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偽勇者は世界を統一したいのです!  作者: 冥界
第四十六章 『欲と罪、暴走戦線ゲルト・ルフ』
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第六百三十二話 『神の裁きか、人の怒りか』

 国が揺れる、戦いの音が響き渡る。そんな中、玉座に座ったままの王を見てカラヴェラは呆れたように息を吐く。



「認めなよ、してやられた事をさ? 下手に強がってもダサいだけだよ」

「ま、僕も大口叩いた結果魔本を奪われて良いとこなしだったわけで、偉そうに出来ないわけだけど」



「相変わらず生意気なガキだな、お前が今どこに踏み込んでるのか分かってんだろうな」



「えぇ勿論、戦争国家の王、覇王の御前でございますよ」

「中身スカスカの王様ばっかりの中、僕は貴方を気に入ってたんだよ? 僕と同じ愚かな夢の為に奮起する貴方が」

「この地は、この国は、ずーっと昔から争いともに在った……他国に、他種族に喧嘩を売っては奪い、傷つけ、成り立ちを知れば知るほど僕は思ったよ」

「王位継承の度に、汚れ切った手から血みどろの王座を譲り受ける…………名誉? 光栄? あるわけないよね、重いし、なんてもんを残し継がせてんだって」

「先代が屑だと、苦労するよねぇ……お互いにさ」



「同情か?」



「まさか、そんな何の価値もないものあげないよ」

「そもそも、外から何されても揺らぐ覚悟じゃあないでしょう」

「貴方が覇王を名乗ってから、この国で弱者は死ななくなった、昔は居ても死んでいた、貴方が王になってからはその存在は死なず継続するようになった……最後の道ラストストーリー、明らかに詰んでいる命ですら、この国ではギリギリ生きる事が出来てる」

「奪い、傷つけ、ゲルトって国はもう引けないところまで来ていた……だからこそ貫き通す、世界の敵として全ての戦いを、必要悪としての存在を、世界中の憎しみを一身に、引けぬのなら今のまま、悪のまま正義の為に、貴方の在り方は嫌いじゃあない」

「偽りなき覚悟だからこそ、本気の欲だからこそ、こんなにも悪魔を引き付けたのだから」

「負けてちゃ世話ないけどね、あっはっはっは」



「返す言葉もねぇが、だからってむかつかないわけでもねぇぞ」



「おー怖い怖い、殺気が漏れてますぜ」

「世界の憎まれ役、譲らぬ悪役、確かにどんな物事にも敵が居た方が進行はスムーズだ、ゲルトは粗暴で乱暴で、救いようのない最低な国…………貴方がその道を貫いて、その役に徹するっていうなら別に止めはしないよ」

「貴方の覇道は、邪魔しない…………だけどさ、別に悪役に味方が居てもいいじゃないか」

「どんな命にも、舞台がある、正義か悪かなんて見る者にとって変わるんだ」

「舞台裏を知る奴が居てもいいし、裏で手を取ってもいいじゃないか」

「だって僕達は、どんな手を使っても自分の理想を形にしたいのだから……王として、その覚悟を持って舞台に立っているんだから」

「そもそもこの先、ゲルトにはクソ国代表として在り続けて貰わないと僕も困るんだよねー」



「はぁ……よく喋るガキだな」



「先代とは違うんですよ、本音は吐き出さないと」

「さぁ覇王、リライト・ナクト…………覇道にちょっかい出した悪魔に反撃しようじゃないか」

「嫌って言っても、協力するからな? そもそも同盟の件、断ってないんだろう?」



「魔の渦との件か……確かに断ってはいない、そもそも返事もしていない……」

「我が剣に絵札が接触してきたが、まさかこうも突然とはな」



「こっちの歩幅に合わせてくれる運命なんて存在しないよ、見極めが大事なのさ、乗っかるタイミングのね」

「世の中は今大きく動いてる、良い方向か悪い方向か分からないくらい大きく渦を巻きながら」

「お互いにとって良い方向にしたいじゃないか、だから手伝ってよ」

「勝たなきゃ、未来も拝めないぞ」



「ふん……」



 二人の王は、外に目をやった。眼下の国は魔法陣の光に照らされ、時折破壊の音が響いている。もはや敵側にも余裕は無く、ヤケクソ気味に暴走し暴れている状態だ。制御を失った魔法陣は爆発寸前、残った悪魔も好き放題、普通に戦うより被害を抑えるのが難しい状況。




 そんなカオスの中、クロノ達は一番大きな破壊音が響く場所、デモリションが暴れている場所を目指していた。



「クロノ! 本当に信じて良いのか!?」



 震える声でセツナが叫ぶが、クロノからすれば信じない選択の方が無い。あの超絶天才はいつだって常識を粉砕し、奇跡の大安売りをしてくれたんだ。



「大丈夫、氷だって言った通りぶっ壊れただろ?」

「どんな困難も、超える隙が絶対にあるもんだ、役者が揃ってるなら後は信じてりゃいい」

「そうだろ、フロー」



『信じられているのなら、それに応えるだけじゃな』

「さぁ皆の者、新兵器の産声を聞くがよい!」



 フローは今、ケーランカに居た。目の前の巨大な装置を見つめ、隣に立つ人物に頭を下げる。



「突然の来訪、及び協力に感謝する……ケーランカの王よ」



「いえ、実際に貴女の手伝いをしたのは我が国の魔術師達ですから」



「失礼な話じゃが、復興中のケーランカでここまでの支援を受けられるとは思っておらんかった……ぬしにも立ち直る時間が居ると思っておったからな」



「はは、お姫様のフリもせず……言いたい放題になりましたね貴女も……到着直後とはえらい違いだ」

「流魔水渦から全部聞いているにも拘らず、この国を頼ったのは魔術大国だからですか?」



「魔術大国であり、お主が折れずに踏ん張ったからかの」

「前に進む力のある者が上に立ったのなら、この国は前よりずっと強いと思った、だから力を借りたかった」

「悪魔に一矢報いたいのは、同じじゃろうて」



「……私はただ、もう二度と間違えたくないと思っただけです」

「自分の夢に、記憶に、恥ずかしくないようにと」



(…………変わったの、国の者が向ける目も前とは違う)

(不思議な物じゃ、傷つき、壊され、それでも前よりずっと良く見える……クロノ、お主の関わった場所、全てがそうなっていくようじゃ)

「故に、ゲルトもこのまま潰されるわけにはいかん……この先どうなるか、可能性を殺すわけにはいかんのじゃ」

「聖なる力の象徴、ユニコーンが国の復興を手伝っているとは思わぬ誤算じゃったが……おかげでクオリティは向上した……起動せよ! 『悪魔発見器グレート1号』!」



 複数人の魔術師から魔力を流され、巨大な機械が輝き始める。同時に、フローが懐から通信機を取り出した。



「ルト、こっちは準備が出来たぞ」



『はぅあ! フローちゃんの声可愛すぎだろ染み渡る~!』



「おい、今は大事な……」



『分かってる分かってる……こっちも準備オッケーだし、協力者さんも配置に付いてるよ』

『これもクロノ君の人脈のおかげですねぇ……色々な奇跡が繋がっているような気がするよぉ』



『待て待て待てーー―ッ!! これに関してはベルちゃんにも感謝してもらいたいんだがー!?』



 通信にノイズ混じりで入ってきたのはベルの声だ。その声を聞いたフローは安堵したような顔で、後方の魔術師に合図を送る。巨大な機械の上部が開き、銃口が空に伸びていく。



(悪魔の力を感知する機械……それ自体は開発に時間はかからなかった……魔法陣のサンプルも難なく手に入り、結果『特定の魔法陣及び、それを生み出している悪魔』を感知、ロックオンする機械は出来上がった)

(だが、ここからゲルトは遠すぎる……流魔水渦のゲートを通じて移動させるにしても、現場は戦場、起動するのに必要な魔力を扱えるものが都合よく集められるのか、こちらから術者を移動させる上での危険度、小さな問題点は山済みじゃった)

「それを一手で解決出来るとは、まさに天の恵みかの」

「空の上、天界か……片道分の魔力ならばこの国の魔術師達で捻り出せる…………託したぞ」



 青い閃光が空に放たれる。まるで彗星のようなそれは雲を突き破り、遥か上空に居たベル目掛け突き進む。



「うっへぇ怖すぎでしょ!? なんだっていっつもこんな役回りかなぁ!?」

「そりゃ、ベルちゃんが扉の全権持ってるから仕方ないって言えば仕方ないですけどぉ~、もぉベルちゃん頼られ過ぎて困っちゃう! って言ってる場合じゃねぇこのままじゃ塵になる塵にっ!」

「んじゃまぁ、四大天使及び天界の全天使ちゃん!、起こしてくれたクロノ君に報いなさいっ!」



 ベルが開いた扉に魔力が吸い込まれ、天界に降り注ぐ。悪魔探知の魔力の効果から、天界の天使達は下界に無数のマークが浮かび上がるのを感じた。



「来たか、ベルの言った通りだったな」

「本来なら四大天使の力をむやみやたらに使うわけにはいかんのだが、フェルドさんが必要としているのならば仕方あるまい……!」



「…………ッ」



「コリエンテが大変だって、ガブちゃん最近わたわたしてたもんねぇ」

「ここは一発、ドカンとやったろうじゃないのさ!」



「下の天使ちゃん達、準備オッケーだってー!」

「よぉし! いっくぞー!」



 悪魔の魔力をロックした天使達が、各々の力を天界より降り注がせる。それは天罰か、光の雨か、閃光がゲルト・ルフを照らし、国を輝かせる。邪光を放ち暴走していた魔法陣が、全て粉砕された。それは暴走状態にあった悪魔達を正気に返らせ、窮地に立たせるには相応しい衝撃だ。光の雨が止んだ瞬間、ゲルト周囲に黒い扉が現れる。中から現れたのは、流魔水渦の援軍達だ。



「さぁ可愛い可愛いあたいの子、戦争に幕を引こうじゃないか」



「帳は下りた、行け、クロノ」

「後は、お主が決めてこい」



 絶望は散った、夜を抜けるまでもうすぐだ。



「行くぞセツナ、もう一頑張りだ」



「ひゃあ……」



 一瞬の輝きの後、国の様相が大きく変わる。それを見ていた二人の王が、思わず噴き出した。



「本当にぶっ飛んでるよね、あれと馬鹿正直にやり合うなんてないない」

「肩を並べた方が得策だって、分かるでしょ」

「今は利用してやるかとか、適当な言い訳並べて立ち上がりなよ」



「心底不快だな、散々利用され傷心なのだが」



「それでも立つのが、覇王だろ」

「安心しなよ、見せ場はまだ残ってるからさ? 全部終わった後の覇王様の威厳直しのお手伝いもしてあげようか?」



「笑わせる、目撃者全員消してやっても良いんだぞ」



「わぁお、頼もしい~」

「んじゃ、行きますか」



 戦いは、クライマックスへ。



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