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ざ、ざざ……じじっジザザザザザザザッザザガガガガガガ……ツ――――
――おいおい、嘘だろ。まさか本当に死んだのか?
……あー、死んじまったみたいだな。
まあ無理もないよ。心臓を握り潰されたら“人間”なんて誰だって死ぬさ。
それにしても、いくら『神の子供達』が相手とはいえ、酷い負け方をしたものだな、勇麻。
器としても中身としても中途半端で未完成とは言え、『希望の拳』の本来のスペックならそう簡単に負ける相手でも無いだろうに……。
さて、まあ今更何を言ったところで死んでしまった事実は揺るがない。往々にして、人生は取り返しがつかず、命なんて物はその最たる物だ。
正義は常に悪に勝つ物だけれど。
負けるのが常に悪だけとは限らない。
今回の件が良い例だ。
あの『神の子供達』の少女は決して悪じゃない。勿論、彼女と戦った東条勇麻も。
……いつかこんな話をしたはずだ。
人には人の数だけの主義主張に考え方、好悪、正誤、善悪、正義、幸不幸がある。
相手の考えを変える事は難しいし、自分の考えを捻じ曲げるのも耐えがたい。互いの主張を理解することはできても、真の意味で賛同し許容する事は決してできない。それが人間って生き物だ。
だから人々は争うし、世界に正義と悪が生まれる。
相手に自分を理解してもらう事さえ難しいのに、個人の持つ一つの主義主張へ全を束ねるなど土台不可能だ。
折り合いをつける為には、妥協点を探すか、多少手荒で強引な手段に訴えるしかない。
今回も、ようはそういうお話。
東条勇麻とクリアスティーナ=ベイ=ローラレイ。
二つの正義がぶつかり合い、そして片方が敗北した。
それだけの話だよ。
そんな訳で東条勇麻の英雄譚はこれにて終幕。
英雄に憧れた少年の来世にご期待ください――




