行間Ⅱ
○○○○年×月△日
『特例寵児育成研』
所長バードン=ノードブル
【定期報告】
現在『特例寵児育成研』(以後『特例研』)にて行われている『God children Mass production project』通称『コード:GTMP』(以後GTMP)は予定通り進行中。
我が『特例研』では生まれたばかりの新生児の中でも極めて高い干渉レベルを持つ子供達を選定し、通常の環境では育てる事すら困難な幼き命を引き取り、社会に適応できるように神の力の制御方法を学ばせ、独り立ちできるようになるまで育てる――という建前の元、収集した新生児の数は既に三千を超えております。
(中には子供の引き取りに応じない家庭もありますが、その場合はマニュアルAにて対応。事実の隠ぺいにはマニュアルCにて対応。別紙を参照してください)
『GTMP』発令から既に二十五年。既に出荷した第五期生までの中に神の子供達は今現在一人も発現はしていないものの、極めて高い水準で、安定して強力な神の能力者を育成する事に成功。高レベルの神の能力者を開発、育成するノウハウは、十分に実績をあげていると判断できます。このまま数年以内に神の子供達を複数人輩出する事は十分に可能かと。
特に第十期生の被験体一三〇七番や第七期生の八七七番などは非常に優秀な数値を観測している為、今後の経過に注目。より優先的に育成にあたります。
……被験体1307番に関しては神器『ウロボロスの尾』を接続し、擬似的な永久機関としたうえで、『多重次元空間』の展開を確認。
未知の楽園の土地不足、人員過多の解消に成功しています。
また神の子供達へ至る為に必然とさえ言われている『神化』ですが、こちらも特定の感情値がキーになる事はほぼ確定。ですが個体によってキーは異なる為、マニュアル化して効率化を図る事は不可能。
高い資質を持つ神の能力者の中からさらに選抜し、より可能性のある神の能力者数名に対して、個別にメニューを組む必要があるかと。
なお『神化』に影響する『感情値』を不必要に刺激することなく必要なタイミングまで平常値に保つ為。また『感情値』の変化変遷をより予測、観測しやすくする為に、一般的な教養や倫理に道徳、社会常識の学習も不可欠と判断いたしました。
通常の義務教育相当の内容の『授業』を毎日欠かさず行う事により、正しい心と知識を与えれば、より管理しやすい『聞き分けの良い子供』として調整する事も可能でしょう。
また学習によって日常生活で生じる不都合は、就寝時のサイバーポットによる『洗脳』と起床時の薬物投下で問題なく抑制できることが確認されています。
洗脳と薬物投与によって現状に対する認識を阻害している為、心身共に掛かる負担は少なく、安心してベストコンディションで人体実験を受けれるように調整されています。
(万が一『認識阻害』が解けた場合はマニュアルFにて対応。周囲に対するケアはマニュアルEにて対応)
また『洗脳』の『認識阻害』による副産物として敵対勢力や不穏分子の『掃除』もこれまで通りに。いつもの窓口は常時開放されておりますので、ご依頼があればその都度連絡して頂ければ幸いです。ご入金はいつもの口座によろしくお願い致します。
※この書類は開封後二四〇秒経過すると自動でインクが消滅する仕組みになっております。




