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異世界迷宮の最深部を目指そう  作者: 割内@タリサ
10章.久遠の空を目指すもの達へ
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491.『理を盗むもの』の倒し方


 もし彼女と出会えなかったら、いま僕は100層にいなかったかもしれない。

 出会ったのは、一年前の『舞闘大会』の後。

 いまのように、カナミと真っ向から敵対していたときのことだ。


 あの人との大切な縁を手繰り、詠む。


「――『空に声を満たして、私は世界あなたを救いたい』『一緒に祈ろう。いま血を繋げ合わせて、真の魂の歌を響かせる』。――魔法・・生きとし生きたヘル・ヴィルミリオン赤光の歌・ローレライ『ハイリ・ワイスプローペ』》」


 現代最後の『魔石人間ジュエルクルス』の名を、鮮血魔法として唱えた。


 それは通常の鮮血魔法と異なる。

 血から経験や記憶を降ろすだけではない。『血の理を盗むもの』の力を通じて、さらに次の領域へ昇華されている。

 千年前、ファニアの研究院から積み重なり続けた『血術』によって、縁は繋ぎ合わせられ、魂と魂が共振する。

 それは通常の振動魔法とも異なった。


「『――少年・・』」


 振動こえが響く。

 いままでの幻と違って、その出所は夢でなく、喉。

 実際の僕の喉が震えて、肉声が100層に響き渡る。


 千年前より続いた血の研究が、一つの奇跡を起こそうとしていた。

 その奇跡を繋げた人物の名を、キリストは繰り返す。


「……ハ、ハイリ? ハイリ・ワイスプローペ?」


 かつて『世界奉還陣』で溶けて消えた『魔石人間ジュエルクルス』の存在を感じて、キリストは戦いの手を完全に止めた。

 思いがけない恩人に困惑しているのが、はっきりと見て取れる。


 その名前の呼びかけに、僕の身体は反応する。

 僕の意思ではない。体内に重なった別の魂が震えて、喉から振動こえが発せられる。つまり、僕の身体を借りて、ハイリさんが――


「『……少年、ずっと感謝しています。別の世界から訪れたあなたが、我々を手助けしてくれているのは嬉しいことです。しかし、少年一人に私たちの問題を押し付けるのは心苦しいということも、どうか分かって欲しい。……一度だけ、弟たちにチャンスをくれませんか? 必ずや、少年の本当の『未練』を叶えてくれるはずです。私たちの世界のみんなも『異邦人』様に負けていないところを、ここでお見せしたい』」


 僕を身代わりにして、キリストを諭す。

 それは同時に、この『世界』を生き抜いた者の代弁でもあった。


 ただ、キリストは困惑を膨らませて、その声を受け入れようとしない。


「弟……? ハ、ハインさん? いやっ、どちらにしてもだ! これはファフナーの『魔法』で作り出している声! 幻聴に都合のいいことを言わせているだけだ! こんな振動こえ、『本物』じゃ……、『本物』じゃあない!!」


 『作り物』だと、力強く否定した。


 確かに、その通りだ。

 これはファフナーさんの『魔法』で作られた振動こえ


 しかし、『作り物』だとしても『本物』と変わらないときもある。

 これもキリストが教えてくれたことだ。

 ずっと近くで、その背中を見てきたから、僕は知っている。


 ――『本物』かどうか決めるのは、いつだって自分自身だった。


 生者の声も。死者の声も。

 その真贋を決められるのは、自分の選択だけだから――


「『……『作り物』も『本物』だと、私は少年から教わりました。おかげで、『世界奉還陣』の中でも、私は私として生き抜くことができた』」

「…………っ! あ、あれは僕じゃない。千年前からの『糸』が、そうさせただけで……」

「『私も友も『糸』のことは知っています。千年前から仕組まれた運命に、絶望しかけたこともありました……。しかし、それでも越えられると、少年の生き様から私たちは教わったのです。生き抜きさえすれば、負けて叶うものもあると、少年が少年だったから伝えられた。だから――』……だから・・・、僕は信じている。ハイリさんもハイン兄様も、まだ物語の結末を迎えていない。たとえ死して魂だけとなっても、まだ――」


 身代わりで任せ切ることはしまいと、途中から言葉を継いだ。


 そして、目を向ける。その瞳の先にあるのは、100層の中心に佇む玉座――ではなく、奥にある大海原。

 赤光に照らされて、煌々と輝いている。

 太陽はないけれど、朝焼けの海を思わせる不思議な光景だ。

 薄紺の海の上には、薄橙の光が乗っていた。水平線は遠く、この世の果てどころか、『その先』まで続いていると確信させる。


 この海こそが、本当の『最深部』。

 一見すると水のように見えるが、これの本質は『階層』だ。無限とも言える濃い情報の層が、幾重にも重なっている。これが僕たちの生きている『世界』の核であり、全ての魂の溜まり場なのだが――


 その『最深部』から、ずっと僕は感じていた。

 縁という名の黒い線を伝って――いや、グレンさんが、死して魂だけとなっても、あの『黒い糸』で僕まで繋げて伝えてくれているから、はっきりと分かる。


「まだ、あの『最深部』で待ってくれている・・・・・・・・。……『本当の世界の主』が現れるのを」

「ハインさんたちが『最深部』で……、待っているだって……? ありえない。そんなこと、絶対にない……」

「キリスト、よく見てくれ。あの『最深部』はどう見ても、一人で行くような場所じゃないだろ。あれこそ、頼れる仲間とパーティーを組んで攻略すべき『本当の迷宮』じゃないか?」

「だからっ、さっきから何を言ってるんだ!? もう迷宮は終わりだって、作り上げた僕自身が言ってる! なのに、訳の分からないことばかりっ! ライナー、君もファフナーと同じなのか!?」

「ああ、僕もご先祖様と同じ『ヘルヴィルシャイン』。……だから、『最深部』に恐れるものは一つもない。あそこで待ってくれている人たちと一緒なら、きっとライナー・『ヘルヴィルシャイン』はどこまでも楽しく・・・、行ける。たった一人で行こうとしてるキリストよりも、ずっと先まで――」


 ありのままの感想だった。

 100層の大海原を見渡していると、恐れよりも興奮が勝る。

 子供の頃、人生で初めて海を見たときの感覚に近い。まだまだ世界は広く、未知で一杯と知り、わくわくが止まらない。新たな楽しい『冒険』が、100層ここから始まるような気がする。


 もちろん、その旅路に苦難は多いだろう。

 しかし、一人じゃない。

 と明るく『最深部』を見る僕に向かって、キリストは首を振る。


「もし仮に……、僕から力を奪って、あの暗闇の海に誰かが待っていたとしても! その誰かを、『世界の主』という仕事に巻き込むことになる……! 終わりもしなければ感謝もされない人助けを永遠に繰り返し、『魔の毒』を調整するだけの存在に成り下がる……。楽しいわけがない! そんな『不幸』っ、誰かに広げる必要もない! 『地獄』に落ちるのは一人だけで十分だ!!」


 仕事、不幸、地獄と。

 キリストは暗い表情で、あの明るい大海原を見続ける。


 だから、向いていないのだ。

 合っていないと、早く気づいて欲しい。


 人助けに終わりがないのも感謝がないのも、決して暗い話ではない。

 むしろ、見返りがないからこそ、それでも頑張った自分が誇れる。

 自分で自分を褒められる人ならば、人助けは逆にお買い得な『幸せ』なのだ。

 誰かを助けている限り、どんなに辛い場所だろうとも明るく楽しく、前を向き続けられる――から、かつて孤児だった僕は『ウォーカー』でなく『ヘルヴィルシャイン』に引き取られた。


 紅の双剣を強く握り締めながら、それを伝える。


「あんたはそう思うかもしれない。……けど、ファフナーさんは違ったはずだ。たとえ『地獄』のような場所だとしても、誰か一人助けられるのならば、それを『幸せ』だと感じられるような人だった!」

「ファフナーは狂ってた! いもしない『大いなる救世主マグナ・メサイア』を演じ続けたせいで、ぐちゃぐちゃに『幸せ』と『不幸』が混ざった! 僕のせいで、どんな場所と相手だろうと人助けするようになってしまった!」

「ああ、ファフナーさんはなったんだ……! あんたと出会えたおかげで、やっと憧れの『本当の騎士ヘルヴィルシャイン』になった! だから、その僕たち・・・が、『最深部』を怖がるあんたの代わりに行く! 頼む、キリスト……。人助けが趣味のヘルヴィルシャインから、一番の『幸せ』を奪ってくれるな……!!」

「しゅ、趣味……? は、ははっ、ライナーもぐちゃぐちゃだ! 狂ってる! もう完全にファフナーと同じだ!!」


 ライナー・『ヘルヴィルシャイン』としての本心をぶつけたが、全力で否定されてしまう。


 ただ、その否定こそが『世界の主』に向いていない証明だ。

 ずっと主は「みんなの『幸せ』が、自分の『幸せ』」かのように振る舞っていた。まるで騎士道の『理想』の姿だったが、それは妹さんによる『作り物』だった。キリストは生まれながらに人助けが好きだったわけではない。


 ――ただ、優しかっただけ。


 かつて迷宮で僕や奴隷の命を救ったときから、ずっとそうだった。

 キリストは生まれながらに弱いから、弱い人たちと深く共感できた。


 苦しんでいる誰かを見ていると、自分も辛く感じる人だった。

 だから、追い立てられるように人助けをし続けた。実際のところは「人助けが楽しい」じゃなくて、「人助けをしないと苦しい」だったのだろう。


 そして、その強迫観念は、いまや「手の届く全人類を助けないと苦しい」まで悪化してしまっている。その切っ掛けとなったのは、やはり――



【スキル】

 固有スキル:最深部の誓約者ディ・カヴェナンター

 素体・・1.00



 ハイリさんを身体に降ろした状態で、《鑑定アナライズ》を併用して、見えたスキル名は『素体』。

 先ほどは『???』だったはずのものが、短時間で変化していた。

 事前に仲間たちから「ラスティアラ・フーズヤーズは『異邦人』というスキルが見えていた」と聞いた話から、二つ目の『???』は見るものによって変わると確信する。


 おそらく、ラグネさんと似た性質。相手の魂を『鏡』で映し、『理想』のすがたに変化して、そのスキル名通りの力を得る――

 とまで推察して、本当に妹さんは面倒な『作り物スキル』を残して行ったと文句を付けたくなる。


 ただ、種さえ分かれば、もう見間違えはしない。

 削ぐべきものを見据えて、真っすぐキリストを見つめ続ける。

 それを見つめ返す主の瞳は揺れていた。


「人助けをしていれば、それで『幸せ』だって……? ははは、ライナー……、僕は知ってるよ。その物語の主役を騙るような言葉が、この世で最も罪深い『詠唱』だ……! その都合のいい言葉に、みんな騙されて、期待させられて、裏切られて、苦しんだ! アルティ、その最初の犠牲者が君だったろう……!? そんなこと言わずに、もっと僕を恨んでいい! 口だけで何も救わないやつは赦すな!! だよなっ、セルドラ!? 僕みたいな欠陥品は苦しみ続けて、少しでも世の為人の為になってから死ぬべきだ! 『本当の英雄』になれないなら、せめて『偽りの神』として死ぬまで――ああっ、結局はそういうことなんだ! やっぱり、あらゆる意味で僕が『一番』神に相応しい! この僕が『世界の主』になるのは……――ッ! 何も間違っていないっ、ローウェン! この道を進むのが、僕の『一番』だっ!!」


 振り払うように、キリストは否定と自己否定を繰り返す。


 こちらの言葉を『詠唱』だと主張するが、こちらから聞くと、その自虐こそが『詠唱』だ。

 『理を盗むもの』は弱ると、『詠唱』で持ち直そうとする傾向がある。そして、その『詠唱』で更に弱って、また『詠唱』に頼るという悪循環に陥る。

 その厄介な習性がキリストも同じと分かり――しかし、その厄介な『理を盗むもの』を救う方法は、もうキリストから教わっているから――容赦なく、心からの言葉をぶつけて止めにかかる。


「どこがだ……! いまのあんたを見て、誰が『一番』なんて思うかよ! 少なくとも、たった一人で『不幸』になりたがっているあんたよりも、僕たちのほうが絶対にいい未来を見つけられる!」

「いいや、違う……! だって、父さんは言ってた……! 僕なら誰よりも上に行って、『一番』になれるって……! それがみんなの『幸せ』で、僕の『幸せ』でもあるって……! 僕は『一番』になって、『ラスティアラ』という『幸せ』を手に入れる!!」


 瞳と声を揺らした末に、またキリストは『ラスティアラ』と縋るように叫んだ。

 もう心のぶつけ合いに耐え切れないようだった。

 自分から言葉による時間稼ぎを始めておきながら、まだ息が整っていない状態で戦いを再開させようと動き出す。


 『理を盗むもの』の定石通り、その不相応な力で全部誤魔化そうとする気だ。

 だが、その歩き出そうとした瞬間。

 がくりと。

 キリストは片膝を曲げて、姿勢を崩した。


「……なっ!?」


 続いて、その身から溢れる紫の魔力が、急激に萎んでいく。

 キリストの枯渇寸前だった魔力の更なる減少は、『魔獣の腕』にも影響を及ぼす。

 八本腕の半分が霧のように溶けて、魔力の粒子になって掻き消える。


 ついに『半魔法』どころか『半死体ハーフモンスター』さえ保てなくなってきた。

 癪だが、これもあいつ・・・から聞いた通り。


 こちら側の作戦が、ようやく稚拙ながらも成立していくのを確認して、僕は100層の赤光の空を見上げた。


「……キリスト、『終譚祭』からの魔力供給が減ってるようだな。あんたがよく見ていなかった間に、地上うえの形勢が変わってきてるんじゃないのか?」


 作戦を続けるべく、挑発する。


 すぐにキリストは、こちらの挑発の意味を理解したようだ。

 僕の視線に釣られて、その双眸を上に向けた。

 そして、曲げ折った膝を伸ばして、『魔獣の腕』を再構築しながら強がる。


地上うえの形勢が変わるくらいは『計画』通りだよ……。いまのは少しタイミングが悪かっただけ……。ライナーを倒す為の魔力は、十分過ぎるほど残ってる」

「ああ、いまのは少しタイミングが悪かっただけかもしれないな……。ただ、その『少し悪いタイミング』が、いまの一回で終わりだと思うか?」

「…………」

「僕は思わない。これからも絶対に続く。これまであんたが助けたやつらが、ここにいるあんたを助けたいと願い続ける限り、ずっとだ」


 善因善果であるが、これも自業自得。

 それを僕は、みんなの代表として100層で、『詠唱』のように詠んでいく。


「この『少し悪いタイミング』が積み重なって……、少しずつあんたの『計画』をずらしていくんだ。――あの『竜人ドラゴニュート』スノウの大震動おおごえは、迷宮にいた僕まで届いた。彼女を慕うギルドの探索者たちは、その咆哮に心打たれ、同じ道に続こうとするだろう。その背中に憧れて、『魔石人間ジュエルクルス』たちのだれかが追うかもしれない。特にエルミラードさんの背中は大きくて、追い易い。ラスティアラと親しかった騎士たちも、次々と『終譚祭』の裏側に気づき始めるはずだ。あんたに忠誠を誓っていたセラさんが裏切る姿は、何かがおかしいと思うのに十分過ぎる。そして、大聖堂のディアだ。あそこには、いま、我が不肖の姉が――」


 こちらに流れはあると、観客がいるつもりで長々と詠んでいく。

 それにキリストも負けじと、流れを取り戻そうと詠み返していく。


「それも全て僕の『計画』通りだ、ライナー。君が姉のフランリューレ・ヘルヴィルシャインを信じて、頼り、今日まで隠していたのは最初から知ってたよ。……だが、彼女は君と違って、必ず僕を選んでくれる。なぜなら、そういう風に生まれながら・・・・・・出来ている・・・・・からだ。その血の流れを作ったのは、千年前のティアラ・フーズヤーズ。フランちゃんは僕に幼馴染のトラウマを思い出させて、克服するために作られた存在だったんだよ。だから、絶対に【『水瀬湖凪』と同じように、『相川渦波』の味方となる】。……最初から、これを僕は知ってた。だから、これからどうなるかも分かってる。『最後の頁』まで、ちゃんと僕は視えてる。だから、僕の『計画』は絶対で確実で、間違いなくて……。なのに、どうして……? 陽滝、僕はお前の望み通りの僕になったのに……!? どうして、そんな顔をするっ!?」


 だが、『元の世界』の幼馴染の話が出た瞬間、キリストの『詠唱』は崩れた。

 崩したのは明らかに、同じ『元の世界』出身の妹さんの振動こえ


 いまのキリストは『水の理を盗むもの』ヒタキの悪癖を、その『鏡』で丸々映し出している状態だ。未来が分かり切っているせいで、『最後の頁』だけ読んで判断している――という道を先んじた妹さんが協力してくれているのを、僕は確認した。


 つまり、これでみんなだ。これまでキリストが共感して、助けて、『親和』した『理を盗むもの』たち全員が、いま僕の力になってくれている。


「あんたは『理を盗むもの』たち全員を、『鏡』で映してきた……。けど、いま、その『鏡』に罅が入って、みんなと同じ間違いを繰り返そうとしているんだ。みんなが止めようとするのは当たり前だろ……」

「同じ間違いを……、止める? 違う。僕は何も間違ってなんか……」

「本当にフラン姉様が苦手なんだな、キリスト。どう考えても、姉様は味方のときのほうが厄介だったろ? あれだけ付き纏われて、どういう人だったのかをもう忘れてるのが最初の間違いだ。あの最高に面倒な姉様なら、必ずあんたの味方として、あんたの足を引っ張ってくれる」


 忠告の振りをしながら、見上げた赤光の先にいるであろう姉を自慢する。

 ついでに、いまキリストの『計画』にないイレギュラーが起きていると言わんばかりに、不敵な笑みも浮かべておいた。


 キリストは僕の視線に釣られて、上に目を向けて呟く。


「フランリューレ・ヘルヴィルシャインが……、どういう人物ひとだったか……」


 二人揃って、地上うえに思いを馳せる。


 同調行動に弱いというのもあるが、時間は向こうの味方だからだろう。キリストは『魂の腕』の解析や魔力回復を考えて、フラン姉様の確認に時間を割くのを選択した。


 本当に、主の性格と戦術は分かりやすい。

 これで、もっと時間を稼げる。


 キリストの『計画』ほど壮大ではないが、こっちにだって作戦はあるのだ。

 二か月も各地で相談して、例の第二迷宮で組み立てて、その奥で専門家から助言を貰って、みんなで作り上げた作戦だ。

 その作戦の通りに進んでいるのを確認――は主と違って出来ないから、ただ僕は信じるのみ。


 いま、地上うえでフラン姉様は、僕の信頼に応えてくれている。

 大聖堂のディアとシスの戦いは、ついに決着を迎える。

 そして、『世界の主』に心酔している使徒たちこそが、さらなる『少し悪いタイミング』を生んでくれると――






地上に移ります。

短めですみません。セルドラファフナー編と比べて、まったり進行になります。

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― 新着の感想 ―
[良い点] これまでも面白かったですが10章入ってから特に面白過ぎて毎話感情グチャグチャになってます [気になる点] 最深部はカナミには暗く深い水面に、ライナーには光射す大海原に見えていましたがティア…
[良い点] 渦波君の人間臭いところめっちゃ好きです。ただ確かにラスティアラが隣にいないでのハッピーエンドは、残念ながら渦波君がやはりハッピーとは言えないから、呪いを含めてどう解決していくんだろ。代替案…
[一言] 今まで築いたものが、優しい糸になって善き方向へと紡がれていっている感じがしますね。 裏で動いてる人もいるらしいですが、地上の様子はどうなっているか。 順調に(カナミ)の負けフラグが立ち上が…
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