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神ナリシ模倣者ト神門審判  作者: 高木カズマ
第六章 Ex 《接続章》 Re:starting reincarnation True hero ?  
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蛇足、火の粉舞いし異音残響――それは希望かそれとも……

 ずぞぞ……ずぞぞ。

 ぱちぱちと火の粉となって弾ける残火の音の中に、その異音は混じっていた。


 人気のない通路だった。

 沢山の人々が通る事を想定して造られた長さ、幅共に広大なその廊下は、しかし今は積み重なる物体に埋め尽くされている。

 炭化し、黒焦げになったグロテスクな怪生物の焼死体の山。 

 それこそが、幅広の通路を狭める物体の正体にして、弾ける火の粉の音源でもあった。


 とある燃え盛る少年と痩身矮躯の禿髪の老人との激しい戦闘の余韻が炎として移り残り、未だ消えていないのだ。


 ほんの数分前までは人の姿が確認できたその場所に、今は人らしい影は見当たらない。

 全てはどこかへ消えてしまった。唐突に、何もかもを置き去りにして。


 だが、人でないモノなら残っていた。

 ずぞぞ……ずぞぞ……響く異音残響、その音は、弾ける炎の残滓の中から。黒化し、生命力を喪失した奇怪な昆虫の積み重なる死骸の山の中から響いている。


 炎に焼かれて、未だその身を燃え上がらせながら、それでも蠢くそのグロテスクな生命体は――しかし今より数刻前にその命にトドメを刺すべく空より降り注いだ鮮血色の閃光雨によって心の臓を射抜かれ、既にその鼓動を完全停止していた。

 ……ほんの数分前まで、それが動く気配など微塵もなかった。死んでいた。生命活動を停止していた。確かに、そのハズだったのだ。

 だが……鮮血色の光りが打ち砕いたはずの心臓は、その身を焦がす炎によって灰になると、驚くべきことに灰の中から再生を果たしたのだ。


 奇跡、偶然、あるいはそのどちらもか。そもそもその二つを分ける基準は何なのか。全ては事象の積み重ね。なるべくしてこうなった、と。例えそれがどれだけ理不尽で不条理で一見あり得ないような現象であろうとも、事実は事実、揺らがない。

 ともかく確かに言える事は、億にも上る数多の個体の中で唯一その一匹のみが、鮮血色の輝きに心臓を射抜かれるその前に、少年と老人の戦闘の飛び火によって生きたまま心臓が燃えていた個体であったという事。

 

 ……ともあれその命は、地獄の業火の中から蘇った。

 そして、意思なき本能の傀儡だった彼は。

 外部より与えられる指向性のままに他の命を貪り喰らっていた群の中の一部でしかなかった彼は、復活を果たした事で〝自意識〟すらも取り戻していた(・・・・・・・)


 這いずる彼はその身を捩り死骸の山からどうにか抜け出すと、その場で立ち止まり――バキゴシャグキグジャボキッッ!!? 思わず耳を塞ぎたくなるような肉のひしゃげる生々しい怪音をその身体から盛大に響かせて――










「――ふう。あー、腰が痛い。なかなか酷い目にあったよ、うん」


 魚の開きのように真っ二つに開かれたグロテスクな生命体の骸の上に、それは乗っていた。まるで誕生日プレゼントの箱を開けると現れるとっておきのプレゼントのように、一人の可愛らしい顔をした中性的な髪型の少年が一糸纏わぬ姿でつっ立っていたのだ。


 ――それは、質量保存の法則を無視した脱皮、もしくは羽化とでも呼ぶべき現象だった。

 

 ……間違いない。その少年は、燃え上がって半ば炭化していた奇怪な虫――デザインキメラの中から、その背中を割って飛び出してきたのだ。


 感情も光も何もかもを塗りつぶしたかのような、光りを一切反射しない無機質な漆黒の丸い瞳が、ぎょろりと蠢き世界を見渡す。

 ヌメヌメとした粘液で身体を濡らした少年は、ニコニコとマネキンか何かのような気味の悪い薄っぺらな笑みを張り付けて、辺りに転がる虫の死骸の一つを何の躊躇もなく掴み取ると、


「それにしても酷い事するよねー、うん。ぼくがこんなに沢山殺されたっていうのに、自我も意識も碌に無かったせいで、僕が殺される瞬間をちゃんと見れなかったじゃないか。……まったく、他人のモノは大事にしましょうって学校で習わなかったのかな? うん。ぼくは僕で僕のモノなんだからさ、僕以外が勝手にぼくをこんな風に好き勝手扱うなんて、うん。普通は許されない行為だって分かるよね? 常識ある人間ってヤツならさ、リョウシンノカシャク? とか何とか。普通、そういうのがあると思うんだよね、僕はさ。うん。そうだよ、これでも怒っているんだぜ、僕は」


 ぷんすこ! といった効果音が似合いそうな様子で笑顔のままに怒りながら、少年は掴んだ死骸にその鼻を寄せると、くんくんと犬のように鳴らして、ホットドックでも頬張るかのようにその頭に思いきり齧りついた。

 同時に笑顔を僅かに顰めて、うわぁ、生焼けだー、などと不味そうに零しながら、少年は歯型のついた死骸をポイと適当に投げ捨てようとして――うーん……と何かを思案するように少し唸る。しばらくして、ボッッ!! と、死骸を掴む少年の右の掌から炎が産み出された。


「わ、やっぱり出た」


 少しだけ驚きを見せながらも――なるほど、なるほど、うん。そういう事か。などと、目の前の現象に対して一人得心がいったように頷きながら、少年は掌の死骸を――自分ぼくだと評した虫を何の感慨もなく燃やし尽くして、


「……まあでも、うん。そこに関しては今は見逃してあげないでもないかもかな。うん。だってほら、僕って寛大な事で有名だし? 僕に無断でぼくを作って使ってた事は僕としては許せないけど、何だか世界も知らない間に面白そうな事になってるみたいだしね、うん。ひとまずは、この騒動を眺めてれば退屈はしないかもだ。……楽しみだなぁ。人間がぜぇーんぶ一気に死ぬ瞬間だなんて、それこそ見逃す訳にはいかないよね! うん!」


 あー、楽しみだなぁー。と、遊園地を楽しみにする子供のようにリズムを刻み身体を前後に揺らしながら呟く少年は、そこで股の間でふらふら揺れるブツがやけに開放的な状態であることに気づいて、堂々と腰に手を当てながらこんな事を呟いた。


 ――うん。まずは、文明人らしく服でも探す事からはじめようかな。

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