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神ナリシ模倣者ト神門審判  作者: 高木カズマ
第五章 引キ篭モリ聖女ト逃亡者ノ集イ旗
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第二十八話 絶望と逆境の袋小路Ⅱ――潰える希望

 貞波嫌忌を撃破した途端、逃亡者の集い旗(エスケイプ・フラッグ)の残りのメンバーがぞろぞろと城門前に集まり始めた。

 勇麻はそれを見てまるで蟻の群れだと思った。

 女王蟻を守る軍隊蟻。彼らはその身を捨石にしてでも、己の女王を守るのだろう。

 ただ、女王を守る蟻の群れにしては数が少ない。

 とは言え侮る事なかれ。彼らは一人一人が一騎当千。『白衣の悪魔の遺産』の二つ名にふさわしい実力を持つ、高位の神の能力者(ゴッドスキラー)達なのだから。


 集まった敵の中には『透化』を使う金髪ポニーテールのレギン=アンジェリカや、既に死亡している少女割宮裂姫(さきみやさき)の死体を人形劇のように操る、ピンク色の髪をツインテールにした少女リリレット=パペッターもいる。

 昨日勇麻達の前に現れた逃亡者の集い旗(エスケイプ・フラッグ)のメンバーがほぼ全て揃い踏みだ。

 

(……問題ない。此処に来る前に、ディアベラスから全員の特徴と弱点は聞かされてる。道を歩いてる間ずっとその事ばかり考えてたんだ。焦るな。昼間の時とは違う。攻撃は当たる。勇気の拳(ブレイヴハンド)は通用する。相手の挙動も、ちゃんと見える。そもそも前回と今回では、決定的に状況が違う……!)


 ――今回と前回で致命的に異なる点が一つ存在する。


 輩屋災友。

 和葉を巡る先の戦いで唯一ディアベラス=ウルタードの犠牲になった神の能力者(ゴッドスキラー)

 神の天秤(スケアーズ・ラック)という、触れた対称の幸運値を上下させる神の力(ゴッドスキル)を宿していた敵。

 おそらく、逃亡者の集い旗(エスケイプ・フラッグ)の強さの鍵を握っていた男。


 ディアベラスは彼について神の力(ゴッドスキル)の性能以上の事を勇麻に話さなかった。

 彼が欠けた事によって逃亡者の集い旗(エスケイプ・フラッグ)が大幅に弱体化するだろうという予測さえ口にしなかったのには彼なりの気遣いがあったのだろう。


 ディアベラスが勇麻に求めたのは強い意志。

 

 たとえ勝利が絶望的な状況でも、それでも諦めないという強い意志が無ければ意味が無い。考え、悩み、迷い、それでもブレずに自ら導き出した結論だからこそきっと意味がある。


「どうしたよ、逃亡者の集い旗(エスケイプ・フラッグ)。約束通り来てやったってのに、もてなしもなしか?」

「こいつ……っ! あまり調子に乗るなっ!!」


 倒れ伏した貞波を見て怒りをあらわにしたレギン=アンジェリカがナイフを手に勇麻に詰め寄る。

 コイツの手の内は分かっている。

 透化と実体化を使い分け、敵対者の体内に直接刃物を打ち込む事で致命傷を与える神の能力者(ゴッドスキラー)。接近戦しか能の無い勇麻との相性は最悪と言っていいだろう。馬鹿正直に戦っていては相手の思うつぼだ。


「な……!」


 大ぶりで振るわれたナイフを身を引いて躱し、そのまま勇麻は真上に跳躍。レギンの頭上を大きく跳びこして、他の相手に狙いを絞る。

 そもそも勇麻の狙いは始めからただ一人。

 一度顔を見た相手の、生まれてから今までの人生を自由に脳内再生する事ができる『他人語り(プレイバック・アザー)』を持つ生生しょうじょうという名のエセ中華少女のみ。

 生生は、その神の力(ゴッドスキル)を応用する事で、対象者の行動を常時監視する事ができる厄介な神の能力者(ゴッドスキラー)だ。

 彼女がいる限り、ディアベラスの動きは相手に筒抜けのまま。

 逆に言えば彼女の意識を奪う事ができれば、実体を持たないディアベラスによって瞬時に形成を逆転する事ができる。

 先の戦闘の際に勇麻とレインハートも顔を見られている。どちらにせよこのまま野放しにはしておけない。


 敵の重要なキーマンであると同時にアキレス腱でもある生生しょうじょうは、己をウィークポイントであると自覚してか特別な事がない限りは白亜の城の中から出てこないらしい。

 ならばこの守りを突破し、城の中へ突入するまでだ。

 今城門前に集まっている逃亡者の集い旗(エスケイプ・フラッグ)のメンバーは、『死々纏い(モルス・ジェーレ)』貞波嫌忌。

 『透過者ステルサー』レギン=アンジェリカ。

 『人業劇アパタイトパペッター』リリレット=パペッターと、彼女の操る死体の少女『絶対等分アブソリュオン・ディバイド』割宮裂姫。

 『鋼喰らい(メタルイーター)』ライアンス=アームズ。

 『吸収変換コンバージョン・アブソーバ』リズ=ドレインナックル。

 の計六名。

 うち貞波嫌忌は既に撃破、さらに一人は意志なき死体だ。

 あとは城内に侵入するのを妨害する者から順に蹴散らしていくだけ。相手は突然の勇麻の強襲に戸惑っているハズだ。勢いはこちらにある。

 仮に城内で生生しょうじょうを見つける事ができなくとも、どこかに捕えられているであろう和葉を見つけられれば御の字。

 欲を出せば、『聖女』によって連れ去られたアリシアだって見つける事だってできるかもしれない。

 何にせよ、今はこの守りを突破して白亜の巨城への道を開く事が先決だ。

  

 レギンの頭上を飛び越え、それだけで一つの館のような威圧を誇る城の城門目掛けて走る勇麻。

 だがここまで露骨に動けば当然敵も勇麻の狙いに勘付く。

 

「リリと裂姫ちゃんのお城には何人たりとも踏み込ませないし……!」


 リリレット=パペッターが右手を大きく横に薙ぐ。するとその腕の動きに同期して、割宮裂姫が物理法則を無視し中空を滑るように最短ルートで距離を詰めてくる。

 割宮裂姫を操るのは指先から伸びるピアノ線の糸のような物。糸を通じて指示を伝えているのか、糸を振り回して身体を動かしているのかは分からないが、その挙動は人の域を超えた代物だ。

 死体じゃなければ無理な動きに身体が耐えられず悲鳴を上げているだろう。

 視界の外からいきなり勇麻の懐に踏み込んだ割宮裂姫は、光を映さない胡乱な瞳を見当違いの方向へ向けつつ人差し指で刺突を放つ。

 これを切っ先で受けたレインハート=カルヴァートの愛刀は、縦真っ二つに切断された。

 『絶対等分アブソリュオン・ディバイド』の名の示す通り、彼女は触れた物を真っ二つに等分する力を持つ神の能力者(ゴッドスキラー)だ。

 その効力は生身の人間にも当然等しく襲い来る。僅かでも触れればそれだけで命はない。


 不意を突かれた勇麻はその刹那、明確な死の恐怖を感じていた。

 死の切っ先が僅か一センチの領域に迫っている。正真正銘の絶体絶命。

 その恐怖を――乗り越えるべく絞り出した勇気の感情が、東条勇麻の身体を常識離れした速度で動かした。

 ――勇気の拳(ブレイヴハンド)が、熱く燃え上がる。

 

「なっ」


 声をあげたのは、やや離れた位置から割宮を操るリリレット=パペッターだった。


 突き入れられた少女の右の人差し指は、咄嗟に身体を右に傾けた事によって勇麻の左脇の下を素通りしていく。 

 そしてそのまま流れるような挙動で割宮裂姫の右腕を掴み取ると、相手の突進の勢いすら利用して背負い投げの要領で地面に叩き付けた。

 衝撃に地面にひび割れが走り、さらに間髪入れずに割宮裂姫の両腕を縫いとめるように足の裏を両腕に叩き込む。


「――裂姫ちゃんっ!」


 悲痛なリリレットの悲鳴を無視して叩き込んだ強烈な踏みつけ(スタンプ)によって地面にめり込んだ割宮裂姫の両腕を確認し、勇麻はさらに前へ。

 割宮裂姫を操るリリレット=パペッターを潰そうと、勇気の拳(ブレイヴハンド)によって強化された脚力で一気に間合いを詰める。


「――何かを操って戦うような神の能力者(ゴッドスキラー)は、その本体から倒すのが一番って相場は決まってるんだよ!」

「くっ!」


 悪態を吐きながらリリレットが左手を真横に大きく振るう。するとその指先から伸びる糸に引っ張られて、眼前の地面が盛り上がり――地面を突き破って飛び出した岩石が、モーニングスターのように勇麻目掛けて振るわれた。

 勇麻の頭を横薙ぎに叩き潰す軌道のソレを、

 

「甘えっ!」


 短い一喝と共に左の義手の裏拳で粉砕。粉々に砕かれた岩石が粉塵となりリリレットの視界を封じ、次の瞬間粉塵のカーテンから勢いよく飛び出した右の拳が、その華奢な身体をノーバウンドで五メートル程吹き飛ばした。

 そしてほぼ同じタイミング。

 粉塵のカーテンを引き裂く影がもう一つ。

 

「あまり調子に乗らないでね? 可愛い坊や☆」

「!?」


 意識をリリレットに集中していた為、死角から近づく敵への反応が遅れた。

 背後を振り返ると同時に美しい脚線美から繰り出される鋭い回し蹴りが、勇麻の顔面を打擲する。

 そのまま立て続けにボディブロー、足払い、体勢を崩し低くなった脳天へ踵落としと、リズム良く連打を打ち込まれ、血反吐を吐きながら勇麻の身体が地面に沈む。


「がぁっ……!」

「あン、なかなか美味し☆」


 サッカーボールを蹴るような乱雑な蹴りが、地面に横たわる勇麻を軽々と数メートル吹き飛ばした。

 ごろごろと地面を転がり、肌を擦切りながらようやく止まる。

 勇気の拳(ブレイヴハンド)によって得られたエネルギーが、身体に漲る力がごっそりと抜ける不自然な感覚を味わいながら、勇麻は咳き込みながら片膝をついて何とか立ち上がる。


「……くそ、……吸収変換コンバージョン・アブソーバ、か……?」

「あら、ディアベラスから聞いたの? そうよ、坊やの干渉力、美味しく頂いちゃった」


 女の舌なめずりに、ぶわっと鳥肌が立つ。

 リズ=ドレインナックルは己の吸収率を変更する事で衝撃を含む様々な物を吸収してしまう。

 物理攻撃に一定の耐性があるのに加え、さらには触れた相手の持つ体力や干渉力を吸収するという力をも持つ厄介な相手だ。


「私の事も忘れないで貰いたいものだ……!」


 声と共に背後からの斬撃が勇麻の背中を斜めに斬り裂いた。痛みというより焼けるような熱が、鮮血と共に背中で爆発した。

 追いついてきたレギン=アンジェリカが、その手に持ったナイフで勇麻を斬り付けたのだ。


「ぐ……っ!」


 焼けるような熱に苦痛を漏らし、後ろも見ずに放った中断蹴りは襲撃者の身体をすり抜ける。

 足を引き戻した瞬間に透化を解除し実体化したレギンが、勇麻の足をがっしりと掴んだ。そのまま神の能力者(ゴッドスキラー)の膂力でリズ=ドレインナックル目掛けて放り投げられる。

 放物線を描いて落下する勇麻は、回る視界の中、勢いよく振りかぶられた拳が凄まじい速度で打ち出されるのを確かに見て、直後思考が粉々に吹き飛ぶような鈍痛と共に宙を舞った。


「ごぁ、がはっっ!?」


 地面を跳ねるように何回もバウンドして、数十メートルも転がってようやくその勢いが止まる。

 何とか立ち上がろうとしたその瞬間、凄まじい閃光と衝撃波を伴って飛来した破壊の弾丸が、勇麻の横数センチの地面に風穴を開けた。

 落雷のような轟音と吹き荒れる破壊の衝撃波に、立ち上がりかけていた勇麻の身体がまた吹き飛ばされる。


「くそっ!」


 転がるようにして立ち上がり、そのまま痛む身体を無視して走り出す。

 謎の攻撃の軌道上、白亜の巨城の尖塔に立つ人物の異形の右腕が、こちらを照準しているのが勇麻にも見えたからだ。

 月明かりを反射してスキンヘッドが輝く。

 『鋼喰らい(メタルイーター)』ライアンス=アームズ。

 銃器などの機械を己の身体に取り込み、自らの手足のように扱う神の能力者(ゴッドスキラー)。そして彼が敵にトドメを刺す際に好んで使う武装は、


「レールガンかよ!!」

 

 一か所に留まっていては狙い撃ちにされるのは目に見えている。先ほどの一射目が外れたのは単なる偶然か、それともライアンスが己の計算との誤差を修正する為の物だったのか。どの道、かかしのように突っ立っていては今度こそ殺されるのは間違いない。


 とにかくジグザグに走り、狙いを絞らせないようにする他ない。

 一気に開いた距離を詰めるべく、地面に稲妻を描くような無茶苦茶な軌道で勇麻は大地を駆け抜ける。

 次々と打ち出される破壊と衝撃波に身体を揺さぶられつつ、心に生じる恐怖を上回る勇気でねじ伏せ、己が力へと変換していく。


 ……負けられない。こんな所では終われない。立ち止まる訳にはいかない。絶対に退けない。

 勝ち目がなくても、勝算なんてなくても、無茶で無謀で愚かなのだとしても最後まで己の心に従い挑むと決めたのだ。

 ましてやここを潜り抜ければ勇麻の拳は逃亡者の集い旗(エスケイプ・フラッグ)に届く。生生を倒せば、九ノ瀬和葉もアリシアも救いだす事ができるのだから。 

 こんな逆境、何度だって潜り抜けてきた。

 もっと果てしない絶望にぶち当たった事だってある。

 燃え上がれ。己の命を火にくべて、感情を一滴残らず絞り出せ。

 聞き覚えのある声をした、どこかの誰かが言っていた。分不相応にみっともなく届かない物に手を伸ばし続けるのが東条勇麻だと。だと言うのなら、どこかの誰かが訳知り顔で言っていたことを覆してみせようではないか。

 分不相応に届かない物に手を伸ばし、みっともなくともこの手を届かせて見せよう。

 不可能か可能か。できるできない。そんな些細な事は置き去りに、この胸の裡で暴れ回る感情のままに、欲する全てを救ってみせる。

 

 諦めない不屈の闘志が勇気の拳(ブレイヴハンド)を燃え上がらせ、燃え上がる勇気の拳(ブレイヴハンド)が、東条勇麻をさらに加速させた。

 

 いっそ全てがスローモーションにさえ感じる世界の中、勇麻は右足で大地を蹴り、左へ大きく跳躍。空中で身体を捻り、衝撃波を纏って迫る金属砲弾が脇腹を掠めて後方へ流れていくのを確かに視る。

 痛みはある。だが身体は問題なく動く。 

 着地と同時に身を屈め、獲物を刈り取る四足歩行の獣のような低姿勢で地を這うように城門へと追いすがる。

 髪の毛を弾丸が掠め、背筋にひんやりとした感覚を覚える。

 次に進行方向へ撃ち込まれる弾丸に対して、勇麻は躊躇なく右の拳を地面に打ち込みその反動で右真横へと緊急回避。

 さらに立て続けに放たれる弾幕を、見えているかのように潜り抜ける。 

 まるで東条勇麻の通った後を追うように遅れて大地に穿たれる弾痕が、勇気の拳(ブレイヴハンド)を宿した少年の常識はずれの反射速度を物語っていた。

 そのまま速度を落とすことなく城門目掛けて駆け抜けていく少年の前に、二つの影が立ち塞がる。


「貴様は、一体何だと言うのだ! 大人しく……聖女様に殺されていればいいものをっ!!」


 一人は金髪をポニーテールにした、女性らしい身体付きの生真面目さが表情にまで滲み出ているような少女。レギン=アンジェリカ。


「活きの良すぎるぼうやね。聖女様に差し出す前に、手足の一つぐらいはもいでしまいましょうか」


 そしてもう一人が、深いモスグリーンの髪をした、豊満な胸元をいっそ下品にはだけさせた色香と堕落を愛するような風貌の女。リズ=ドレインナックル。 

 再衝突まで、後十メートル。


「……邪魔を――」


 だが、そのどちらもが今の東条勇麻の眼中にはなかった。

 勇麻の視線が向かう先はただ一つ。アリシアと和葉が待つ白亜の巨城のみ。

 その白亜の巨城の尖塔の上、月明かりに照らされ輝く狙撃手、ライアンス=アームズと勇麻の目が合ったその瞬間。

 閃光を伴って死の弾丸が打ち出された。

 尖塔から撃ちだされたのは一撃必殺を誇るレールガン。

 閃光と衝撃波とを伴って勇麻を撃ち抜かんと射出されたその金属砲弾を、


「――するんじゃねぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええええッ!!」


 全身全霊で振り抜いた東条勇麻の義腕の左拳が捉えていた。


「おぉ、……っうぉぉ、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!」

 

 インパクトの瞬間、勇麻は己の五感が死に絶えたような錯覚を覚えた。

 拳と砲弾を起点に周囲に同心円状の衝撃波が広がり、拳を撃ち出した勇麻を支える二つの足が、地面に放射状にひび割れを走らせる。

 食いしばった口元からは流血が流れ、全力の咆哮は着弾の轟音にかき消される。

 拮抗した時間は一瞬。だが勇気の拳(ブレイヴハンド)によって疑似的に加速された体感時間が、その一瞬を引き延ばす。

 酷く間延びした時間の中、左拳を打ち砕かんとする意志を肌で感じながら、それでも勇麻は抗い続ける。

 義腕である左腕と生身の肩口とを接続するジョイント部が軋み、悲鳴をあげる。左拳から伝わる莫大な運動エネルギーに、内臓がぐちゃぐちゃにかき回されているような錯覚を覚える。

 だけど。

 この程度の一撃、跳ね返せずして神の子供達(ゴッドチルドレン)を倒す事などできる訳がない。


「うぉおおッ!! ――っらぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!!」


 魂まで燃やし尽くすような咆哮と共に、東条勇麻は全力で左拳を振り抜いていた。


「な……っ!? 打ち返した、だとッッッ!?」


 誰かの驚愕が遠くに感じる。

 まるで時間を巻き戻すかのように、今来た道をそっくりなぞるような軌道で金属砲弾がライアンス=アームズの右腕へと綺麗に吸い込まれていく。

 そして。


 レールガンを撃ち出す右腕の機構もろとも、ライアンス=アームズが大爆発を起こした。



☆ ☆ ☆ ☆



 爆発の衝撃派と炎熱が、城門前を席巻した。

 まき散らされる壮大な破壊が、かの逃亡者の集い旗(エスケイプ・フラッグ)の砲手の放った一撃の威力を逆説的に物語っていた。

 まるで夕焼け空のように赤々と燃え上がる景色の中、義腕である左腕の付け根から血を流しながら、東条勇麻は息を荒くしていた。


「っはぁ、はぁっ、はぁはぁ……」 


 極限の集中力と、限界まで力を捻り出して撃ち出されたレールガンを打ち返した勇麻は、それでも歩みを止めようとしない。

 一歩、また一歩と、目指す白亜の城へと歩みを進めていく。


「……待ってろ、アリシア、和葉」


 身体を叩いた衝撃波の影響はゼロではない。

 むしろその壮絶な熱波は喉を焼き、爆発の衝撃は確実に勇麻の体力を奪っている。

 だがそれでも、意志は揺るぎはしなかった。

 東条勇麻がその右腕に宿す力は勇気の拳(ブレイヴハンド)

 勇麻の精神状況により、五感を含めた身体能力を強化、弱体化させる神の力(ゴッドスキル)である。

 その意志が砕けぬかぎり、少年を止めるものはもう何もない。

 つまりはそういう事だった。


 勇麻よりもより至近で爆発の衝撃派と熱波を浴びたレギン=アンジェリカとリズ=ドレインナックルは失神しているようだ。

 実質的に、聖女と城を守る逃亡者の集い旗(エスケイプ・フラッグ)はもういない。


 正直に言って、こんなのは勝利でも何でもない。

 偶然に偶然が重なった幸運というやつに過ぎない。

 確かに彼らは昼間戦った時に比べて弱体化してはいた。だがそれでも、冷静になって対処されていれば勇麻一人でどうにかできるような戦力ではなかったはずだ。輩屋災友が死んだ今、もしかすると貞波嫌忌が彼らの精神的な支柱になっていたのかもしれない。

 どちらにせよ、短期決戦に賭けたのは正解だったと勇麻は思う。もっとも、最後の一手から何までアドリブまかせの不確定な賭けでしかなかったのだが。


 勇麻は逸る気持ちについていかない身体を懸命に動かし、それでもついに城門に辿り着く。

 固く閉ざされた城門に右の拳を打ち付けると、赤黒いオーラを纏った一撃で扉部分が木っ端微塵に砕け散った。

 そして何の躊躇もなく、少年は門を越えていく。


「気絶した奴らが起きる前に、皆を見つけなきゃな……」


 ――この瞬間、東条勇麻は聖女の住まう白亜の巨城へ自力で侵入した二人目の――逃亡者の集い旗(エスケイプ・フラッグ)を除いてではあるが――神の能力者(ゴッドスキラー)となったのであった。



☆ ☆ ☆ ☆



 不敬な侵入者の迎撃に向かった仲間達が倒れていく様を、生生しょうじょうはその神の力(ゴッドスキル)を用いて眺めていた。


「あちゃー、見事に負けたモンだネ。というか、災友クンいないにしてもあの子前より強すぎヨ」


 ……輩屋災友が欠け、正門組が悉く打倒された今、残った戦力は生生と竹下悟のみ。

 そのどちらもが後方支援が主な役割で、直接戦闘では他のメンバーに一つも二つも劣る事を両者ともに自覚していた。


「ふむ。生生氏、もはや議論の余地もないのでは? 我々のみでは敗北は必須。かと言って、恥ずべき逃亡者である我らはこれ以上逃げる事は許されない」

「……結局、都合の良い事言って、全部あの子に投げ出してるだけヨ。アタシ達サ」

「もとより『招待客』の抹殺が彼女の望み。であれば我々は、それを叶える。我らが主の望みを叶える為の装置となる。……あの日、決めた事ですぞ」


 そうだ。こんな話し合いに意味はない。

 前線に立つ貞波達が撃破されたのならば、もう選択肢は一つしかない。生生も悟も、それを選ぶしかない。選ばないという逃げの選択肢は、彼らにはもう存在しない。

 だからこんな会話はそもそもが不要。

 自らの罪悪感を紛らわせる、それこそ偽善より醜悪な自慰にすぎない。


「ならさっさと終わらせヨっか」


 生生は捕えた少女の事を思いだしながら言う。


「あの子餌に、生贄を祭壇に導く。……それくらいなら木端のアタシ達でも出来る事ネ」



☆ ☆ ☆ ☆


 

 城内は閑散としていて人影は見当たらない。

 広大な敷地内は、普段一体誰が管理しているのかと疑いたくなる程手入れが行き届いていた。

 白亜の巨城はロの字型の造りをしていて、そこから外側や内側に次々と建物や機能を付け足して膨張したような雑多な印象を受ける。ロの内側……つまりは中庭に当たる部分にやたら巨大な尖塔が突き立っていた。怪しげなので調べようとしたが地上に入口は見当たらない。どうやら三階の空中通路のようになっている渡り廊下を使えば中に入れるようだ。

 先の爆発の影響を受け、植木や中庭の花々のいくつかは赤々と燃え上がっているが、それを除けば小奇麗な物だ。

 尖塔の探索を後回しにした勇麻は、ひとまず城内部へ。

 煌びやかな絵画や黄金の飾りが虚しく輝く、回廊の外側へと飛び出すように造られたがらんどうとした一階大広間を抜け、階段をあがり二階に走る。

 あの尖塔も気になるが、かと言って他の部屋を無視する事もできない。こうなったら手当たり次第だ。

 甲冑の並ぶ回廊を駆け、目についた扉を虱潰しに開けては閉めて開けては閉めてを繰り返す。

 空ぶりがかさむ度に焦りが募り、扉を開く手つきはより乱雑になる。

 息をきって廊下を走り、けれど正解の部屋は見つからない。

 どこに和葉やアリシアがいるのか分からない。

 城内にいるはずの逃亡者の集い旗(エスケイプ・フラッグ)の残りのメンバー、生生しょうじょう竹下悟たけしたさとりも姿を現さない。

 不気味なほどの静寂は、不吉な死を予感させ勇麻を不安に駆りたてる。

 

「アリシアーーっ!!」


 縋るように、手を筒のようにして口にあて叫ぶ。


「和葉ーーっ!!」

「~~~」


 反響する勇麻の声に、何か、小さく返事があったような気がした。


「誰、か。いるのか……?」

 

 疑問形で投げかけた言葉に、やはり誰かが何か言葉を返している気がする。音源は……ここではない。さらに上……?


「……待ってろ、今助ける!」

 

 全身に鳥肌が立つのを感じながら、勇麻は残った力全てを振り絞って三階へと急いだ。

 耳に届く声は、だんだん大きく、はっきりとしてくる。何を言っているのかはまだぼやけてしまってよく分からないが、聞き覚えのある声だった。 

 間違いない、すぐ近くに彼女がいる……!

 逸る気持ちが、頭に響く心臓の鼓動が、全てが勇麻を前へと前へと急かす。

 一心不乱に廊下を駆け抜けて――辿り着いた一枚の扉。ドアノブを握って開けるのももどかしく、勇麻は扉目掛けて右の拳を振り抜いていた。

 インパクトの瞬間赤黒いオーラが発生、豪快に扉をぶち破ると同時に部屋に飛び込み、耳に届いた声の主の名を叫ぶ。 


「和葉ーっ!」


 扉が消え去り開けた視界の先に、頭の上で手首をくくられ部屋の柱に磔にされている九ノ瀬和葉がいた。

 その隣には、大きく肥えた腹を持ったふくよかな男――おそらくは竹下悟たけしたさとりと、頭のうえでふたつ団子をつくっている黒髪チャイナドレスのエセ中華風少女、生生しょうじょうが立っていた。

 和葉の隣に立つ逃亡者の集い旗(エスケイプ・フラッグ)の二人の姿を見た途端、勇麻は己の頭に血が昇るのを自覚した。

 だが湧き上がる感情を静止させようとも思わない。

 そのまま拳を固く握りしめて、残る二つの障害を片付けようと床を蹴り出し感情を爆発させる。

 勇気の拳(ブレイヴハンド)が、熱く滾り燃え上がる。


「和葉を……放せっ!」


 そんな勇麻を見て、九ノ瀬和葉も涙目で叫び返した。


「東条くんっ! これは罠よ! 来ちゃダメっっっ!!」


 助けるべき少女の悲痛な金切り声を、勇麻はまともに聞いていなかった。

 何故なら。


 部屋に一歩踏み込んだその瞬間に、東条勇麻は背後から手刀によってその胸を貫かれていたからだ。


「……ごふっ」


 ぼだぼだ、と。

 げっぷのような間の抜けた音と共に、口から大量の血が零れ落ちビロードの絨毯が敷き詰められた床をさらなる真紅に上書きした。


「そ、んな……。いや……」


 眼前の和葉が、ゆっくりと首を振るう。

 その顔は何故か病人のように青ざめていて、血の気が引いているように見えた。

 驚愕に見開いた瞳に溜まっている水滴は、涙だろうか……? 

 勇麻は鉛のように鈍重な思考をひっさげて、それでも和葉の表情に心を痛める。

 ……どうしてだろう。どこか具合でも悪いのだろうか。それともなにか怖い思いでもしたのだろうか。でももう大丈夫。だって、こうして、東条勇麻は九ノ瀬和葉を助けにここまでやって来たのだから……。 

 だから、もう安心してもいい。その涙をきっとこの手で拭ってやれるから。

 そう、口にしようとしたのに……。


「――イヤァアアアアアアアアあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!?」


 九ノ瀬和葉の慟哭を、東条勇麻はどこか他人事のようにボンヤリと聞いていた。

 

「……まったく、やけに騒がしいと思えば、まさか城内に踏み込む者が現れるなんて……。それにしても驚きです。生きていたのですね、東条勇麻」


 この世の全てに関心がないような冷たいその声は、勇麻のすぐ背後から聞えてくる。

 ぎちぎちと、錆びついたからくり人形のようなぎこちない動作で振り向くと、そこにいたのは絶世の美少女とでも表現すべき、作り物のように美しい女だった。

 不自然なほどに鮮やかな赤い瞳は、闇夜に輝く凶星のように冷たく無感動に勇麻を見下ろしている。

 髪色は輝く黄金の波のようなウェーブブロンド。起伏の激しいメリハリのある肢体は透明度の高いネグリジェに包まれ、全裸でいるよりもいっそ妖艶で蠱惑的な雰囲気を醸し出している。 

 己の身長をゆうに超える長すぎる髪の毛をまるで着物の帯のように腰に巻きつけ、本来シルエットのだぶつくネグリジェのウェストが引き締められ、大きな胸とくびれのラインがより強調されていた。

 会うのはこれが初めてでは無い。初めて会ったあの時も、たった一度の交錯で殺されかけたのを覚えている。

 宿敵にして天敵。

 干渉レベル『Sオーバー』。測定外の領域に立つ者。

 『白衣の悪魔』によって蹂躙されし未知の楽園(アンノウンエデン)を救った英雄、『救国の聖女』にして、その白衣の悪魔の『遺産』とも呼ばれる者。

 その名は、クリアスティーナ=ベイ=ローラレイ。

 未知の楽園(アンノウンエデン)最強の神の子供達(ゴッドチルドレン)が、背後から勇麻の心臓を鷲掴みにしていた。

 

 勇麻は、己の胸から飛び出た少女の柔らかそうな掌が、己の心臓を優しく握っている光景を不思議そうに眺めていた。

 どくっどくっ、と。時を刻むように脈打ち蠕動する肉塊に、視線を釘づけにされる。

 だが何をどうする事もできない。

 

 まるで、勇麻の肉が自ら少女の掌を受け入れるかのように、突き入れられた腕の通り道を勝手に開いたような感覚だった。

 背中から胸まで貫く形で建設された肉のトンネルは、少女がその筋力によって物理的に作った物ではない。

 おそらくは神の力(ゴッドスキル)。空間を司る彼女の力が作用し、ほんの片手間で東条勇麻を殺していた。


 何一つとして理解が追いつかない間に、全てが終わってしまっていた。現実の認識を、勇麻の脳みそが放棄している。

 まるで全てを正しく認識した途端、それが改変不可能な現実になってしまうと怯えているかのように。

 

「やはり貴方は危険です。貴方はあまりにも容易に淀んだ不変の停滞を打ち破る。相手にしたのがいかに『窓口』とは言えど、あの状態から生き延びてここまでやってきてしまった貴方を見過ごす訳にはいきません。だから、今度は勝手に死ねなどとは言いません。『窓口』越しではありますが……私が貴方の死を確認しましょう」

「……ぁ、あぁ? え、……あ、」

「今度こそさようなら。そしてごめんなさい。二度も貴方を苦しめてしまう羽目になってしまいました。ですが、これも仕方がないのです。貴方が私の停滞を揺るがさなければ、こんな事をする必要もなかったのですから」

「いや。いや、嫌だ、やめて……ッ! お願いだから殺さないで! 東条くんっっ!!」


 最後の瞬間、勇麻は和葉を見て口を開いて――


 ――クリアスティーナ=ベイ=ローラレイは、少年の心臓を握った手に力を籠めて一息にそれを握りつぶした。


 噴水のように少年の口から粘つく赤い血が噴き出し、少女の掌が握りつぶした血袋から赤い液体が勢いよくぶちまけられ、部屋中に真紅の斑点模様を描いた。

 耳を塞ぎたくなるような粘つく肉と血の音を奏でつつ、聖女はただの肉塊となった物体から腕を勢いよく引き抜く。どういう理屈か、その腕には返り血一つない。 

 まるで東条勇麻の存在そのものを許容しないとでも言うかのように、聖女は己に少年の足跡を何一つ残す事を許さない。


 電池を抜いたように穴の空いた東条勇麻の身体がぐにゃりと床に崩れ落ち、真っ赤な溜め池のうえに横たわる。

 見開いたままの瞳は、急速に生気を失い淀んだ空虚な黒の珠となる。

 九ノ瀬和葉の声にもならない大絶叫が、響き渡った。


 聖女はまるで路傍の石を見るような瞳で倒れた東条勇麻を一瞥すると、感慨もなく淡々と言う。


逃亡者の集い旗(エスケイプ・フラッグ)。許可も無しに三階(我が領域)に踏み込んだ件、今回に限り不問とします。それからそこの少女を解放してあげなさい。彼は約束を守り一人でここまで来たのでしょう? ならば、貴方達も約束に誠実であるべきです」


 ちらりとも視線を向けぬまま放たれた言葉に、しかし逃亡者の集い旗(エスケイプ・フラッグ)の生生とさとりはその場にひざまずくと、仰々しく頷いた。


「「ハッ、我らが主の御心のままに……!」」

「……私はもう戻ります。貴方たちが何をするのも勝手ですが、これ以上私の永久の微睡を邪魔しないでください。私は何もしたくないし誰にも会いたくないし誰の声も聞きたくない。……独りでいたいのです。もう、三階ここへは二度と立ち入らないでください」


 沈黙を肯定と受け取り、聖女は自分を信奉する逃亡者の集い旗(エスケイプ・フラッグ)の面々に背を向ける。

 が、歩き出す前に一度振り返り、床に倒れ伏している東条勇麻の死体へ掌を向けて、


「……この街の人々は弱者には冷たいですが、死者への畏敬の念は忘れておりません。本来なら私がやるべきなのですが……。出来る事ならば、厚く弔って貰ってください」 


 何らかの力を発動させ、東条勇麻の死体がその場から掻き消えた。

 聖女が己の神の力(ゴッドスキル)で、東条勇麻の亡骸をどこか別の場所へと転移させたのだ。彼の無惨な死体を見つけた誰かが、丁重に葬ってくれるだろう事を信じて。

 聖女はどこか満足げに頷くと、その姿が現れた時と同様、空間に溶け入るように消えていく。

 今も自室のベッドに沈んで微睡んでいる彼女本人が、『窓口』を解除したのだろう。

 

 ……後に残ったのは依然として跪き顔をあげない逃亡者の集い旗(エスケイプ・フラッグ)の二人と、茫然と少年の死に涙と嗚咽を漏らす少女ただ一人だった。



 逃亡者の集い旗(エスケイプ・フラッグ)はメンバーのほとんどが東条勇麻によって撃破されるも重体は一名。死者は〇名だった。 

 聖女の住まう白亜の巨城で発生した火災も、その後すぐ鎮火を確認。

 此度の件の襲撃犯にして『招待客』であった東条勇麻は無事死亡。

 『救国の聖女』クリアスティーナ=ベイ=ローラレイによって、心臓を握りつぶされた。

 聖女の言葉もあり、人質として捕えられていた九ノ瀬和葉は逃亡者の集い旗(エスケイプ・フラッグ)から解放された。


 これが今回の事の顛末。

 一人の少年は、己の命と引き換えに一人の少女を助け出した。

 本当に救いたかった少女に、一目合う事も叶わぬまま。

 これが物語の結末。

 最高にくだらなくてつまらない、一人の少年の人生の幕だった。


 

 ――希望は、静かに潰えた。

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