表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
偽勇者は世界を統一したいのです!  作者: 冥界
第七章 『駆ける獣、吼える獣、差し伸べる人』
62/875

第六十話 『忠義を超えて』

 クロノの幼い頃の記憶は酷く曖昧だ、靄がかかったように霞んだ幼少期の記憶。母親と各地を転々と巡っていた記憶よりもさらに昔、自分は高台から空を見上げていた。



 普段の星空とは違う、虹色に輝く星がクロノを照らしていた。クロノはその星に目を奪われていたが、その傍らに立つ人物が思い出せない。



 母親では無い、その人物の顔が思い出せない。



 時間が来た、別れの時間だ。



 その人物が微笑み、クロノに別れを告げる。



 その言葉の意味が、まだ幼かったクロノには理解できなかった。



 ただ、酷く悲しくて……。



 その悲しみさえ……記憶の闇に消えていく……。



 声も届かない、聞こえない。



 それでも、忘れちゃいけない気がしていた。




















「……ん」



 目を覚ますと、自分の体は布団に寝かされていた。魁人達の拠点のようだ、クロノはしばらく、天井をボーっと見つめていた。





(夢……またあの夢か……)





 何度か同じ夢を見たことがあったが、意味が分からないのは今も昔も同じだった。そもそも自分の記憶なのかも定かでは無いのだが、決まってこの夢を見た後は胸が苦しくなる。



 そして、自然と涙が頬を伝っていた。




「……どうなったんだ……あの後……」




 状況を把握する為、クロノは体を起こそうとする。しかし、体はその行動を拒絶し、激痛で答えた。




「……っ!!」




 その痛みにクロノは胸を押さえようとするが、左手もまともに動いてくれない。どうやら、想像以上に自分の体はボロボロらしい。



 痛みに耐えていると、そんなクロノに気がついた者が現れた。






「……クロノ?」






 枕元から声がする、目を向けるとエティルがそこにいた。






「……エティルか? おはよ……」







「クロノ~~~~~~~~~~っ!!!」






 言い切る前にエティルが飛びついてきた、その衝撃で体が悲鳴を上げる。






「痛ぇっ!? エティル痛い! 痛いって!」






 だが、自分の肩に頭を擦り付けているエティルは震えていた。






「よか……った……クロノよかったよぉ……!」






 泣いていた、体を小さく震わせて。クロノがそれに気がついた瞬間、アルディが姿を現した。





「……おはようクロノ、随分と長く眠っていたね」





「アルディ……おはよう……?」





 目覚めの挨拶に応えるが、アルディはなにやら怒っている様子だ。




「……あの、何かお怒りですか」






「……怒ってるわけじゃないよ?」




「ただ、心配してただけだ」




 そう言いながら、枕元に腰掛ける。




「無茶を通り越した結果、君は三日間眠っていたんだ、死んだと思ったよほんと」


「契約して数日で契約者が死んだとか、笑い話にもならない」




「……本当に心配したんだ」




 アルディは顔を伏せていた。自分がどれだけ心配をかけてしまったのか、クロノは理解する。




「クロノ、これは僕達の勝手な想いだ」

「だから、君は気にしなくてもいいんだが……」



「僕も、勿論エティルも……もう契約者を失うのは嫌なんだよ……」

「もう、あんな思いは御免だ……」





「だから……少しは自分の事も大事にしてくれ……」





 自分の暴走でどれだけ迷惑をかけたのか、それに気がつくのが遅すぎた。アルディもエティルも、嘗ての契約者のルーンを失っている。



 納得のいく別れでは無かったらしい、その時の傷は今でも残っているのだろう。その傷跡を、自分は故意ではないとしても……抉ってしまったのかも知れない。






「……ごめん」






 泣き続けるエティルと、顔を伏せたままのアルディに素直に謝るが、そんな一言で済む訳が無い。だから、クロノは続けて口を動かした。




 今出来る事は、それだけだから。




「アルディ、俺は死なないし、居なくならないよ」


「夢を叶えるまでは、絶対」







「……見事に根拠が無いね」







「うん、ごめん」


「けど、絶対だから」




 その言葉にアルディはしばらく黙っていたが、呆れたような顔で笑ってくれた。




「はぁ……じゃあ本当かどうか、付き合わせてもらうよ」


「……この先もね」





「あぁ、頼むよ」


「エティル、もう泣くなって……」





「だって……だってぇ……」




 エティルが泣き止むまで、何とか動く右手で頭を撫でてやった。自分をここまで心配してくれている精霊達の為にも、夢を叶えようとクロノは強く思うのだった。













 ようやくエティルが泣き止み、謝罪も済んだところでクロノが寝たままの体勢で話を切り出す。





「あの後、どうなったんだ?」




「クロノが意識を失った後かい?」

「結果から言えば、同盟は無事結ばれたよ」



「近い内に、両方の獣人種ビーストの長がマークセージを訪ねてくるってさ』

「どういった形になるかは、これからってところじゃないかな」





「そっか……よかった……」





「病気で苦しんでるウルフ族は、魁人君とケンタウロス族が対処に向かってるよぉ」



「心配は要らないから任せておけって、魁人君言ってたよ♪」




 魔物との対処法など、素人のクロノとは比べ物にならない知識がある魁人なら、大丈夫だろう。




「それで、意識を失ったクロノはカルディナちゃんが運んでくれたんだよぉ」




「僕達から礼を言っておいたけど、改めてお礼は言っておきなよ?」




「あぁ、分かった」




「それと、回復魔法をかけ続けてくれていたエルフの2人組にもね」




 そういえば、あの二人は何故あの場に居たのだろうか……。せっかく再会できたというのに、まともに話も出来ていない。




 お礼も言わなければならないのだ、クロノはどこに居るのか聞こうとするが……。




「えぇいっ!!! 貴様いい加減にしろっ!!」

「誇り高きケンタウロス族を何だと思っているのだっ! 叩き斬るぞっ!!」




「こちらも探究心を貫く誇りがあるのですよぉ!!」




「どこを触っているんだこの不埒者がぁ!!」




「うはぁ……ケンタウロス族初めて見ましたぁ……もっと詳しく!!」




「何なんだこいつはっ! エルフはこんなんばっかなのかっ!?」




「出来ればそいつと一緒にしないで貰いたいんだが……」




「そちらのお嬢さんは鬼人種オーガと人とのハーフとお聞きしましたがっ!」




「ひゃわぁ!?」




「出来ればお話をお聞きしつつ、色々と調べさせて貰いたいのですよぉ……うへへぇ……」




「あ、あの……ご遠慮させていただきます……」




「未知を逃がしてなるものかぁ!!」




「きゃああああああああっ!?」




 どうやらすぐ近くにいるらしい……。





「……一気に会うのが嫌になったんだが」





 果たして今の自分の精神で持つのだろうか……。そんな不安を抱いていると、部屋の中にセシルが入ってきた。





「……起きたのか」





「あっ……うん」





 意識を失う前に恐ろしい勢いで攻め立てられたのを思い出し、若干身構えてしまう。セシルは黙って、壁際に腰を降ろした。



 やはり人の目が有る為か、人間化で尻尾などは隠している。




「……今回は運が良かったな、貴様の命は運の上に成り立った」

「今後はそうはいかんぞ」





「……分かってる」





「大体、『魔核』を有する相手に貴様如きが挑むなど……正気では無いんだぞ」

「本来貴様は死んでいた、それを……」





「セシルちゃんは変わらないなぁ……素直じゃないなぁ~♪」




 エティルがニヤニヤしながら口を挟んだ。




「クロノの命が助かったのは、偶然じゃなくて必然だよぉ」



「クロノが頑張ったから、皆が助けたいと思ってくれた」



「だからクロノは助かったんだよぉ」



「セシルちゃんだってそうな癖に~♪ 大体分かってるのにツンツンしちゃってぇ~♪」





「エティル、焼かれたいのか?」





「図星なんだろ? 戦闘中にマークセージに飛んで行っていたし」





 アルディが追い討ちをかけた。





「僕が気がつかないと思ったかい? クロノが心配で居ても立っても居られず、結局手を貸した」



「エティルの言うように素直じゃないなぁ、あの頃のままだね」






「……今日は随分とそいつを庇うのだな?」






「顔が赤いよ?」




 アルディの言葉に、セシルがプイッと顔を背けた。その頬は確かに赤く染まっている。セシルは今回も助けてくれていたのだ。




「勘違いするな、気まぐれだ」

「余りにも無様な姿に、見ていられなくなったに過ぎん」



「見てるだけと言うのも退屈だっただけだ、暇潰しに城に向かった馬の様子を見に行っただけだ」



「だから……」






「セシル、ありがとな」



「今回も、助けられたんだな」

「俺いつも誰かに助けられてばっかだな……」




 驚くほど素直に、お礼を言っていた。セシルは面食らったように停止してしまう。



 そしてばつが悪そうに顔を背ける。




「……貴様が不甲斐無いのは、今に始まったことでは無いが……」

「……助けられるのは、悪い事では無いと思うぞ」



「そう思ったからこそ、今回貴様は戦ったのだろう」






「……あぁ」



「いつか、俺もセシルを助けられるくらい強くなるよ」

「勿論、エティルやアルディの事も助けられるくらいにな」





「えへへ~♪」




「期待してるよ」




 精霊達と笑い合うクロノ、セシルはそれを見つめていた。どこか、切なそうな顔で。




(私を、助ける……か……)



(こいつは、本当に……)




 考えを振り払うように、セシルは急に立ち上がった。




「……貴様に話がある奴等が居る、そいつ等を呼んでくる」




 そう言って、そそくさと部屋を出て行った。




「……嫌な予感がする」




 その予感は的中する、ほんの数分後にだ。








 部屋に入ってきたのはレラとピリカ、そしてセントールだ。




「クロノ、良かった目が覚めたか」



「クロノ様、ご無事で何よりですよぉ」



「あ……無、無事で何よりです、うん」




 セントールの様子が少しおかしい、部屋の隅で正座するように固まっている。馬の下半身を器用に折り畳み、素晴らしく綺麗な姿勢のまま、……固まっている。





「……?」





 クロノはそれを疑問に思ったが、急にピリカが身を乗り出してきた。




「クロノ様っ! カリアではありがとうございましたっ!!」

「クロノ様のおかげで、王様に良くして頂いたのですよぉ!」




「図書館に案内してもらってな、色々と助かったぜ」




 そういえば、ラティール王に伝言を残していたのを思い出した。




「しかも鳥人種ハーピーのおまけ付き! 隅々まで堪能させて頂きましたよぉ!」




 ……ピュアには悪い事をした気がする。




「えっと……レラとピリカは無事に旅を堪能できてる感じだな」




「あぁ、族長から昔話を聞いた後に旅に出た」

「その後カリアでしばらく情報を漁っていたんだが、ラティール王にお前がウィルダネスに向かったと聞いてな」




「もう一度ちゃんと礼を言いたかったのもあってな、後を追って来たって訳だ」






「あはは、今は俺が礼を言う立場だよ」


「お前達が居なかったら死んでたかもらしい、ありがとな」





「何を言いますかクロノ様、今わたし達がここに居るのはクロノ様のおかげなのですよぉ」



「そうっ! クロノ様のおかげでわたし達は未知を沢山知ったのですよっ!」




 何かスイッチが入ったらしく、ピリカが立ち上がる。




「族長から聞いたエルフ族の英雄! カムイ=ライクンの話に始まり、この世に存在する、伝説とも言われる数々の種族をわたしは知ったのですよぉ!!」



「他者の精神を糧とし、その性質をその身に宿す事で成長する、水体種スライムの中で最も希少と言われる種! 天水体種ディムスライムっ!」



「数多の鬼を従え、伝説の武器『八戒神器はっかいじんぎ』の一つである『壊鉈鱗かいしゃりん・ラファグラス』の所持者とも言われる酒呑童子しゅてんどうじっ!」



「大昔に人間が生み出した種である機人種マシナリー、その核である機人核マシナリーコアを魔王様が奪い、生み出したと言う全ての機人種マシナリーを司る生きる司令塔こと魔生機甲・マクロディアッ!!」



「この世にはわたしの知らない種族や大物で溢れているのですっ! あぁ……見たい、触れたい、調べたいっ!!」



「特に! 違う種族同士の間に生まれた混血種は希少性が段違いです!」



「例えば人と龍王種ドラゴニアの間に生まれた希少種、幻龍種ドラゴニュートなんかはもう伝説とかいう言葉では生温いですよぉ!!」




 その言葉に、セシルの肩がビクッと跳ねた。




「そんな種族が目の前に現れたら……感動で昇天してしまうかも知れません……!!」




 その伝説を通り越した存在が、すぐ後ろに居る事をピリカはまだ知らない。




(……幻龍種ドラゴニュートって、セシルがそうだよな……)




 さて、言うべきか……。




「あの、ピリ……っ!?」




 口を開いた瞬間、セシルが殺気を向けてきた。目が言っている、『言ったら殺す』……と。






(あの目はマジだ……触らぬセシルに祟り無しだ……)






 伝えるのは辞めておいたほうがいい、自身の命の為にも。





「ピリカちゃんだっけ?」





「ふぇあ? おぉ! シルフなのですよぉ!」





「あたしはエティル、クロノの精霊だよ!」



幻龍種ドラゴニュートを見てみたいの?」




 寝ているクロノの上で寝そべるエティルが、そんなことを言い始めた。



 まさか……。








「セシルちゃんが、その幻龍種ドラゴニュートだよ♪」








 言いやがった、この野郎。




 瞬間、ピリカに電流が走った。それと同時、エティル目掛けてセシルが飛び掛る。エティルはそれを、ヒラリと避けた。





「貴様は死にたいのかっ!?」





「セシルちゃん顔怖いよぉ!?」





 ゆらりとセシルの背後に迫るピリカ、その目は正気を失っている。その気迫は、あのセシルが僅かに顔を強張らせるほどだ。




「……忠告するが、近づくな」


「近づくと、顔の形が変わると思え」






「その程度のリスクで、伝説の種を調べられるのなら……」


「わたしは命を賭けるのですよおおおおおおおおおおおおっ!?」




 飛び掛ったピリカに、容赦無くセシルは蹴りを入れる。しかしピリカは止まらず、そのままセシルを押し倒した。





「なっ……!?」





幻龍種ドラゴニュート……本物ですか……うへ、うへへへへ……」



「では、失礼致します♪」



 そう言って、ピリカは何かの魔法をセシルにかける。その瞬間、セシルの人間化が解かれ、翼と尻尾が姿を現した。





「ぐっ……貴様……!?」





「この真紅の鱗……翼の形……見たことも聞いたこともないのですよぉ……!!」




「本物キタコレッ!!」





 ガッツポーズと共に更なる未知を調べ上げようとするピリカ。その体が凄まじい勢いで、窓から外に吹き飛ばされていった。



 この場の誰も視覚出来ない速度で、セシルがピリカを尻尾で殴り飛ばしたのだ。





「はぁ……はぁ……はぁ……」





 セシルがあそこまで汗を流しているのを、クロノは始めて見た気がする。そして、エルフと言う種の本気も見た気がする。




「レラ、エルフって凄いな」




「あれと一緒にするのは勘弁してくれないか」




 疲れ切ったような表情のレラ、もう色々と諦めているのだろう。




「あの状態で放置するのは色々やばいからな、回収してくる」

「なんとか、落ち着かせる努力はしてみる」






「うん、頑張って……」





 部屋を出るレラに、クロノは心の底からのエールを送った。ちなみにこの状況を作り出したエティルは、クロノの中に避難していた。




(セシルちゃん……すっごい怒ってるよぉ……!)





(そりゃそうだろ……)






「……服が破けたので、着替えてくる……」


「エティル、覚えておけ」



 人間化が強引に解除され、翼と尻尾が現れたせいか服に穴が開いてしまったらしい。恐ろしく冷たい声を残し、セシルは部屋を後にした。




(ガクガクブルブル……)



(自業自得だね)



(アルディ君見捨てないでよぉ!!)




 自分の心に響く声、クロノは出来るだけ関わらないようにしようと、密かに誓った。精霊達の会話に巻き込まれないよう、クロノは部屋の隅のセントールに声をかける。




「あの、セントールさん?」



「さっきから何で、そんな隅で固まってるんだ?」




 その言葉に、セントールはゆっくりと立ち上がる。そしてクロノの近くまで寄ると、足を折り、跪くような体勢を取る。





「ちょ……っ!?」






「……クロノ殿、私は貴方様のお姿に深く……深く胸を打たれました」



「貴方様のあのお姿に、信念を感じ取りましたっ!」




 恐ろしいほど真っ直ぐ、こちらを見てそう言うセントール。その目は怖いほど、キラキラと輝いていた。





「あ、いや、そんな大層な事は……」





「何を仰いますかっ! 貴方様の自分を貫いた様……感動致しましたっ!」



「我等ケンタウロス族だけではなく、ウルフ族の心まで動かした貴方様の行動! 言葉!」



「私が知り得る言葉では表せないほど、私は感動しましたっ!」




 身を乗り出し、クロノの右手を取って熱く語るセントール。その気迫にクロノは押されてしまう。





「あっ、えっと……」






「私だけではありません、ケンタウロス族の多くが貴方様に敬意を表しております……」



「我等は忠義を重んじる種、誇り高き主に仕える事こそ、我等の望みであり幸せなのですっ!」



「人との同盟は対等の証、仕える事とは別物です」




「だからこそ私は個人的に、貴方様に忠義を示したいのですっ!」




 握られた右手に力が込められた、本気である。その気持ちは嬉しいのだが、出来ればそんな堅苦しいのは遠慮したい。




 少し考え、クロノは口を開く。




「えっと……正直良く分かんないんだけどさ……」



「忠義を示したいとかなんとかなら、一つお願いがあるんだけど……」







「何なりと……!」







「……俺と、友達になってくれないか」






 クロノは握られていた右手をゆっくりと引き抜き、自分から手を差し出す。




「種族なんて関係ない、他族とだって協力し合える」



「その証拠って訳じゃないけど、この手を取ってくれると嬉しい」



「共存の世界はきっと成せるって、俺の自信になると思うからさ」




 だから、笑顔で手を差し出した。セントールはその手を、迷わず握り返してくれた。




「やはり……クロノ殿は素晴らしいお方だ……」



「貴方様が我等の力を必要とするならば、必ずお力にならせて頂きますっ!」






「……ありがとう」






 また一つ、繋がりが増えた。確かにボロボロになったが、大切な物を得て、成し遂げる事が出来た。



 それだけで、満足だった。















「それと、人の王から伝言があります」



「『ゴタゴタが片付いたら礼を言いに行きたい、体もボロボロだろ? しばらく休んでな!』との事です」



「ロニア様も、ガルア・リカントもきっとクロノ殿に伝えたい事がある筈です」

「クロノ殿の体もまだ動ける状態ではありません、もうしばらくお休みください」



「警備の方はご安心を、いかなる賊が現れようとも私がお守り致しますっ!!」







「あはは……」





 果たしてゆっくり休めるのだろうか、多少の不安が残る。だが、今は体を動かせないのも事実だ。



 次の旅立ちまで、しばらく体を休めよう。そう思い、クロノは目を閉じるのだった。




























 その夜、マークセージの港にある存在が近づいていた。船が出入りする時のみ開く、大水門……この門に穴が開いている事を、マークセージの住人は気づいていない。



 門の穴を潜り、港のすぐ傍まで近づいた『それ』は海面に顔を出す。








「……にひひっ♪」








 海住種マーメイドの少女が笑みを浮かべ、見つめる方向にはクロノの眠る魁人達の拠点があった。



 次の物語の舞台は、既にクロノを待ちわびている。



長かった獣人種編もついに終わりです!


次章の情報は活動報告にて!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ