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偽勇者は世界を統一したいのです!  作者: 冥界
第二十章 『人か、魔物か』
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Episode:ロー ④ 『テメェは誰だ』

 ラベネ・ラグナでの用事を済ませたロー一行は、王都・クールラインへ戻ってきていた。仕事の内容は話が纏まり次第、ビシャスが後々伝えてくれるそうだ。




「……ッ!!」




 ロー達がいつも集まっている広場、その中心で日課の組み手を行うローとシャガル。シャガルの裏拳を飛び越えるように避け、そのままローが背後を取った。



 シャガルの首元目掛け剣を振るうローだったが、背を向けたまま放たれた蹴りにより、ローの剣が弾かれる。軌道を変え、ローの首元へ飛来した足を右腕で防ぎ、少し強引に距離を詰める。




 ローの鞘による一撃がシャガルの首元に突きつけられると同時、ローの胸にシャガルの左拳が触れた。




「……………………参りました」



「ほんの数ミリ差だ、引き分けでも良いんだぜ?」



「……実践じゃ、数ミリ差が命取りですから……」



 そう言いつつ、ローは鞘を引っ込めた。弾き飛ばされた剣を拾う為、ローはシャガルに背を向ける。その背中が、シャガルには影を背負っているように見えてならなかった。



「シャガルっち、ちょっと本気だったっしょー?」



「まぁ、な」

「ローの成長速度と、戦闘センスにゃ脱帽だわ」



「焦ってるー? 焦ってるー?」

「前衛の立場無し? 先輩としてどーなのー?」



「…………どうなの、って?」

「…………心配だよ、普通にさ」



 背後から飛びついてきたリビアの言葉に、シャガルは素直に答えた。その表情を見てか、リビアも少し真面目な顔でローを見る。



「いんじゃないの? 割り切るまで時間かかるのって普通じゃん?」




「……俺も、お前も、ビシャスも……そうだったっけか」




「私はさ、割り切るってか……考えるの放棄したってだけ」

「私達は仕事をして、犠牲を出してる」

「それで助かる人が居て、傷付く者もいる」

「それを真っ直ぐ受け止めるのがしんどいから、考えないようにしただけ」




「嘘だな、お前が一番苦しんでただろ」

「お前が感情を表に出さなくなったの、俺達が勇者になってからだな」




「…………色々考えるの、だるくなっただけよ」




 髪を弄りながら、どこかフワフワしたようにリビアは答える。勇者としての有り方や、自分達の行いに疑問を抱いていないと言えば、嘘になる。だからこそ、先輩として……シャガルはローの気持ちが痛いほど分かったのだ。



(……まだガキだしなぁ……しんどいわな)

「……なぁビシャス、お前はどう思………………」



 少し離れた場所で依頼書を片付けていたビシャスに、シャガルは視線を移した。シャガルが見たのは、ローに妙な視線を向けている、ビシャスの姿だ。



「…………ビシャス……?」



「……ん? どうした?」



 すぐに此方の視線に気がついたビシャスが、こちらに笑顔を向けてきた。



「……ロー……どう思う?」

「結構辛そうに見えっけど」




「……まぁ、ここが山場だろうね」

「大丈夫……彼は強い子だ」

「先輩として、僕達がちゃんと導けば問題ないさ」

「シャガル、リビア……気にかけてあげなよ?」




「はーい」




「…………おう」




 違和感が、少しずつ広がってきていた。






















 その日の夜……今日は依頼もなかったので、ローは一人町をぶらついていた。どこか虚ろな目で夜の街を歩くロー、そんな彼の前にシャガルが現れた。



「よっ」



「……こんばんわ」



「晩飯一緒にどうよ、奢るぜ?」



「……頂きます」



 断る理由も無かったので、ローはシャガルについて行くことにした。飯屋に向かう道中、ローは一言も話そうとしない。そんなローを見兼ねて、シャガルは口を開いた。



「…………俺も、いや……俺達もさぁ」

「最初は、迷ったよ」




「……?」




「魔物だからだとか、仕事だからだとか……そんなの言い訳でさ」

「守るために、命を奪う行為に……疑問を抱いてた」

「理想の勇者ってのと、全然違くてさ」

「正直、今だって戸惑う時あるんだ」



 自身の腕に付けられた小手、そこに刻まれた勇者の証。それを指でなぞりながら、シャガルは続ける。



「今なら見える物ってのが、あってさ」

「右見ても、左見ても、勇者……勇者……勇者……勇者……」



「あっちもこっちも、あいつもこいつも勇者、勇者」

「こんな胡散臭いもんで番号分けされて、特別扱いなんざ……笑っちまうよな」



 ローは自分の番号が刻まれた指輪に視線を落とす、そこに刻まれているのは、既に価値を見出せなくなった勇者の証だ。



「やってきた事、消せないようにさ」

「ここまで積み重ねてきた物は、絶対に消えない」

「迷いに潰されないように、俺が自分で作った言い訳があるんだ」



 振り返ったシャガルが、ローの右手を握った。



「何度も話してくれたよな、お前のガキの頃の話」

「最近は聞かせてくれなくなった、弟君の話」



「お前はよ、その時の積み重ねを信じろ」

「『勇者いま』に囚われるな……お前の信じる『勇者りそう』を貫け」



「ちっぽけな物に刻んだのは、勇者の証とかいう胡散臭いもんじゃない」

「自分の、覚悟の筈だぞ?」



 そう言って照れくさそうに笑うシャガルに、ローも釣られて笑みを浮かべた。随分と久しぶりに、笑った気がする。




「シャガルさんは……どんな覚悟で勇者に?」




「大事な物、守れるようにってさ」

「俺は、ビシャスやリビアとこの国で生まれた」

「俺は、あいつ等が大好きだ……仲間が大事なんだよ」



「あいつ等と育ったこの国を……あいつ等を守りたい」

「ずっと一緒に居たい……だから勇者になった」

「特別凄くなくたっていい、格好悪くたっていい」

「後ろ指差されようが構わない、汚れ仕事だろうが何だろうがやってやる」

「……と、まぁ……開き直ってるってわけだ」




「……格好いいと、思いますよ」




「そんな事ねぇさ、開き直ったクソ野郎だ」

「勇者の名が、聞いて呆れるよな?」




「……なんででしょうね」

「俺は……勇者が何なのか……分からなくなってきたけど……」

「……俺も……なれるかなぁ……」

「いつか……自分で自分を誇れる……男に……なれるかなぁ……」




「なれるさ」

「なろうと頑張るなら、きっと」

「夢を叶えたいって、踏み出したんだろ」

「ちゃんと、勇気持つ者……だよ」



 そう言って、シャガルはローの首に手を回した。そのまま無理やり、歩かせる。




「泣くな泣くな! 今夜は飲み明かすぞ!!」




「……俺…………未成年…………」




「はははははっ!! 知らん知らんっ!!」




 割り切る事なんか、出来るわけが無い。それでも、心が軽くなった気がした。ローは涙を拭い、本当に久しぶりに笑って夜を明かした。























 その数日後、また国の中で殺しが起きた。前回と同じ様に、犯人は正気を失っていたらしい。



「リビアッ! 殺しだって!?」



「おそーい……もうロー君がとっ捕まえたよー」



「そうか! なら無事に…………っ!」



 シャガルが見たのは、返り血に染まったローの姿だった。



「おい、何があった」



「知らないよー、私もさっき来たんだしー」



 その言葉を、シャガルは殆ど聞いていない。虚ろな目をしたローの元へ、急いで駆け寄った。




「ロー! おいローッ!!」




「……シャガル、さん?」

「……はは……っ! 俺、やっぱりさ……」

「こんなんじゃ、俺は俺を…………誇れないよ……」




「…………ッ!」




 酷い顔をしたローは、血に染まった指輪を必死に拭き取っていた。血塗れのハンカチでどれだけ拭いても、指輪の血は拭き取れなかった。それでも、ローはその動作を繰り返していた。



(何でだよ…………なんでまた……こんな……)

(なんで…………このタイミングで…………)




「犯人が抵抗してきてね……ロー君が迎え撃つ形になったんだ」




「……………………ビシャス」




「危険と判断した僕が、魔法で援護した」

「動きが止まった犯人の両足を、ロー君が斬りつけて……確保に至った訳だ」




「…………ローにやらせたのか」




「? そうだが?」




 その言葉を聞いた瞬間、シャガルはビシャスの胸倉に掴みかかった。



「なんでっ!! ローにやらせたっ!!」

「テメェが言ったんだろっ! 今が山場だってよ!!」

「不安定な……危険な状態のローにっ!! なんでやらせたっ!!」




「あぁ、言った通りだろう?」

「僕は言ったよ? 導いてあげれば問題ないって」

「彼は、強い子だって」




「ふざけんなっ!!! テメェ……ローを壊す気かっ!!」




「シャガル、君こそふざけているのかい?」

「僕達は勇者だ、『この程度』で動揺しちゃ駄目なんだよ」

「彼なら乗り越えるさ……だから僕が導いただけ……それだけだよ」



 そう言って、ビシャスは笑顔のままローの方を見た。その瞬間、シャガルの中で何かが弾けた。気がついた時には、シャガルはビシャスを殴り飛ばしていた。




「…………ッ!! はぁ……はぁ……」




「……昔から、変わらないねぇ」

「心が弱いぞ、シャガル」




「……ッ!! テメ……ッ!?」




 倒れたビシャスに追撃を仕掛けようとするシャガル、彼の腰に、リビアがしがみ付いた。




「リビア!? 離……!」




「…………だめ……」

「やめて……お願い……」




 数年ぶりに見た、リビアの涙。シャガルは震えながら、握った拳を降ろすのだった。そんな二人を見て、ビシャスは笑顔で立ち上がる。



「リビア、泣く事ないじゃないか」

「僕とシャガルの喧嘩なんて、珍しくも無い」

「子供の頃から……変わってないじゃないか」

「むしろ、微笑ましくもあるよね? ねぇシャガル?」




「……………………あぁ、そうだな」




 そう、昔から何度も喧嘩した。つまらない事で言い争い、ぶつかり合い、笑い合い……。その思い出を、彼らは共有していた。だからこそ、シャガルには分かったのだ。






















 殺人犯を国の兵に引き渡し、シャガル達はいつもの広場へ戻ってきていた。ローは血を洗い流すと、一人で何処かへ行ってしまっていた。



「…………考えるの、だるいんじゃなかったのかよ」

「…………なんで、今更泣くんだよ」




「……勇者になって、色々、変わったけどさー……」

「…………私達の関係まで、変わるのは…………やだよ」

「……離れ離れになるの……やだって……昔から言ってるじゃん」



 リビアも、シャガルも、ビシャスにも……親が居ない。彼らは、捨て子だったのだ。本当の生まれも知らない、彼らはクールラインの孤児院で育ったのだ。リビアにとって、家族と呼べる存在はシャガルとビシャスだけなのだ。



「…………ビシャスっちも、シャガルっちも…………変わったよ」

「けど、私は信じてる……根っこは変わってないってさー……」

「どんなに辛くても……みんな一緒なら……私は耐えられるよ……」



 膝を抱えて震えるリビアを見て、シャガルは昔を思い出していた。子供の頃、一緒に過ごしたあの頃、自分達はただ、自分達の為に勇者を目指した。自分達を守る為、その絆を守る為に。



 国からの依頼、生きていく為に、勇者としてこなしてきた。初めて命を奪った時、魔物云々を抜きにして吐いたのを覚えている。ビシャスは青ざめ、リビアは泣いていた。支え合っていなければ、自分もとっくに壊れていただろう。



(…………そうだ、俺達は支え合って……ここまで来たんだ)

(…………そうだよ、それなら…………それなら…………っ!!)



 違和感に、気がついてしまった。その思いは、シャガルの胸を引き裂くように暴れ回る。だが、ここで吐き出すわけにはいかない、家族を泣かせる訳には、いかないのだ。



「……リビア?」

「俺は、お前やビシャスが好きだ」



「何……急に」



「家族を知らない俺達だけど、俺はお前等を家族だって思ってる」

「んで、ローの事もな」



「……弟、出来たみたいだよね」



 シャガルとリビアは同い年、ビシャスが2歳年上だ。シャガルとリビアから見て、ローは可愛い後輩であり、弟のような存在だ。



「リビア、ローの事……任せていいか?」



「……え?」



「万が一、俺があいつを見てやれなくなったら」

「お前に任せていいか?」



「何それ、冗談でもそんな事言わないでよ」



「お前に頼みたいんだ」



「なんで? なんで急にそんな事!」



 これ以上は、リビアをまた泣かせる事になりかねない。シャガルはリビアの頭を撫で、軽く笑ってみせる。



「ビシャスとさ、腹割って話してくるわ」

「多分、ま~た喧嘩になるだろうよ」

「最悪どっちかボコボコになるかもだから、な? 保険だ、保険」




「…………」




「同じ事だ、昔と一緒」

「昔からそうだろ? ぶつかり合ってさ、俺達は笑いながら帰って来るんだ」

「ちゃんと仲直りしてくる、必ず帰ってくる」

「約束だ」




「……ん……信じてる」

「シャガルっち……私達……変わらず家族だよね?」






「……おうっ!」






 精一杯の笑顔で、シャガルは親指を立てる。不安にさせないように、最後まで笑顔を崩さなかった。



















 その夜、シャガルはビシャスを夕食に誘っていた。夜道を二人並んで歩いていく。



「二人で外食か、久々だね」

「どんな風の吹き回しだい?」



「かぁ~……昔から変わらないねぇ……疑り深いったらねぇわ」

「昼間はやりすぎたよ、仲直りといこうぜ」



「馬鹿だなぁ……気にする事なんかないのに」

「……僕も悪かったさ、リビアにも謝っておかないとね」



 どちらかが謝れば、すぐにもう片方も謝る。変わっていない、昔から全く変わっていない。外見も、中身も変わったが、リビアの言う通り根っこの部分は変わっていないのだ。昔話に花を咲かせながら、シャガル達は夜道を歩いていく。



「この通り……よく通ったよね」

「この先に鳥の巣があったんだ」



「うっわ、懐かしいな」

「あの頃はリビアちっこかったなぁ」

「結局、お前の目付きの悪さとか直らなかったな」



「む、気にしてるんだけど?」

「何で僕は初対面の人に、冷たい印象を与えちゃうのかなぁ」



 いつだって、喧嘩の後は笑い合っていた。どれだけ傷つけあっても、元通りになれると確信していた。自分達は、血の繋がりは無くても、家族だから。





「……………………ねぇ、シャガル?」





「ん?」





 そう、信じていた。






 …………今日までは。






「………………随分、歩いたね」




「そうだな」




「ここ、夕食を食べれるような場所じゃないけど」




「穴場見つけたんだよ、問題ねぇって」




「……この先は、行き止まりだけど?」




 そう、この先は行き止まりの広場になってる。子供の頃、ビシャスと大喧嘩した時、この先の広場で決闘したのだ。



「ビシャス」




「何?」




「俺は、お前を家族と思ってる」

「どんな事があっても、何が俺達を引き裂いても……必ず元通りになれるって信じてる」




「……?」




「ずっと一緒だった、自分の事のように家族の事は分かってるつもりだ」

「だからさぁ……分かるんだよ」

「今の今まで気づけなかった俺が言っても、説得力ねぇけどさぁ」



 足を止めたビシャスを無視し、シャガルは歩を進めていく。二人の距離が少し開いた辺りで、シャガルも足を止めた。




「お前は目付き悪いし、あまり表情顔に出さないし、冷たい雰囲気だし?」

「正直初対面の奴なら、怖いって思うだろうさ」

「色々厳しいとこもあるし、取っ付き難いったらねぇ」




「言ってくれるなぁ」




「けど知ってんだ、俺達が壊れそうになった時、お前は必死になって繋ぎ止めてくれた」

「スッゲェ優しい奴だって……俺は知ってんだ」

「壊れそうになってるローを、あんな目で見るような奴じゃ、ねぇんだよっ!!!」



 怒声と共に振り返ったシャガルは、一筋の涙を流していた。そんなシャガルを、ビシャスは無表情で眺めていた。




「何が言いたいんだ?」




「どれだけ同じ顔をしていても、同じ思い出を共有していても……!」

「どんだけ真似てもっ!! 心までは真似出来ねぇんだよっ!!!」

「馬鹿にすんなっ!! テメェはビシャスじゃねぇっ!!!」






「テメェは誰だっ!!!!!!!!!」






 夜に響く、シャガルの咆哮。その言葉で、ビシャスが顔を歪めた。







「……………………………………ハッ」







 およそ人とは思えぬ、歪な笑顔に。




「……心までは真似出来ない~? そりゃそうだよなぁ?」

「心なんざ、俺の餌に過ぎねぇんだしなぁ?」




「……………………ッ!?」




 月明かりが建物に映している、ビシャスの影が、異常な形に捻じ曲がった。



「ノーマークだったなぁ、良く辿り着けましたっと」

「バレるとは思わなかったよぉ? 馬鹿だと思ってたのに意外とやるじゃん」

「腐っても勇者ってわけぇ?」




「勇者だったら…………腐ってたかもな」

「友達だから、家族だから…………分かっちまったんだよ!」

「今の今まで気がつかなかった自分を、殺してやりたいがな!」




「ここまでは100点だよ!」

「シャガル、やるじゃないか……流石僕の家族だ」



 聞き覚えの無い声から、一瞬でビシャスの声に変化する、異形の者の声。その行為が、シャガルの怒りをさらに煽った。




「おいクソ野郎…………ビシャスはどこだ」




「おいおいおいおいおい、勘違いすんなよ」

「正真正銘、この身体はビシャスの物だぜ?」

「入れ物だけしか、残ってないけどなぁ?」




「…………なんだと…………」




なかみは喰っちまった、欠片も残さずにね」

「知ってるか? 悪魔は人の心に潜むんだ」

「心を失った入れ物は、俺の玩具だよ」




「……………………ッ!!!」




「ビシャスの最後は傑作だったなぁっ! 見せてやりたかったよ!?」

「心を最っ高に真っ黒にしてさぁ! 絶望の底まで沈んでた!」

「お前等の頼れる兄貴分は! 真っ先に折れて死んだんだ!!」

「人の心は良いよなぁっ!! 簡単に黒に染まるっ!!」




 ビシャスの顔で、大笑いする異形の者。シャガルは我慢の限界を迎え、目の前の魔物に飛び掛った。その一撃を飛び越え、ビシャスは壁を蹴って距離を取った。




「ここまでは、見事だよ」

「君の失敗は、俺とのサシを望んだ事」

「勝てると思ってるのか、人の分際で」




「…………リビアに謝らないとな」

「二人で笑って帰るって約束、守れそうもねぇ」

「だからせめて…………ビシャスの仇を取らせて貰う!!」

「テメェだけは、許さねぇっ!!!」




「ハッ……餌の容器が吠えてんじゃねぇよ」

「俺は心蝕種ナイトメア…………心を蝕む悪魔様よ」

「テメェも染めろよ、心を黒にさ」




 夜に染まりし国の一角、人と悪魔の死闘が始まる。



 賭けるのは絆、欠けるのは心。



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