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3


あの“バカ”が来たのは2限の英語が終わった後だった。


「おっはよ〜!」


よく寝たと顔に書いているようなスッキリした顔で鞄を机に下ろすと、椅子に座って後ろの席の俺に体を向けた。


「やっと来たな。」


「え。なに?何かあったの?」


「放課後、職員室行きだ。」


「御愁傷様〜。」


俺だけが職員室に呼ばれたと思ったのだろう。貴斗はニヤニヤしながら俺の肩を叩いた。


「お前もだ貴斗。」


今度は逆に俺がニヤリと笑いながら言うと、あからさまに嫌な表情に変わった貴斗がその場に立ち上がった。


「えー!俺も!?何で?」


「1限原田の授業だったんだよ。で、宿題を忘れた俺と貴斗が呼び出されたってわけ。」


自分も呼び出されたと知ると貴斗は脱力したかのようにそのまままた椅子に座り、俺の机に数秒突っ伏した。


「おーい、貴斗ぉ」


顔を上げない貴斗に声をかけるとゆっくりと頭を持ち上げた。


「…よし、さぼろう。」


はああ!?1限さぼった上に放課後もさぼる気か!


「バッカ!何言ってんだよ!お前連れていかなきゃ俺が怒られるだろ!」


「だって今日は早く寝たいんだもん。」


なにが“もん”だよ。そんなふうに可愛く言ったって俺には通用しないからな!


「お前の場合いつもだろーが。」


「あはは、まあね〜。」


「とにかく、俺のためにもお前を連れていくからな!」


「えー」


「えーじゃない!」


「…はぁい。」


渋々返事をして、また俺の机に突っ伏してしまった。


ここはお前の枕じゃねーからな。


ツンツンと茶色い頭を触ると「ん〜」と言いながらもぞもぞ動くのがなんだか面白い。



「和希。」


「ん?」


貴斗で遊んでいると頭上から名前を呼ばれ、声のした方を仰ぎ見る。そこには少し困ったような表情の一也がいた。


声を聞いて一也と気づいたのだろう、貴斗も机から顔を離して一也の顔を見た。


「あ、一也。おは〜」


「おう、やっと来たか。」


「うん。」


お互いに片手を軽くあげる様に挨拶したのを見てから一也に本題を尋ねることにした。


「どうした?」


「さっき昼休みに勉強教えて欲しいって言ったけど、俺部室行かなきゃいけないんだったわ。ごめんな。」


申し訳なさそうに両手を合わせる一也を見ながら、今朝二人で廊下を歩いていた時に一也が誰かに部室に呼ばれていた会話を思い出した。


「ああ、今朝の…。」


「そう。だからさっきの話は無かったことにしてくれないか?」


「わかった。まぁ、早く戻って来たら教えてやるから。」


「え、マジで!?ありがとう和希!急いで戻って来るな!」


一也の目がいつも以上にキラッキラだ。


「別に急がなくてもいいよ。」


「そうそう、ゆっくりしてきたらいいよ。昼休みは俺とイチャつくんだもんな〜。な、和希。」


なにか大事な用事かもしれないし、特に俺はこれといって用事も無い。そう思って言ったのだか、急に話に入ってきた貴斗が変なことを言い出した。


またお前はバカなことを…


「イチャつかねーよ。」


そう言いながら貴斗の鼻を摘まむ。「えー」と口を尖らせる貴斗だが、鼻を摘ままれているせいかなんだか面白い。

それを見た一也はニッと笑って、


「だったら余計急がないとな。」


と悪ノリしてきた。


「しないっての!」


本当に人の話を聞かない奴等だ。


その後は俺の話なんか一切聞かず、俺とイチャつくのは自分だと言い張る二人が授業の為に教室に来た先生に怒られたことは言うまでもない。



【つづく】



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