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tease


「ぅ…。」



ベッド脇の窓から入ってくる黄金に光る朝日によっていつもより少しだけ早く俺の一日が始まった。



今日は土曜日。この陽射しなら一日快晴だろう。でも俺の心は曇天だ。



「はぁ…。」



溜息をついてベッドから降りる。




昨夜、俺は弟である竜に告白された。


何故かはよく分からないけど…


そしてOKしてしまった俺。


いやしかし、あれは仕方ない事だったのだ!もし母さんにあんなところを見られてしまったらなんか色々まずかった…と思う。


高校生の兄弟が、ソファーの上であんな体勢してたら誰だって驚くだろ。


あのヤロ…ぜってーに狙ってやったな・・・。





風呂に入って頭を冷やした俺はもう一度リビングヘ行き竜とちゃんと話をしたかった。


しかし、そこには母さんが録画していたドラマを見ている姿しかなく、竜はとっくに自分の部屋に戻ってしまっていた。



だから、あれから竜と話さないまま朝が来てしまった。






ふぅ、と深呼吸をして朝ごはんを食べようと部屋のドアを開けて一階のリビングへ向かう。


ちなみに俺の家はキッチンとリビングが繋がっている。






「おはよー」



リビングのドアを開けると朝ごはんの美味しそうな匂いが漂ってきた。



「おはよう。ご飯出来てるわよ。」



長い髪を適当に後ろで一つに縛っている母さんがテーブルに家族分の料理を並べながら言う。


ただし必ず父さんの席には何も置かれない。それは、父さんが隣の県へ単身赴任しているからだ。二ヶ月に一度くらいのペースで父さんは帰ってくる。






キョロキョロと見渡すと竜の姿は無い。よかった、と料理が並べられた自分の席につく。


今日は洋食か。



「いただきま「おはよー」・・・」



俺の言葉を遮って竜が入ってきた。



急に身体が強ばってぎこちなく箸を持つ。



「あら、おはよう。二人とも今日は早いわね。」



俺の気持ちを察する事なく母さんは楽しそうだ。鼻歌混じりに目玉焼きを作り始めた。


いや、別に察してほしくないけどさ…。




ガタ…


俺の隣の席に竜が座った。



「…。」


「…。」



き、気まずいんですけど…。



ちらりと竜を横目で見ると目が合ってしまった。



「一ッ!」



心の中で『きゃー』と叫ぶ俺。落ち着け!



それから竜は昨日と同じようにニッコリと微笑んで俺の耳元に唇を寄せてきた。



何だろう…?



俺もよく聞こえるように耳を軽く竜の方へ傾けた。




「おはよ、和希(カズキ)。」



!!!



ななな//なに、そのイケメンボイスは!?



ってか、お前今俺を呼び捨てで…!



昨日といい、今日といい、こいつはきっと俺をからかっているんだ!うん、そうだ。ここで慌てたらヤツの思うつぼだ!



そうと分かれば・・・




「おはよ、竜。」



負けずと満面の笑みで答えて反応を待つが、竜は何も言わずに嬉しそうに朝ご飯を食べ始めた。



え、なんか虚しい・・・。


何も言い返さないのかよ!


せめて何か言おうよー!兄ちゃん傷ついたぞ!取り敢えず無視はやめようよ。



とか有りもしないテレパシーを竜に送ってみるがそんなの届くわけもなく、卵が焼ける音だけが部屋に響いた。









「「ごちそうさま。」」



15分後、二人同時に食べ終わった。



見渡すと母さんはいつの間にかいなくなっていた。きっと化粧でもしに部屋へ行ったのだろう。





それから竜は立ち上がってガチャガチャと先に皿洗いを始めた。



この家では自分の皿は自分で洗うのがルール。


竜が皿洗いをしている間に俺は食後のコーヒーを楽しむというのがいつもの習慣だ。



でも今日はジーと目の前にいる竜を見つめながらいろいろ考えていたから、楽しむどころか無意識のうちにコーヒーを飲み干してしまった。




皿洗いが終わってキュッと蛇口を締めた竜が俺を見てクスクス笑った。



「和希、そんなに見つめられると俺恥ずかしいんだけど?」



「あ、ゴメ…じゃなくて、何で呼び捨てなんだよ!?」



そう、これスッゴク気になる。いきなり名前で呼ばれるとかありえないっしょ!さっき聞けなかったから今ちゃんと聞いておこう。



「へ?だって俺たち付き合ってんじゃん。」



当たり前だろ、と言う竜。


当たり前なのか!?違うだろー!付き合ってるかは置いといて、兄貴を呼び捨てするとは…。



「そのことだけどさ、「あ、二人共食べ終わった?」・・・;。」



母さん…(泣)


なんてタイミングの悪い…。



母さんは化粧をバッチリしてリビングに入り、俺の前の席で朝ご飯を食べ始めた。



これじゃぁ竜と話が出来ないじゃないか!



食べ終わった食器を素早く重ねて流しに持っていく。


そして食器を拭いている竜の隣に立つ。



「竜、後で話がある。」



「んーわかった。俺、部屋にいるね?」



「ん。」



そう約束して竜は食器を片付けて部屋に行ってしまった。




俺も大急ぎで片付けて竜の部屋へ向かった。




【つづく】



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