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偽勇者は世界を統一したいのです!  作者: 冥界
第四十四章 『脈動する大罪、コリエンテを駆けろ!』
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第五百七十話 『潜むは孤島?』

「というわけであっという間に到着しましたラベネ・ラグナ! いやぁ凄い船だったな!」



「あ、バロンさん声戻ったね」



「どうやらシトリンもこの俺の美声が恋しくなったようだな!」



(えっと……そろそろ不憫で……)



「馬鹿やってる暇はないよ、やる事やってよ立場が泣くよ」



「美少女の頼みとあれば喜んで、さぁコロン! シトリン! 情報を探るのだ!」



「あいあいさー、行くぜシトリン!」



 颯爽と飛び立つコロンは兎も角、ごそごそと人込みに紛れていく段ボールINシトリンは捕まらないか心配になる。確かな腕前はあるのだろうが、絵面が不安でデコレーションされ過ぎだ。



「っていうか一緒に動かないんですか?」



「彼女達は裏から! 俺は表舞台で聞き込みだ!」

「通信魔法もそうだが! 何かあれば俺は近場の何かと彼女達の位置を変えられる! 合流は容易いのだ!」

「情報とは真正面からぶつかって得られるもの、そして何気ない隙間から得られるものがある、多方面から探りを入れるのが俺達の仕事だ! 後手後手に回りただでさえ後れを取っている現状僅かな綻びも逃すわけにはいかない!」



「おぉ……意外と真面目な……」



「むっ! 今角を曲がった人物凄い美人だったな!? これは俺の勘が逃すなとっ!」



「真面目にやれぇっ!」



「頭が痛くなってきたよ、嫉妬する暇もない」



 クロノ達は横道に逸れようとするバロンを引きずり、とりあえずラベネ城を目指す事にした。道中、何やら人込みを見つけ目を向ける。そこには崩落した塔があった。



「ラベネの中央塔か、情報はこっちにも届いてるよ、ヘディル・フィアーと傲慢の襲撃で崩落……精霊狩りを器とした強欲と多数の技能冊スキルブックを損失したと」

「撤去作業は流魔水渦も手伝ってるが、まぁすぐには終わらないよね」



「…………派手にやられたな」



「全くじゃ、不甲斐ない」



「!? フロー!?」



 ラベネ・ラグナの誇る超絶天才、国の姫君が作業着姿で撤去作業に当たっていた。向こうには相棒の機人種マシナリー、ファクターの姿も見える。



「何してんだ姫様が直々に」



「むしろ前線に妾が携わらない場面があったかの?」



「そうだな、普段通りで何よりだ」



「クロノ! 誰だその子!」



「相変わらずじゃのぉ流魔の切り札は、世が広く深いといえど、この超絶天才の名をすっぽり忘れられる奴などお主くらいじゃて」



「はっはっは! まぁた知り合いかぁ! ごめんなさい切り札の頭はスッカラカンなのです」



「やぁやぁフローラル姫、セツナちゃんのご無礼はどうか俺の煌めきに免じて」



「話は既にルトの方から聞いておる、共々悪魔共に振り回されているようじゃな」



 付き合いの長さからだろうか、フローは慣れた様子でバロンをスルーする。相変わらず異次元の手捌きで作業を進めながら、珍しくフローは溜息を零す。



「すまんの、超然天才としては切腹物じゃ」



「何言ってんのさ急に」



「大罪の襲撃を許し、魔本を奪われ捕えていた罪人を器とされおめおめと逃してしもうた」

「その際他の罪人を犠牲にしてしまった、罪人とはいえ、正当な裁きを下せず悪魔の手にかけてしまった」

「封じていた多数の技能冊スキルブックも奪われ、大罪の糧となり、挽回の機会もなく傷ついた自国の処置で手一杯……情けないのぉ」



「あー久しぶりクロノ君! ごめんね今フーちゃんってばネガティブモードなんだよぉ」



「珍しいな、フローがこんなに落ち込むなんて」



 自信が銃を構えて大暴れしているような子だが、ファクターとの再会以降は年相応の反応を良く見せるようになっていた。今回の件については油断や慢心といった点が無くても避けようが無かったように思うが、それでもフロー的には堪えたようだ。



(…………励ますような事言った方が良いのかな…………)

「なぁフロー、そんな落ち込むこと」



「フローラル姫、王様からご連絡が」



「フローラル姫、工房に盗人が」



「フローラル姫、開発に支障が」



「うわぁっ!?」



 複数体の機人種マシナリーが順番にフローに声をかける、いつの間にか十体以上綺麗に整列していた。



「あぁ順番に聞こう、そっちの対処は……」



「なんなの!? 何が起こってるの!?」

「っていうか向こうでデケェ機械が闊歩してるんだけど!? 治安の悪かったラベネがメカメカしてるラベネになってる!?」



「あぁ、向こうのおっきな機械は前にフーちゃんが天焔闘技大会の警備用に作った奴の完成形だよ! 『警備員君+』改め『アルティメットガードマン』です!」



「改め過ぎだろ原型がねぇよ名前にも見た目にも!」



 前は二足歩行の人型だった筈だが、四本足の円盤状になっていた。通行人に混じって大路地を普通に歩いている。



「えへへ、見た目のモデルは機甲洞マシナリードームなんだよ」

「今ラベネはあのガードロボと、機甲洞マシナリードームからの援軍で警備体制マックスなんだ」

「毎日毎日頑張るフーちゃんの負担をどうにか減らす為に……ピット姉ちゃんやマクロディア様に手伝って貰って機人種マシナリーのみんなを援軍に呼んだのだ!」



機人種マシナリーは情報を全員が共有出来るからね、一人一人を広範囲に配置すればそのネットワークはあらゆる面から強力だ、この国のトップは優秀なブレインになれるし尚の事だろう」



「そうなの、そのせいでフーちゃんの作業効率が上がって尚更休んでくれないの……お姉ちゃん悲しい……」



「フローラル姫、お昼休みに行ってきます」



「おいこらぁっ! あたし達は疲れないだろフーちゃんを休ませろポンコツがぁっ!」



「フローラル姫、今日の作業は私が」



「待ったぁっ! フーちゃんの隣はあたしのだから!!」



「フローラル姫、王妃様がお弁当を」



「うがああああああたしの妹に群がるなぁ!!」



「ファクターさんやピットさんの影響で順調に今の機人種マシナリーはバグっていってるんだろうな……」



「ルーンの時代並にマクロディアがおかしくなりそうだよ」



「おかしくなった結果がこれじゃねぇの、俺は良いと思うがな」



 機人種マシナリー達はみんな表情豊かにフローを取り巻いている、感情が無いだなんて嘘みたいだ。メカメカオーラにビビって震えている隣の切り札の方が、よっぽど表情筋が死んでいる。



「忙しそうなところ悪いけど、こっちの用事も聞いて欲しいかな、嫉妬しちゃうよ」



「その娘が嫉妬の大罪か、色々と複雑な事になっておるようじゃな」



「大罪組は悪い事をしようとしてる、敵で間違いないし戦うことに躊躇いはないよ」

「けど聞く限りじゃ大罪の悪魔は訳ありだ、話し合えるならそうしたいし、救えるなら救いたい」



「ルトから聞いた最新の話では、ゲルトを舞台に何かが始まろうとしている事、そして怠惰の悪魔の奪還が鍵との事じゃったな」



「怠惰の悪魔、プラチナの能力は嫉妬が留まる事を知らないからね」

「プラチナの考えは読めなくても、利用されるだけで絶望たっぷりだよ」



「ふむ……ゲルト関係は良く分からんが、手の空いた時間に手の届く範囲の調べ物は進めておる」

「この前もラベネの近くを嗅ぎ回っていた悪魔を叩き潰し、そちらに引き渡したところじゃ」



「えぇ俺達の本部で手厚く保護してますとも、上手く情報を引き出せれば良いんだけどねぇ」



「悪魔を暴き出す魔道具は直に完成する、次にラベネに噛みついた際は我が才能と機人の生み出す化学反応にて消し炭にしてくれるわ……」



 烈火のようなオーラを纏う超絶天才に恐怖以外の感情を感じられない、この小さな天才を敵に回す愚策だけは絶対にしないと心に深く刻み込む。



「っていうか、悪魔を暴き出すって」



「前に精霊の気配を感知する機械を作ったじゃろう、原理は似たようなモノじゃ」

「悪魔は巧妙に人の影に潜む、油断すればすぐ近くまで這いよっておる……気は抜けん」

「ここ最近は特に大罪組と思われる奴等が妙な動きをしておる、バロンよ、少しばかりお主の部下を借りるぞ」



「俺達もゲルトに向かわなきゃいけないんだけど、ルト様も道中情報を集めるようにって言ってたしねぇ」

「超絶天才ちゃんが思うモノがあるのなら、無視は出来ないよね」



「虫を誘い出す、お主の隠密班の手を借りてな」

「その間、お主達にはメガストロークで北の孤島に出向いて欲しい」

「偵察に出ていた機人種マシナリー及び妾の開発した小型偵察機が悪魔の姿を捉えておる」



「北の孤島って……?」



「『壁』の手前だよね、フローラル姫はそちらの調査も進めてくれてるんだっけ、ルト様ほんと感謝してるよ」



「壁?」



「こっちの話さ、んじゃ早速行こうかクロノ君、セツナちゃん、レヴィちゃん!」

「シトリンとコロンは国のどっかでお仕事中なんで、そっちから声かけてやってくださいな」



「うわちょっ!?」



 バロンに背を押され、クロノ達は国の外に停めてあるメガストロークの元へ向かう。そんなクロノの背に、フローが声を投げかける。



「クロノ! 精霊狩りを逃したのは妾の責任じゃ!」

「奴の足跡をもう一度探ってみる、奴には何か消したい過去があるらしい」

「大罪すら押し込む奴の欲、その秘密を必ず突き止める」




「…………何でそれを俺に?」




「お主の事じゃ、その手で止めようとするのじゃろう」

「なら、せめて戦うお主の視界を開いてやらねばな……天才の名が泣く」




「そっか、ありがとうな忙しいのに」

「でも泣かせないよ、誰一人泣かせない……泣かないし泣かせない」

「そう決めたんだ、その為に頑張るんだ」



 戦う理由を、もう二度とブレさせない。固めた決意を胸に、クロノはラベネから北の孤島を目指す。その頃、その孤島に一つの影が降り立った。




「本当にここで間違いないのだろうな」




「せやで? ここにセシルちゃんの大事な忘れもんがあるんや」

「多分? きっと? 恐らくな!」




「貴様の言葉は1%も信用ならん……」




 待ち受けるのは、悪魔か、四天王か。



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