実践と慢心
見習いとしての討伐隊の仕事をこなしながら、
俺は次に何をすべきか考えていた。
(本来なら村の崩壊まで、まだ四年ある……
でも、戦力は多いに越したことはない)
青年団は目に見えて力をつけている。
だが明確に足りていないのは――実戦経験。
訓練だけでは埋められないものがある。
「……団長と副団長に相談してみるか」
忙しい二人のもとを訪れ、
青年団の現状と、実戦を積ませる案を話した。
団長は腕を組んで考え込み、副団長は眉を寄せた。
「そうだな……まだ早い気もするが、
実戦以上の経験はどこにもないのも確かだ」
「はい。浅瀬の魔獣なら連携次第で対応できます。ただ――」
「イレギュラー対応が不安、か」
団長の言葉に俺は深く頷く。
導きの森には、
ここ最近ずっと“不穏な空気”が漂っていた。
(狩っても狩っても魔獣が減らない……
本当に、封印の影響が出ているのか?)
討伐隊の疲労は限界に近い。
だからこそ、戦力の拡充は急務だった。
「クリスが入ってくれて、本当に助かっている」
「そんな……俺はまだまだですよ」
団長が苦笑する。
「現状、守りを固めつつ実戦経験を積ませるしかないだろう。
クリス、お前が青年団を守りながら浅瀬を案内してやってくれ」
「はい、分かりました」
俺は頭を下げ、青年団の元へ向かった。
拠点につくと、
こちらへ向かってくる影があった。
クラムだ。
「クリス、相談があるんだが」
「ちょうど俺も話がありました」
「この前の模擬戦で確信した。俺たちは――実戦をやるべきだ」
クラムの目には強い光が宿っていた。
「そうですね。青年団に足りないのは実戦経験です」
「だろ? チームとして動けば、浅瀬の魔獣くらいは……」
「はい、通常時なら問題ありません。ただ……」
俺は言葉を慎重に選ぶ。
「導きの森は、今は平時とは言えません。
不穏な気配が広がっています」
「それでも実戦を積まなければ成長できない!」
クラムの言葉には焦りと熱が混ざっていた。
(……やっぱり焦ってるな、クラム)
だからこそ、俺も決断した。
「俺の庇護下でなら、実戦を行ってもらいます」
「えっ……いいのか?」
「先ほど団長と話してきました」
クラムの顔がぱっと明るくなる。
「やったぞ!! みんな、実戦の準備だ!!」
青年団は歓声を上げて動き出した。
俺はその背中を見ながら、小さく息をつく。
(やる気は……確かに十分だな。
この調子で行けば、四年後に向けて――
戦力を増やしていける)
そう思った。
……その時、胸の奥に小さな不安が生まれたことに、
このときの俺は気づかなかった。




