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未来で全てを失った俺は、十歳に逆行し“二重マナ”で世界を救う  作者: ユミウタ


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2/18

導きの森と慢心、剣聖

俺に足りないもの――

それは、判断力と思考力だ。


回帰前の俺は、盲目的にザースを信じていた。

自分の力がどこまで通用して、どこから通用しないのか。


何も理解せず、ただ後ろをついていった。

力そのものは、昔から器用に扱えていた。


だが、それは「敵が弱かったから」だ。

本当に危険な相手は、いつもザースが片づけていた。


――苦戦した記憶がほとんどない。


今になって思えば、それこそ罠だった。

俺を“育てない”ための環境作り。

弱いまま使いやすい駒にして、捨てるための。

だから今度は違う。


基礎から積み、自分で考え、判断し、選ぶ。

そのために俺は、導きの森へ足を踏み入れた。


浅瀬には弱い魔獣が多く、定期的に討伐されている。

だが奥へ行けば、命を落とす危険性が跳ね上がる。


「まずは、弱い魔獣で感覚を取り戻す」


そう判断した。

草むらが揺れ、ゴブリンが姿を現す。


回帰前なら嫌な思い出が蘇り、足が止まっただろう。

だが今は違う。


ゴブリンが棍棒を振り上げ――

――遅い。


体が自然に動いた。

木刀が軌道を描き、確かな手応えが返る。

倒れ伏すゴブリン。


(……問題ない)


技そのものは錆びていない。

むしろ身体が軽い。


「この調子なら――」


そう思った瞬間。

背後で、空気が膨れ上がる気配。


「――っ!」


反応はした。

だが、判断が一瞬遅れた。


二体目のゴブリンが死角から飛びかかり、

棍棒が脇腹をかすめ――


「くっ……!」


衝撃で体勢を崩し、地面を転がる。

受け身も甘い。

呼吸が乱れ、視界が揺れた。


(しまった……!)


一体倒したことで、安心してしまった。

敵の数も、死角も、周囲も確認していない。


これこそが、俺の欠点。

距離を取り、浅い森へ下がる。

追撃はなかったが、心臓が乱暴に跳ねていた。


「……情けない」


勝てた。

だが、勝った理由は“相手が弱かったから”であって、

俺が強かったわけではない。

もしこれがもっと危険な魔獣なら――

今頃、何もかも終わっていた。


俺は脇腹を押さえ、深呼吸する。


(……やはり基礎からだ)


技だけあっても足りない。

力だけあっても足りない。


必要なのは、状況判断と冷静さ。

最悪を見越し、常に一歩先を考える思考だ。

俺は木刀を握り直し、構える。


――次は、同じ失敗をしない。

 

森の中で肩を落としながら、俺は自分自身に吐き捨てた。


「……何のために回帰したんだよ」


過信。

慢心。

状況確認の甘さ。


これらすべてが、前の人生で最悪の結果へ繋がった。

ザースの計画を読み損ねたのも、

俺が“考えられない”男だったからだ。

後悔しても意味はない。

必要なのは、学びと修正。


そのとき――

――ぞわり。


背筋が粟立つ。

空気が震える。


「……まさか」


茂みの奥から姿を現したのは――


「ハイゴブリン……!」


浅瀬にいるはずのない魔獣。

明らかに異質な存在。


(なぜ、こんな場所に……?)


一歩下がり、深く息を吸う。

回帰前の俺なら問題なく倒せる相手。


だが今は、十歳の身体。

剣もない。防具もない。仲間もいない。


――状況を読め。今度こそ。

視線を走らせると、ハイゴブリンの体に大きな傷跡。

戦闘後だ。

だが、勝ってこちらへ来たのかもしれない。


油断はできない。

足場、距離、逃げ道――


すべてを確認する。

そして、決めた。


「……今だ」


傷ついている側へ、最短距離で踏み込む。

全身の力を一点に集中し、木刀を振り抜く。


悲鳴。

巨体が崩れ落ちる。

息が整わない。


(……俺は勝てたんじゃない。


相手が万全じゃなかっただけだ)

もし完全な状態だったなら、

逃げる以外の選択肢はなかった。


「……情報を見て、考えて、選ぶ」


これが生死を分ける。

そう実感した瞬間――


「おい、こっちにハイゴブリンが来たって――」


聞き覚えのある声。

姿を現したのは、


若い男だった。

鋭い眼光。


無駄のない立ち姿。

ただ立っているだけで、あたりの空気が張り詰める。


(この圧……まさか)


「……倒したのは、お前か?」


その存在感に、胸が震えた。


「……剣聖、アレン……」


記憶より若く、だが間違いなく。

この男が――後に世界最強と呼ばれる男。

ここから、俺の第二の人生は本格的に動き出す

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