開発しているのだろうか。



「ゲルトの件でも最後の一押ししてくれたし、近くにいるなら会っておきたいなぁ」

(それにアゾットの錬金王にも興味があるし……)



「お前の周りは変人ばっかりだな、疲れたらいつでもうちに休みにこいよな」



「人獣交えて、お待ちしておりますからね」



「ははは、その時は遠慮せず立ち寄りますよ」



 色々と興味深い話が聞けたため、クロノはウキウキで城を後にした。気配を探りすぐセツナ達と合流したのだが、セツナが真っ白な顔で萎びていた。



「一時間も経ってないのにどうしたんだ?」



「クロノ……レヴィ達に勝てない、私は無力だ……サソリの刺身は切り札より強かったんだ……」



 聞けばサソリを生で食わされたらしい、何やってんだこいつは。



「ボクは切り札に感謝してんだけどなァ、こいつァ、うめェ」



 暴食の悪魔が口からサソリの尾をぶら下げてる、一体何を見せられているんだ。



「っていうか全員食べたの? セツナ以外大丈夫だったの?」



「僕等は食べる物に好き嫌いなんて言ってられる立場じゃなかったしな」



「右に同じだ、食えるなら何でもよい」



「最初は抵抗あったけど、愛せば皆うましってね☆」



「レヴィは森育ちですので」



「そもそもおれにその辺の区別はつかん、無機物故」



「腹に入れば一緒じゃない? 面倒じゃんね」



「ボクは暴食だぜェ?」



「これは相手が悪すぎたなぁ」



 悪魔云々関係なく、彼等とセツナとでは人生経験に差があり過ぎる。セツナにサソリは早すぎたのだ。ちなみに護衛に付けた精霊達は護衛を放棄し姿をくらませ逃げたらしい。



「クロノにも見せてあげたかったよ、青ざめていくセツナちゃんを」



「クロノ、お前は一回精霊を教育し直すべきだぞ」



「それも相手が悪すぎるんだ」

「それよりちょっとアゾット行くから船に乗ってくれ」



「散歩感覚で拷問兵器に乗せるなああああああああああああああ!」



 実際メガストロークを使えばマークセージからアゾットへはあっという間だ。フローがいつまでアゾットにいるか分からない為、善は急げとアゾットへ急発進することにした。メガストロークは砂漠を突き進み、砂も岩も掻き分けアゾットを目指す。



「海上だけじゃなく、陸も走れるのかこの船は」



「今を生きる超絶天才が物理法則を無視して作った化け物だからね」

「でも驚いたよ、乗った瞬間勝手に目的地がアゾットになったのは」



 こちらの思考を勝手に読み取ったのか、それともフローが遠隔操作か何かで誘ったのか。なんにせよ少し怖い。



「少し出来過ぎじゃないのかな、嫉妬しそうだよ」



「私は嘔吐しそうだぞ……」



「あわわ、セツナちゃんがぐわんぐわんしてる」

「でも凄いよね、まるで生きてるみたいだよ」



「あははフローがどんだけ超絶天才でもメガストロークが生きてるなんてまさかそんな」



『あ、フーちゃん! バレちゃったよ!』



 嘘でしょ勝手にこの船喋ってる。っていうかこの声凄い知ってる。



「……ファクターさんの声が操縦席から……」



『流石に察しが良いの、しかしもう少し早く気づくと思っていたのじゃが……お主妾の超絶最高傑作を放置した挙句流魔のアジトに暫くほったらかしにしよったな?』



「仕方ないじゃん……流魔水渦のみんなワープ多様するんだもん……」

「大体察したよ、つまり放置してた間にフローが遠隔でなんかアップデートしてたわけね」

「んでそれも限界だから、近くにいる俺達を強制連行したわけだ」



『人聞きの悪い事を、大体正解じゃ』



「あってんじゃねぇかよ、こっちには大罪の悪魔が全員乗ってんだぞ? 少しは警戒するもんじゃないの?」



『ルトから大体聞いておる、何を今更警戒することがあるというのじゃ』



 世界に轟く超絶天才の情報網は流石の一言だ、説明なしに話が爆速で進んでいく。



『なんでも地獄が狂ってワープの鍵が使用不可能になっとるらしいな?』



「あぁ、おかげでメガストローク再起動だ、滅茶苦茶な速さで助かってるよ」



『それは何よりじゃが、妾には全て分かっておるぞ?』

『そろそろ物足りなくなった頃じゃろう?』



「ごめん、凡才な俺には超絶天才のお前が何を言ってるのかわからないよ」



「はっ! レヴィ! ミライ! 切り札の危機感知が警報を鳴らしているぞ! あの会話を止めろ!」



 なるほど、セツナは日々成長しているらしい。クロノも同じような感知が警報を鳴らし始めている。



「レヴィは面白そうだから傍観するよ」



「何があっても私達が居るから大丈夫だよ!」



「今まさに何かが起ころうとしているんだよ!」



『お主も大罪七人に口うるさい切り札を抱えて大変じゃろう、これから世界を巡るというのにワープも使えん、頼りのメガストロークも力不足と不憫極まりないのぉ』



「力不足の意味を理解していらっしゃらない? 超絶天才のフローラル様が? いやまさかそんな馬鹿な」



『聞いたぞクロノ、お主ルトのところの天使に案内され天界へ行ったそうじゃな?』

『ゲルトの戦いの際、妾も悪魔共の魔力を蹴散らす為ケーランカと天界の助けを借りたのじゃ』



 挑発して話を逸らそうとしたのに、超絶天才の前ではそれすら叶わない。



『そして今、妾はかの錬金王の助けも借りて新たなる領域に至った』

『ケーランカの魔術理論、アゾットの錬金王の新理論、そして妾の超絶天才の閃き、その全てを使ってお主の相棒を進化させてやろうではないか!』



「フロー? メガストロークのスピードで俺は十分助かってるよ? これ以上を望むと物理法則が壊れちゃうし周囲の被害が怖いよ? 見て今も巨岩を弾丸の如くぶち抜いてそっち向かってるんだ」



『確かに被害が大きくなるのが問題じゃった、だが妾は視点を変え全ての問題を解決したのじゃ』

『障害物があるから問題なのじゃ、今度のメガストロークは、飛ぶ』



「誰だそいつを超絶天才とか言った奴は! クロノ今すぐに通信を切れぇ!」



「こいつ面白ェなァ」



「おれも興味がある、この狂った船が更に進化するだと?」



『聞けばお主天界にも拠点が出来たそうではないか、ならばお主の相棒でそこに行けねば話になるまい』



「確かに、今も会話が成立してないもんね」



『本来天使の導きが無ければ至る事の出来ぬ天界……しかし案内人の許可も出ている故天の加護を得た最強の船と姿を変えるじゃなろう』



 ベルさん、お前何してくれてんだ? ニッコリ笑顔のクソ天使が脳裏に浮かび、流石のクロノも殺意が零れそうになる。



『こっちに着き次第改造を始める、なぁに準備は出来ておるのだ』

『安心しろクロノ、お主の道は何物にも阻ません』

『お主には、この超絶天才がついておるのだ! ふははははははっ!』



『途中でごめんね、ファクターです! フーちゃん久々にやる気満々で楽しそう!』

『楽しそうなフーちゃんが可愛くてブレーキ忘れちゃった、ごめんね? じゃあ待ってるねー!』



 通信はここで途切れた、さぁなんだか大変な事になってしまったぞ。



「飛ぶ、かぁ……どうしようなぁ……」



 きっと速い、今よりずっと遠慮なしに速い気がする。通信は切れたけど操縦席の辺りにあるモニターになんか文章が浮かんでる。『気を付けてね』ってもうこれ脅しだろ。チラッと後ろを見てみると、大罪の悪魔達はなんか面白そうに笑ってる。セツナは死刑宣告を受けたみたいに固まっていた。



「あー……まぁお互い頑張ろうな」



「こんな休暇嫌だああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」



 悲鳴を乗せ、船は進化が待つ錬金国を目指す。今度の船は、空を飛ぶ。



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