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偽勇者は世界を統一したいのです!  作者: 冥界
第十七章 『陽の心・サラマンダー』
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第百十五話 『勇気か、無謀か』

「…………ッ!」



「……ッ! はっ! いいじゃねぇかっ!!」



 速攻で体勢を立て直し、右肘から炎が噴射、まだ体勢を崩しているクロノ目掛けフェルドが襲い掛かった。




「クロノオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」




(……っ! なんて気迫だ……スゲェ圧迫感!)




 熱風を纏いながら突っ込んでくる炎の精霊に、僅かながらも怯んでしまう。それでも、無抵抗でいる訳にはいかない。




「ぐ……りゃああああっ!」




 身体を後方に投げ出し、ギリギリでフェルドの拳を回避した。当たれば首が吹っ飛びそうな一撃が顔スレスレに振り切られる。



「ああああああああああああっ!」




「ブハッ!」



 その体勢のまま、フェルドの顔を蹴り上げた。一瞬だがフェルドの動きが止まる。



(守りは分が悪すぎる……ここで一気に押し切りたい!)

「アルディッ! フルパワーだっ!」



(あぁ……! 打ち込めっ!)



 フェルドの鳩尾目掛け、渾身の拳を叩き込むクロノ。水の感知と合わせ、確実に当たる軌道で放ったそれは、異常な速度で動いたフェルドの左腕に防がれる。




(止められたっ!? つか……何だ今の動き……!)




 動き出しの波紋が吹き飛ぶほど、デタラメな速度。大地の力を難なく受け止めるほど、込められた力。上を向いたまま止まっているフェルドだったが、その身体からとてつもない力が湧き上がっていた。




「違うだろう……そうじゃあねぇんだよ」



「もっとだ、もっと……もっと熱くなれよっ!!」




 顔をこちらに向けると同時、火炎がフェルドの身体を包み込む、クロノは咄嗟に腕を引っ込めたが、あまりの熱さに怯んでしまう。



 その一瞬で、フェルドが飛び掛ってきた。




「う、わっ!?」




「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」




 後方に飛び、フェルドの蹴りを回避する。ミサイルのように突っ込んできたフェルドの勢いは止まらず、地面に右足が突き刺さった。




「爆ぜろおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」




「なっ……うわあああああああああああっ!?」




 フェルドの咆哮と同時、突き刺さった足が爆炎を上げた。地面が大きく爆ぜ、クロノの体が浮き上がる。そして次の瞬間、フェルドが両手から炎を噴射、その勢いでクロノの目の前まで飛び上がってきた。




「らあああああああああああああっ!」




「……っ!」




 回転しながら突っ込んでくるフェルド、こちらが体勢を立て直す前に、フェルドの蹴りが振り下ろされてきた。なんとかそれを右腕で防ぐ。



 空中で逆さまになっているフェルドだが、その状態で右腕をクロノ目掛けて振るってきた。その一撃もクロノは左足で弾く。水の感知無しでは反応出来なかった。



 間髪入れず、フェルドの両膝が火を吹いた。一瞬で体勢を立て直し、獣のように襲い掛かってくる。



(……っ! 防ぎきれな……)



(クソッ! 完全に燃え上がってるっ!)



(もう、いや……暑い……)



(あぅ……押されてるよぉ……)



 フェルドの猛攻は、次第にクロノを追い詰めていた。焦りがミスを生み、クロノの防御が弾き飛ばされてしまう。無防備になったクロノに、フェルドは大振りで拳を振り下ろす。




落火山らっかざんっ!!!」




「やば……っ!?」




 グシャッ! っと異音が響き、フェルドの拳がクロノの側頭部を捉える。そのままとんでもない速度でクロノの身体は地上に叩きつけられた。1回大きくバウンドし、頭から地面に落下する。




「ふははははははっ! どうしたクロノッ! 死んだかっ!?」



「そんなんじゃダメだなぁっ! そんな魂じゃお前! 俺の力は使えねぇぞっ!」




 叫びながら空中で構えを取るフェルド、握り締めた右拳が、大きく燃え上がった。





「……あの馬鹿タレ……本当に殺す気か……!」





 観戦していたセシルが思わず立ち上がった。「あの」一撃は、追撃には少々強力すぎる。




「炎の力は心を、魂を滾らせる力っ!」

「恐怖の感情を抱くヘタレは、自分の身を焦がすっ!」



「死をも恐れぬ大馬鹿も、己が炎で自滅するだろうっ!」

「クロノ、お前はどうだっ!? そんな小さな魂じゃ、簡単に燃え尽きるぞっ!?」




 フェルドの右拳が膨大な量の炎を纏い、荒々しく燃えていた。その炎が一際大きく揺らいだ瞬間、フェルドが歯を食いしばった。




「そいつらが認めたお前の力……この程度で消し飛ぶようなもんじゃねぇだろう?」




「な、応えてくれ…………見せて、くれよ?」




 ほんの一瞬、切なそうな表情をしたフェルドが、倒れているクロノに向かって右腕を振るった。圧縮されていた爆炎が、クロノに放たれる。




 倒れているクロノに、それを避けるような素振そぶりは見られない。そのままクロノは、放たれた炎の直撃を許し、炎に包み込まれてしまった。




 その光景を、フェルドは黙って見届けていた。




(……気絶してたか、死んでたか……?)

(俺の声なんざ、聞こえてなかったのか……?)



(こんな、もんなのか……?)

(…………チッ…………冷めちまう)




(…………お前も、違うのかよ…………クロノ)




 諦めたような目で、俯いたフェルド。目の前で燃え上がっていた炎が、大きくぶれた。




(…………っ!? 今……)




 その違和感の後、炎が竜巻のように舞い上がり、内から弾けた。弾け飛んだ炎の中心に、クロノが立っている。




「烈迅風…………第二段階の精霊技能エレメントフォースだとっ!?」




 あの力は、契約者と精霊の、信頼の証たる力だ。




「…………は、はは……」

「ふははははははははははははははははははっっ!!!!!!」




「クロノッ!! お前、最高だっ!!!!!」




 フェルドは笑みを浮かべ、再び右腕に炎を集め始める。それを見たクロノも、右腕に風を集中した。




「炎の力の真髄、それは勇気だっ!!」

「青臭いよなぁ! 俺はそういうのが大好きだっ!」




「恐怖に負けず、自分をコントロールする!」

「感情に流されず、自らを制御する事が重要なんだっ!」




「クロノッ! お前にそれが出来るかっ!!」

「お前の力、お前の勇気っ!! 見せてみろっ!!!」




 フェルドはそう言い放ち、先ほどよりも巨大な炎を撃ち出した。クロノはそれを、黙って見据える。そして、静かに右腕を前に突き出した。




「受け止める気かっ! 出来るのかっ!!?」



「いいや出来ないね、無謀な選択の上、そのまま燃え尽きるかっ!」




 何かを期待するように、楽しそうに笑いながら、フェルドは両手を広げた。



 次の瞬間、クロノが炎の直撃を許した。




「クロノッ! 勇気ってのはなっ! 一歩間違えばただの馬鹿に成り下がるっ!」

「勇気と無謀は紙一重って言うだろうっ!? お前はどっちだっ!」




「お前は、正しい判断を下せたかっ!?」




 フェルドが叫んだ瞬間、強風が洞窟内に吹き荒れる。フェルドの放った炎が、クロノの右腕に集まっていく。





(風で、俺の炎を絡め取って…………)





 炎を巻き込んだ風は、右腕から体を通し、クロノの左腕に集中していた。




「正直、俺は勇気云々は分かんない」

「つか、ビビッてたから……多分勇気もクソもなかったと思う」



「けど、支えてくれてる奴等がいる」

「だから俺は、戦える」




 そう笑い、クロノは左腕を振りかぶる。





紅蓮ぐれん回帰かいきっ!!」





 螺旋状に回転する、強力な炎を纏った風の弾丸が放たれた。それを見たフェルドは、心底嬉しそうな顔をしていた。




(俺の力まで、利用したってか……)

(ふははははっ! 馬鹿だな、大馬鹿だ……)




(あぁ……懐かしいなおい……泣けてくらぁ)




 そのまま右腕を振るい、飛んできた一撃を砕き飛ばした。クロノの渾身のカウンターは、呆気なく砕け散ってしまう。




「……俺が防がなかったら、お前も吹っ飛んでたかもしれないぞ」



「その勇気は、無謀じゃないか?」




 笑みを浮かべているフェルドの背後に、クロノが回り込んでいた。




「信じてたから、お前は避けたりしないって」




「馬鹿だな、上等だ」

「合格だよ、生き写しくん」




 殴り飛ばされながらも、フェルドは嬉しそうに笑っていた。あの男と出会った時の事を、思い出していたから。













____________________数百年前____________________







 契約、なんとも詰まらないものだ。興味本位で人間2人、蛇人種ラミア1体と契約してみたが、どいつもこいつも冷めてる奴ばかりだ。



 自分が本気でゲームを挑めば、誰も自分を認めさせることなど出来ない。だからこそ、適当に流し、適当に契約を結んでみたのだ。




「結果は大失敗、ぬるすぎて暇死するぜマジで」




 結局、契約を破棄、故郷に戻ってゴロゴロする羽目になった。無駄な時間を過ごした気すらする。




「退屈だなぁ……マジでさ……」



「なんか、スゲェ熱い奴……いねぇかなぁ……」




 精霊としての存在意義すら失いかけ、もういっそ燃え尽きて消えてしまおうかとすら思ってしまう。そんなサラマンダーの元へ、一人の人間がやってきたのだ。




「あ、見つけたっ!」




「んあ?」




 寝転んだまま顔を向けると、ヒョロい人間が笑っていた。




(契約志望者か? 第一印象からして失格だなこりゃ)

「何? なんか用?」




「うわぁ、なんか本当に冷めてるね」

「珍しいサラマンダーだなぁ」




「ほっとけ、大体周りのせいだっつの」

「で、何? 契約?」




 正直、契約を結ぶ気は無かった。どう見ても、熱い男には見えなかったからだ。




「うん、夢の為に君の力を貸して欲しいんだ」




「……なんで俺なんだ? サラマンダーなら他にもいるだろう」




「普通の精霊じゃ、なんて言えばいいのかな…………とにかくダメなんだ」

「他のサラマンダーから聞いたよ、変わったサラマンダーがいるって」




 そりゃあ結構、確かにここまで冷え切ったサラマンダーは、自分くらいだろう。




「あぁ……そういうことね」




(つまりあれか……冷え切って弱そうな俺なら、楽に契約できそう……ってか)

(舐めやがって、イラッときたぜ)




 どう見ても、目の前の人間は強そうには見えない。大体ヘラヘラしてるのが気に食わなかった。




(人間ってのはどうしてこう……温いだろうなぁ……)



(契約する価値もねぇ……イライラすんぜ)




 なんだか本当にイラついてきた、本気で殴り飛ばしてストレス発散ついでに追い返してやろう、そう思っていた。




「いいよ、契約」




「本当っ!?」




「俺と勝負しろ」

「俺を認めさせてみろよ、そしたら契約してやるよ」



(馬鹿か、何喜んでんだっつの)




 精霊と真剣勝負だ、経験上、この段階でビビッてしまう奴も居る。こいつもその手の弱虫と同じだろうと、思っていた。




「よぉし、やろうっ!」




 なのに、呆気なく男は承諾した。




「……勝てると思ってるのか?」

「随分舐められたもんだ、悪いが手は抜かないぞ?」




「そりゃそうだよ、本気で試してもらわないと意味がない」




 いい加減マジでイラついてきた、どれだけ舐めてくれるのだ、この人間は。




(あぁ……面倒くさい……)




 どうせ一発殴れば終わりだ、ビビッて、泣き喚いて、逃げ帰るに決まっている。




(……よし、この馬鹿に現実を教えてやろう)




「もうスタートでいいの?」




「どうぞご自由に、どっからでもかかってこいよ」




 その言葉で笑顔を浮かべ、人間は馬鹿正直に突っ込んできた。




(何笑顔とか浮かべてんだ、こいつ)



(真剣勝負だっつてんだろ、舐めるのも大概にしろよっ!)




 息を吸い込み、突っ込んでくる馬鹿目掛けて炎を吐き出した。




(ビビッて逃げ惑え、情けない姿を晒せっ!)




 少し意地悪だが、この程度で怯むような雑魚と、契約なんて結ぶ気は無い。所詮人間、炎の中に突っ込むような奴はいないだろう。




 もし居るとしたら、そいつはただの馬鹿だ。




 そしてどうやら、目の前の男はただの馬鹿だったらしい。炎の中に突っ込み、そのまま突き抜けてきた。




「熱い熱いっ! 流石に熱いよっ!!」




「ぐはぁっ!?」




 泣き言ともいえる声を漏らしながら、男はサラマンダーを殴り飛ばした。服は焼け焦げ、上半身が裸になってしまっている。




「馬鹿かお前はっ!? 何普通に突っ込んできてんだよっ!!」

「なんなのっ!? 馬鹿なのっ!? 火の中突き抜けるとかマジで人間かっ!?」




「え、だって……真剣勝負でしょ?」

「命のやり取り無しなんて、そんな甘い事考えてないよ、流石にさ」




「覚悟も持たずに、僕はここに立ってないよ」




 男は、変わらずに笑顔だった。それなのに、雰囲気が違う。



 いや違う、気がつかなかっただけだ。


 

 男は最初から真剣だったのだ。舐めていたのは、こちらだったのだ。




「……っ!」




 それが、恥ずかしかった。精霊として、真剣に相手を見定めようとしなかった。



 サラマンダーはゆっくりと立ち上がり、真剣に男を見据えた。




「人間、名乗れ」




「ルーン・リボルト」




「精霊と殴り合いでもする気か? 死ぬかもしれないぜ?」




「僕の夢は、僕の命が1万あっても足りないかもしれない夢なんだ」

「ここで死ぬようじゃ、届きやしない」




 何でもないように笑う人間、その姿に、胸が熱くなった。ハッタリじゃない、本心からそう思っている。自棄になってる訳でもない、この人間は理解している。 覚悟をしている。夢の為、その場所へ辿り着く為、真剣に向き合っているのだ。





「面白ぇ……っ!」





 久方ぶりに、心が躍った。随分と久しぶりだ、魂が燃え上がるのは。一瞬で男との距離を詰め、その顔面を殴り飛ばした。




「だったら示して見せろっ!! お前の力っ!!」




「あぁっ! 存分に!」




 間髪入れずに、殴り返された。もうこいつ人間じゃねぇ。




 それから約2時間、殴り合い続けた。一発殴れば一発返して来る、一発蹴り飛ばせば、2発返ってきた。何故だか分からないが、だんだん押されてきていた。



 というか、腕が上がらなくなってきていた。体力が切れるまで殴りあった経験など、初めての事だ。それなのに、男は笑っていた。火傷とアザで酷い顔の癖に、笑っていた。





「ゼェ……ゼェ……マジで……お前……人間……か……!?」





 意地で殴り返すが、力が入らない。流れた体に、異常な力の拳が叩き込まれた。




「ご、……ほぉ……っ!?」




「人間だよ! 100%人間っ!」

「はぁっ!!」



 怯んだ所に、強烈な一撃が飛んできた。最早人間の力じゃない。疲弊した体をなんとか起こす、その時男と目が合った。




 その時に気がついた、男の目の奥で、燃え滾る物に。




(こいつ……戦闘中に炎の自然体を……っ!)




 男はそんなこと気づいてない、知りもしないだろう。本能で理解していた、本能で使っていた。炎の力で強化された、意地で支えられた拳。その拳が、サラマンダーの顔面を捉えた。




(…………ざけんなっ! サラマンダーの俺が……炎の力で負けられるかよっ!)




 ボロボロの身体に、力が漲る。最早ゲームなんてどうでもいい。負けたくない一心で、サラマンダーも殴り返した。




「だああああああっ!!」




 第一印象はヒョロい人間だった筈なのに、とんでもない根性だ。殴り飛ばしてもすぐにやり返してくる。




「……っ!! スゲェな! スゲェ根性だ!!」



「ルーンッ! お前、面白いじゃねぇかっ!!」




 こんなに胸が熱くなったのは、いつ以来だろう。もしかしたら、生まれて初めてかもしれない。




「何だよ、何がお前をそこまで熱くしてんだっ!?」

「お前の夢って、なんなんだっ!?」




「人と、魔物の……共存……」

「僕は、そんな世界を、創りたい」




「馬鹿かっ!? 出来るわけねぇだろうっ!」




「そうだね、無理だってのが普通だよね」

「ねぇ、精霊って、一応魔物でいいんだっけ」




「あぁ!? そうだな、一応は魔物に分類されてんぞっ!!」




「今、凄く楽しいよね」




「あぁっ!! 最高に楽しいなっ!!」













「じゃあ、共存の世界は、有り得るよ」










 



 心底嬉しそうに笑いながら、ルーンは拳を振るった。その一撃で、サラマンダーは倒れてしまった。もう、立ち上がれなかった。




「……ふは、ふははははははははははっ!!!」




 身体が動かない、それなのに、嬉しかった。




「面白いじゃねぇか……共存の世界……無理難題だなっ!」

「お前の、旅の果て……興味が湧いたぞ……っ!」




「ねぇ……僕は名乗ったのに、君は名前教えてくれないの?」




 空気を読まない人間である、こちらのテンションが一気に下がってしまった。



「あのな……精霊に名前なんてあるわけねぇだろう……サラマンダーでいいよ」



「ダメだよ、それじゃ友達っぽくない」



「……はぁ……?」



 本当に読めない人間である、調子が狂って仕方がない。



「うーん、じゃあ僕が名前をあげる」

「フェルド、僕は今から君を、そう呼ぶよ」




「おいこら、何を勝手に……」




「フェルド、僕の夢は、人と魔物の共存」

「君の力を、貸してほしい」



 こちらの言葉を完全に無視し、ルーンは手を差し伸べてきた。地面に大の字になったまま、フェルドはその手を見つめる。




「…………面白い……」




「付き合ってやるよ、その夢に」




 差し出された手を掴み、何とか立ち上がる。




「燃えてくるじゃねぇか、なぁ!?」




「これから宜しくね、フェルド」




 精霊と契約者は、ボロボロになりながらも笑い合った。消えかけていた炎が、再び燃え始めた。






____________________________________________







 フェルドを殴り飛ばした後、クロノは地面に倒れこんでしまっていた。あの強力な炎を受け止めるのは、相当な風を必要とし、精神力がごっそり削られてしまったのだ。




 そして、そんなクロノを、フェルドは見下ろしていた。殴られはしたが、フェルドが倒れることはなかったのだ。




「……っ!」




 立ち上がろうとするが、クロノの両足は震えていた。




(あの時と、立場は逆……か)



(けど、何でだろうな……スゲェ、懐かしいぜ)




 薄く笑ったフェルドは、クロノに手を伸ばした。




「立てよ契約者、格好悪いぜ」




「……え?」




「認めてやる、お前の勇気を称えよう」

「ただ、まだまだ危なっかしいな」





「ルーンの背中は遠いぞ、追いつきたいなら、覚悟しろよ」





 パァっと顔を明るくしたクロノを見て、フェルドも笑顔になる。



 再び、炎は燃え始める。



 四精霊との出会いの旅が、終わった。ここからが、本番だ。



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