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【毎日更新】崩界のオブリテレーター(旧題:クソザコチート召喚~戦闘で役に立たな過ぎる最弱能力を持たされた高校生が異世界を渡り歩いていきます~)  作者: エチゼン鏡介
第一章 暁のサン=ヴォワイエ――役に立たなすぎるチートしか貰えなかった高校生は生き残る事ができるのか
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第2話 唐突な召喚

最新話はカクヨムで先行投稿しています。

 眼の前が、眩しい光で一杯になる。

 反射的に目を閉じただろうか、それともあまりに突然の事で何もできなかったのか。

 それを確かめる事すら覚束ない程の刹那、一瞬の光の後に眼の前の光景はがらっと変わった。


「――え?」


 私は今、学校へ行く途中だったはずなのに!?


 衣目川南那の眼前に映る景色は唐突に、その光を境にまったく理解できないものへと変貌していた。

 毎日のように通う見慣れた通学路から、何処とも知れぬ薄暗い見知らぬ空間へ。


 そこは、体育館ほどもある大広間だった。

 白く磨き上げられた大理石の壁面が、戸惑う自分たちの姿を鏡のように歪んで映し出している。


 周囲を見渡せば、自分と同じように見知らぬ制服を着た男女が、数十人ほど呆然と立ち尽くしていた。


 戸惑いながらも、誰も声を発する事は無い。ただきょろきょろと首を振るばかりだ。

 隣に人が居るのに、話しかけようともしない。


 それはそうだ、なにせ初対面の相手しか居ないのだから。

 少なくとも、南那にとってはそうだった。

 そこには誰一人見知った人間は居なかったのだから。


 そんな混乱の最中に居る学生たちを囲むように、人が立っていた。

 彼らを護るように、もしくは逃さないように、等間隔で人による囲いを形成していた。

 その鎧姿の男達――多分――は一様に同じ金属の鎧、そして無骨な剣を構えており、より一層今の状況の現実感を損なわせていた。

 一般的高校生の自分達に、鎧姿の者たちに囲まれる経験なんて有る訳無い。

 まるでアニメかゲームのイベントシーンに入り込んでしまったようだった。


 そしてその囲いの中、一名だけ異彩を放つ人物が居るのを南那は見つけた。

 無骨な鎧姿に混じって、たった一人。


 白いローブに身を包み、豪奢な貴金属を身に着けた女性がそこには居た。

 美しい金髪と整った顔立ちの、男子生徒が見たら騒ぎ出して目を奪われるような――慈愛を形にしたような微笑みを浮かべる、淑やかさを持ち合わせた美人だった。

 これが本当にゲームだったらこういうキャラがヒロインだよね、と思わせる女性だった。


 無骨さの中、たった一つ添えられた華のような存在に、南那は自然と彼女に視線を向けていた。


「ようこそおいで下さいました」


 白磁の空間の中、彼女の声が響く。


「――我らが【勇者】様達」


 その言葉に、ざわ、と俄に辺りがざわつき始める。

 「勇者?」「おいおいマジかよ」「これってあれだよな、本当に」等、困惑と――そして何故か喜悦を含んだ声色が周囲から漏れ聞こえてきたのを、南那の耳は捉えていた。


「唐突な事に皆様戸惑われている事かと思いますが、どうかお話を聞いて下さい」


 一人一人の顔を見渡すように、何かを確かめるようにしながら、女性は続ける。


(わたくし)は至天神に使える巫女、アウレリアと申します――」




要約すると、アウレリアが語った話はこうだった。


 光の神が作った人間と、闇の神が作った魔族がずっと戦争しているらしい。

 で、お約束のように強大な【魔王】が現れ、人間はあっさり滅亡寸前に追い込まれた。

 そこで神様が授けた起死回生の一手が――「異世界から魔王を倒せる人間を喚ぶ」という、あまりにも他力本願なシステムだった。


 過去に喚ばれた勇者は魔王にダメージを与えたものの、倒しきれずに戦線は膠着。

 そして現在、傷が癒えた魔王が六人の【大魔将】を率いて再侵攻を始めたため、再び我々が喚ばれた――ということらしい。


 どこからツッコめばいいのかわからない、テンプレまみれの設定だった。


「そして呼ばれたのが皆様方、と言う訳です」


 アウレリアはそう締めくくった。


 現実感の無い話だった。

 どこのラノベ?WEB小説?と南那は思う。

 周りを見渡せば、懐疑的な顔をしていた子達が何人か居た。

 他にも何言ってんだこいつ?と呆けてるのが何人か。

 でも。そしてその他の大多数は――


「異世界召喚キタアアアアアア!」


「ついに俺が主人公になる時が来たって訳だな!」


「最強、ハーレム、男の夢だぜ!」


 ――信じられない事に、喜悦の声を響かせながら、両手を挙げて喜んでいた。


「もちろん有るんだよな、俺達にも」


 名前も知らぬ男子が、食い入るようにアウレリアに問いかける。


「チートって奴がさあ! そうだろ!?」


「良くご存知のようで」


 アウレリアはそんな彼らの様子も意に介さ無いように、落ち着いて答えていた。


「皆様には授けられているはずです。偉大な至天神より、魔王を打倒すべき力が。皆様にしか無い、特殊な能力が」


 天を仰ぐようにして、アウレリアは言う。半ば恍惚と、それでいて厳かに。

 まるで託宣を与えるように、その言葉を伝えていた。


「――【恩寵(チート)】という絶対の剣が、皆様の中に授けられているのです」


 その発言に、場のざわめきは一層大きさを増した。


「チート能力!」「チートだ!」「チート!」「チート!」


 口々に喜びの声を上げる。欲しくて堪らなかったプレゼントを与えられた子供のように、高校生達ははしゃいでいた。

 その様はまるで――良く言えば、クリスマスプレゼントを貰った子供のようだった。




 そんな周りの様子を、衣目川南那という少女は困惑しながら見つめていた。

 南那も読書を嗜む為そのような物語が世の中に存在するのは知っている。

 異世界に召喚され、都合のいい力を与えられ大活躍していく。そんな夢物語。

 彼女自身、そういう話は嫌いじゃない。気楽に読めるのが良い。頭を使わないし。


 ――でもだからって当事者になって、喜べる要素有る!?


 正直なところ、南那はドン引きしていた。

 外から見て楽しめる物語でも、当事者になって楽しいかどうかは別だ。

 そしてどう考えてもこの手の話で当事者になりたいとは南那は思えなかった。


 人をぶった事すらない自分が武器を携えて魔族や魔王とやらと戦え?冗談じゃない。

 できる訳がない。

 そもそも状況的に考えれば強制的な誘拐から鉄砲玉の強要だ。そこいらで話題になってる闇バイトの方がまだ優しい。


 現実逃避してしまいたいと思いながらも、それが許されない事もまた自覚していた。何故なら――


「皆様、こちらへおいで下さい」


 出口へと少年少女を誘うアウレリアを見つめながらも、頭に浮かぶそれを南那は振り払う事ができていなかったのだから。


「早速確認いたしましょう。皆様が授かったであろう」


 頭に浮かんで消えないのだ。()()の使い方が。


恩寵(チート)の効能を」


 非現実的なチート(それ)が、まるで昔から使えたような、手足と変わらぬ馴染みな感触が――どうしても拭えなかったのだ。


 気乗りしない心を奮い立たせながら、嬉々としてアウレリアについていく少年の集団の後ろに南那も加わった。重い足を引きずりながら。

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