第三十五話 『お前を助けさせてくれ!』
「カイト、早く行け!」
そう叫びながら、クロノは目の前の男に殴りかかる。その拳を避け、ジェイクは背後に飛び退いた。
「ガキは無知で困るっすねぇ……そんな単純な話じゃねぇんすよ」
「ここで俺から逃げても、仮に俺が見逃しても結果は変わらないっす」
「……何?」
「魔物を庇った時点で、カイト君は退治屋としてはクビっす」
「そこの鬼の討伐指令は、俺達の組織の中の誰かに移るだけ、結局追われることに変わりは無い」
「討伐指令は滅多な事じゃ消えないんすよ、危険と判断された魔物は消さなきゃならない」
そう言いながら右手の砲身をシオンに向ける。その砲身に光が集まっていく。
「そこの鬼も、今死んどいたほうが楽っすよ?」
撃ち出された白球がシオン目掛け飛ぶ。クロノは疾風の速さでシオンと白球の間に飛び込んだ。
「クロノ!その球に触るな!」
カイトが叫び、札を投げつけ白球を相殺する。
「アレは奴の魔力を圧縮した弾だ、着弾するとガードの有無に関わらずダメージを受ける」
「着弾対象の魔力管に響き、内からダメージを与える特殊弾だ」
魔力管とは魔力を有する者全てが持つ、魔力の通り道だ。血管などと同じ様に、全身に張り巡らされている。
魔法を扱う際、全身の魔力は魔力管を通り、使用者の力量に応じた『現象』となり発動するのだ。
「このマジックキャノンはコリエンテ大陸最大の技術国・『ラベネ・ラグナ』で作られた武器っすよ」
「使用者の魔力を増幅・圧縮し撃ち出す、その弾は使用者の魔力性質を宿す弾になる」
「使用者の固有技能次第じゃ恐ろしい武器になるんすよねぇこれが」
ヘラヘラと笑いながら自分の武器の説明をするジェイク、その言葉は自身も固有技能を有していると捉える事ができた。
(伊達に退治屋を名乗ってない、こいつ強いぞ……)
睨むクロノを無視し、ジェイクはカイトを横目で見る。そして一つの溜息をついた。
「カイト君~……俺、カイト君の事は尊敬してたんすよ?」
「俺より後輩っすけど、カイト君の強さは憧れでもあったんすよ」
「何でそんな魔物庇うんすかぁ、訳分かんないっすよぉ」
「今なら俺黙っててあげるっすからぁ……考え直してくれないっすかぁ?」
ジェイクのその言葉に反応し、前へ出たのはシオンだった。
「シオン!?」
「私に手を差し伸べ、カイト様が不幸になるのは嫌です」
「私が死ねば丸く収まるのならば……私はその死を受け入れます」
両手を後ろに組み、抵抗の意思が無い事をシオンは示す。
その姿を見て、ジェイクは笑みを浮かべる。
「聞き分けの良い魔物っすねぇ、賢い子は好きっすよ」
「カイト君、この鬼もこう言ってるし……良いっすよね?」
「待て、辞め……っ!」
カイトが叫ぶより早く、ジェイクは魔力弾を放つ。シオンは目を瞑り、立ち尽くしていた。
魔力弾は着弾し、爆風が砂を巻き上げる。それを目の当たりにし、カイトは膝をついて呆然としていた。
「えっ……」
砂埃が収まり、カイトが目を凝らすと、そこにはクロノが自分の背で魔力弾を受け止めている姿があった。その表情は、痛みによって歪んでいる。
「クロ……」
「どいつもこいつも……いい加減にしろよめんどくせぇっ!!!」
カイトが声を出すより早く、クロノが叫ぶ。
「そこのアホ鬼っ! 死ねば済むと思い込むな、さっきの俺の言葉を忘れたか!?」
「お前が死んでもカイトは喜ばねぇんだよ! 悲劇のヒロインでも気取ってんのか馬鹿が!」
「もう少し考えろ! お前の角は頭蓋骨でも圧迫してんのか!? 脳味噌小さいのか!?」
「カイトッ! いつまでもウジウジ悩んでんじゃねぇよ!」
『さっきなんて言おうとした!? さっきなんて思った!? 今更また悩んでるのか!?」
「お前が悩んで出した答えは、こんな奴の言葉でまた揺れちまうようなモンなのかよっ!!」
「どっちからでもいいから、さっさと手を伸ばしやがれっ!!!!!」
「助けたいなら、助けて欲しいなら、いい加減に始めろよっ!!!!!」
クロノの叫びが、今度こそカイトの背を押した。
カイトは立ち上がり、シオンの元へ駆け出す。
そして、その手を取った。
「カイト様!?」
「どの口が言うのか、自分でもふざけていると思う……」
「そんな資格、俺には無いのも分かっている……」
「だが、頼む……頼むから……」
悲願する様に、シオンに向かって言葉を繋ぐ。自分の心に有る想いを、言葉にする。
「俺にお前を、助けさせてくれ……!」
守りたい、死なせたくない。何を失っても、この想いに嘘はつけない……もう押さえ込めなかった。
その言葉を、シオンは呆然と聞いていた。一筋の涙を流しながら。
「今の言葉は聞かなかった事には出来ねぇっすよ、カイト君!?」
「あーもう……この大馬鹿野郎がっ!」
カイトとシオンに向かって魔力弾を撃つジェイク、クロノは動こうとするが背に走る痛みで動けない。その弾をカイトは札で相殺する、その目にもう迷いは無かった。
「分からねぇんすかカイト君! 今その鬼を庇ってもいつかは退治屋に殺されるんすよ!?」
「数多く存在する退治屋の組織は、幾つかのパイプで繋がってる!」
「いずれは俺達の組織以外の退治屋も、その鬼を殺す為動き出す! 時間の問題なんすよ!」
「カイト君がその鬼を守りきれる可能性は0だ! 無駄死にする気っすか!?」
「いや、守れる方法が……一つある」
叫び声を上げるジェイクに、カイトはシオンを見つめながら答える。
(一つ、方法はある……多少の博打にはなるが……)
(この状況を打破するには、この手しかない……!)
「……っ! 守れる方法があっても……」
「まず俺が見逃すはずが無いっすよねぇ!?」
再度魔力弾を放とうとするジェイク、その死角からクロノが飛び掛る。構えられていた砲身を、横から蹴り飛ばした。
「お前の相手は俺だってんだよ!」
「邪魔臭ぇぞガキがっ!」
ジェイクは左手でクロノを殴りつけようとするが、クロノはそれを掻い潜る。そのままジェイクを蹴り飛ばした。
「クロノ! 少し時間が必要だっ!」
「少しの間、時間を稼いでくれるか!」
背後からカイトが声を上げる、クロノは背を向けたまま口を開いた。
「俺、退治屋って嫌いなんだけどさ」
「今のお前は、嫌いじゃないよ」
「コイツの相手は任せとけ、絶対後は追わせない!」
「……済まない、恩に着る」
「シオン、来い!」
カイトはシオンの手を引いて走り出した。
「セシル! 傍観モードの所悪いんだが!?」
「どうせ傍観してるなら、あの二人を追ってくれ!」
結構離れた所で傍観を決め込んでいたセシルに、クロノは叫ぶ。
「……私は何もしないぞ」
「何もしなくていいからっ! 追いかけるだけでいいからっ!」
「はぁ……仕方ない奴だ……」
文句を言いながらも二人の後を追ってくれるセシル、何だかんだ言ってもこれで向こうは大丈夫だろう。
……これで、こっちに集中できる。
「……一応、言っとくっすけどね?」
「退いといたほうが……身の為っすよ?」
「論外っすね、後は追わせない」
「俺、退治屋嫌いなんで」
「あっそ……じゃあもう頼まないっすよ」
「力ずくで、退いてもらうっすから」
冷たい目で右手のマジックキャノンを構えるジェイク。乾いた風が吹き付ける中、戦いの火蓋は切って落とされた
しばらく走った後、カイトは足を止めた。
「ここまで離れれば、とりあえずは大丈夫だろう……」
「あの、カイト様……どうするおつもりなのですか……?」
不安そうな目をするシオンだが、カイトは懐から一つの巻物を取り出す。
「……この方法は、俺一人じゃ不可能な方法だ」
「シオン、お前の同意が必要だ」
「え?」
「ほう、使い魔契約の術か?」
「うわあ!?」
「きゃあ!?」
カイトが取り出した巻物を見てセシルが言う。当然、一瞬で追いつかれたカイトとシオンは驚いた。
「なっ、いつの間に……」
「……使い魔、契約ですか?」
「主従関係を結ぶ儀式だな、確かに退治屋の中には倒した他族を使い魔にする者がいる」
「どこかの退治屋の流派では、退治した魔物を使い魔としてコレクションしていた記憶が有るな」
「……お前の言う通り、この巻物には使い魔契約の為の術が書かれている……」
「退治屋の使い魔は討伐対象から外れる、俺と主従関係を結べばシオンは退治屋に討たれる事は無くなるだろう」
使い魔は契約により主に絶対服従する存在、使い魔契約を交わした他族は危険性が無くなる為、退治屋の討伐対象から外れるのだ。
「だが、貴様はこのままだと退治屋をクビになるのだろう」
「それだけじゃなく、魔物を庇った事で退治屋の敵に見なされる事になる」
「そうなれば、使い魔契約での保護は意味を成さんぞ」
魔に加担した者は、人であろうと退治屋に狙われることになる。そうなればシオンは退治屋の敵の使い魔、討っても何の問題も無い存在に逆戻りだ。
「あぁ、これだけじゃシオンを守ることは出来ない」
「もう一つ、賭けにはなるが……ステップを踏まないとダメだ」
「それ以前に、シオンの同意が無ければ契約も出来ないがな」
使い魔契約は、両者の同意が不可欠だ。人が他族と使い魔契約を結ぶ際は、大抵洗脳の類の魔術をかける場合が多い。
殺される位なら使い魔になった方がマシ、と使い魔になる者も居るようだが……そういった使い魔の受ける扱いは、奴隷と大差無い。
「俺は、シオンを縛るつもりは無い」
「嫌ならそう言ってくれ、別の方法を考える」
「いえ、大丈夫です」
「カイト様が私の主君となるのなら、不満はありません」
シオンは一切の迷い無く、笑顔で答えた。
「決まったようだな、急いで儀式を始めろ」
「正直な話、クロノも楽な戦いではないだろうからな」
「あぁ、始めよう」
カイトは巻物を開き、使い魔契約の儀式を始める。
契約者の血で巻物に紋を描き、術を発動させる。契約者はその紋に手をかざし、掌に紋を写し取る。それを使い魔となる者の手の甲に押し付け、契約の紋を刻むのだ。
儀式の終了まで、およそ十数分…。
シオンを救う最初のピースがはめ込まれようとしていた。
「うおりゃああああっ!」
クロノは気合を入れた叫びと共に、右の脚で蹴りを放つ。ジェイクはそれをしゃがんで避けた。
(まだだ!)
蹴りの勢いを殺さず一回転し、しゃがんでいるジェイクの顔目掛け、再度蹴りを放つ。
「なんつーか……呆れたっすよ」
ジェイクは飛び上がりその蹴りを回避する、空中でマジックキャノンをクロノに構えた。
「その程度で、俺の相手するとかほざいたんすか?」
放たれた魔力弾をスレスレで避け、後方に飛び退く。着地したクロノは、頬を伝う冷や汗を拭い取った。
(船でやった修行のせいかな、精霊技能が安定してる……)
(この調子なら、まだ切れる事は無いよな)
(クロノはあの修行で、風のコントロールが少し上手くなったからね)
(力の扱いを落ち着いて出来てるから、リンクも安定するようになったんだよ)
(なるほど、そりゃ助かるぜ)
(コイツ、本当に強いからな……)
エティルの言葉に納得し、地面を蹴りつけ走り出す。この強敵相手に精霊技能無しでは、正直勝負にならないだろう。
(相手の武器による攻撃は直線的だ、軌道上から外れれば怖くない!)
(高速で走って死角からぶん殴ってやるっ!)
高速で相手に向かって突っ込み、寸前で横に飛ぶ。ジェイクの周りを、フェイントを混ぜつつ走り続けた。
(動き回ってれば、あの武器で狙いは付けれないだろうっ!)
(よし、今だ……っ!?)
その思考は、顔の横スレスレを通った魔力弾で白紙に戻された。
「なっ!?」
「精霊使いっすか、まぁただの人間相手よりはめんどうっすけどぉ……」
「所詮、人の域って事で……」
そう言いながら撃ってくる魔力弾は、確実にクロノの速度を捉えている。中距離を保っていてはいつか当たってしまう、クロノは意を決して近距離に飛び込んだ。
構えられている砲身を右足で蹴り上げ、空中で体を捻り左足で蹴りつける。しかし、ジェイクの姿が目の前から消えた。
「!?」
クロノの蹴りを体勢を低くして掻い潜ったジェイクは、左肘をクロノの腹に叩き込む。その一撃で怯んだクロノに右腕に装着されているマジックキャノンを振り下ろした。
鈍い音が響き、クロノは地面に叩き付けられる。
「ッ!?」
「風の精霊の力で速度を上げたっつっても、まだ人の域から出られてない」
「こちとら人と比較にならない身体能力を持った、化け物と殺し合いしてきてんすよ?」
「あんま退治屋舐めてんじゃねぇよ、ガキが」
地面に倒れているクロノにマジックキャノンを構える。無慈悲な追撃が放たれる瞬間、クロノは地面を転がりそれを避ける。
そのまま勢いよく飛び起き、ジェイクに向かって右の拳を振り抜いた。
「アクビが出るっすねぇ!」
その拳を体を回転させながら避ける、その回転の勢いを乗せたマジックキャノンが、クロノを右から殴り飛ばす。
「ガッ!?」
グラつくクロノの服を掴み、思いっきり引っ張るジェイク。そしてクロノの腹部に左膝を叩き込む。
「ゲホッ!」
悶絶し動きを止めたクロノに対し、ジェイクは攻撃の手を止めない。正拳突きのようにマジックキャノンでクロノを殴り飛ばし、追撃の魔力弾がクロノを包み込んだ。
「邪魔っすから痛い目に合うんだっつの……」
「殺し合いも知らねぇガキが……偉そうな事言ってんじゃねぇっすよ」
吐き捨てるように言い、カイト達の後を追おうとしたジェイクを爆煙から伸びた手が掴んだ。
「あぁ!?」
「だりゃあああああああああっ!!」
煙の中から飛び出したクロノが、勢いよくジェイクの顔を蹴り上げた。
「てぇ!? この野郎……しつこい奴っすね!」
「殺し合いを知ってるのが、偉いと思ってんじゃねぇよ……」
「他族を殺してきたのが偉い事だって思ってるなら、それは俺には間違いにしか映らないんだよ!」
口の端から血を流しながら、クロノは叫ぶ。
「俺は他族との共存の世界の為に、旅をしてるんだ!」
「話も聞かず、一方的に他族を殺すような退治屋は絶対に認めない!」
「他族との共存だぁ!? そんな夢物語で現実は動かないんすよぉ!」
「魔物は悪! 滅する存在なんすよ! 現に俺達に魔物殺しの依頼は入ってきてんだ!」
「確かに……、分かり合えないどうしようもない魔物だっているかも知れない……」
「人間にだって、どうしようもない奴はいるからな……」
「けど、少なくてもシオンは違うだろ!」
「アイツがお前等に何をした!? アイツが何か悪い事したのか!」
「魔物の血を引いてるってだけで殺すなんて、俺には理解できない!」
「絶対したくないっ!」
そんな理不尽を見て見ぬフリなんて、クロノには出来なかった。
「お前が何て言おうとも、あの鬼は討伐対象っすからね」
「そもそもアイツは牢の中で、別に死んでもいいとか言ってたんすよ?」
「生きる希望も失ってる奴を、そこまでしてどうして庇うんすかねぇ」
「牢の中のシオンの言葉を聞いて、なにも思わなかったお前には理解出来ねぇよ」
「それに、シオンにはもう生きる希望が出来たんだ」
「シオンはもう一人じゃない、カイトが居る」
「お前なんかに、殺させてたまるか!」
そう言い放ち、ジェイクに向かって走り出す。正直体は限界に近いが、負ける訳にはいかないのだ。
「無駄だってのがまだ分からないんすかねぇ!」
ジェイクが振り下ろしてきたマジックキャノンの一撃を横飛びに避ける。そのままジェイクの周囲を駆け回る。
「だから、無駄だってんだよ!」
「そんな速度、獣人種と比べたらハエが止まるっすよ!」
そう叫び、ジェイクはマジックキャノンを構える。動きは見切られている、このまま走っていても撃ち抜かれるだろう。
(クロノ……!)
心に声が響く、忘れてはいけない、クロノだって一人じゃないのだ。
(今のクロノなら、絶対出来るよ!)
(ピュアちゃんの時に使った、空中での加速法!)
(今のクロノなら、もっと早く走れる……)
(……いや、飛べるよ!)
その言葉がクロノの自信になる、クロノの足元に風の流れが集まってくる。今度はピュアの時とは違う、自分の意思ではっきりとそれを感じている。
「吹っ飛べっ!」
ジェイクが魔力弾を放つ、クロノの動きを先読みし放たれた魔力弾はクロノ目掛け一直線に飛ぶ。しかし、着弾寸前でクロノの姿が消えた。
「ん!?」
一瞬ジェイクはクロノを見失うが、ほんの一瞬だ。すぐに真上に飛び上がったクロノを、視界に捕らえる。
(くだらねぇ……飛び上がれば次の一撃を避ける手段はねぇっすよ……)
(この一撃は絶対に避けれない、魔力を最大限込めた魔力弾で止めだ!)
空中のクロノに狙いを定める、そして発射しようとした瞬間、クロノの姿が再び消えた。
「は?」
その直後、背後で何かが弾けるような音がする。いや、自分の周囲でその音は連続して鳴り続けていた。
その音がクロノが空中を蹴り付け、空中を飛び回る際に発する音と気が付くまで、ジェイクの目でも数秒かかった。
連続で空中を蹴り付け、跳ねるように高速で移動を続けるクロノに、ジェイクは動揺を隠せない。
(なんだってんすか急に……明らかに速度が増してるっすよ!?)
(しかもさっきまでと違って上下左右、全ての方向に縦横無尽に動き回りやがる!)
(これじゃ流石に目が追いつかな……)
その動きに翻弄され、ジェイクに隙が出来る。クロノはそれを見逃さなかった。
「ここだああああああああああああっ!!」
(しまっ……!?)
クロノは自分が今出せる最速のスピードで、ジェイクに向かって突っ込む。ジェイクは反応が間に合わず、当然ガードも間に合わない。
「疾風穿駆!!!」
「……ッ!?」
疾風の名に恥じない速度のまま、クロノはジェイクの顔面に左の拳を叩き込んだ。ジェイクの体はその勢いをまともに受け止め、後方にぶっ飛んでいく。
「……おこがましい事なのかも、知れないけどさ……」
「俺は、シオンを助けたいって願うカイトも、助けたいんだよ」
「何様だって感じもするけど、助けたいんだからしょうがないだろ?」
吹き飛び地面に倒れるジェイクに向かい、力無く笑いながらクロノは言った。
次回、半人半鬼編終了!
次章はついにノーム編!