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未来で全てを失った俺は、十歳に逆行し“二重マナ”で世界を救う  作者: ユミウタ


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18/20

入団と父と子

※クレスト視点


息子――

いや、この子は、実の子ではない。


俺が魔獣討伐隊にいた頃、

森で拾った子供だ。


今の妻には、

連れ子だと話している。


血のつながりはない。

だが――

この子は、間違いなく俺の家族だ。


だからこそ、

あの日を、今でも覚えている。


この子が、突然変わったとき。


言葉にできない違和感があった。


そして、

「他の村で修業をしたい」と言い出した。


普通なら、

反対していただろう。


だが、あのとき俺は思った。


――ああ、これは必然なんだ、と。


理由は分からない。

だが、止めてはいけない気がした。


だから、何も言わなかった。


それから一年。


クリスは、

見違えるほど成長して帰ってきた。


他の奴らは気づかない。

だが、俺には分かる。


この子が纏う力は、

並のものじゃない。


そして――

魔獣討伐に参加したいと言い出した。


俺は反対した。


危険な目に、合わせたくなかった。

失う可能性を、考えたくなかった。


だが――

俺が反対し続ければ、

この子は、黙って勝手に行くだろう。


だから、条件を出した。


魔獣討伐隊の試験を、受けさせた。


副団長は、

規律にうるさい男だ。

簡単に合格を出すはずがない。


……そう、思っていた。


だが。


試験を終えたあと、

副団長から聞かされた。


「団長に、一本入れました」

「魔獣討伐見習いとして、迎え入れます」


――正直、言葉を失った。


俺の予想を、

はるかに超えていた。


嬉しい。

誇らしい。


だが同時に――

怖かった。


それでも。


この子は、もう止まらない。


ならば、せめて。


帰る場所だけは、

守り続けよう。


それが、

父としての俺の役目だ。


※クリス視点


「クリス」

「魔獣討伐見習いのことは、分かった」


「……父さん」


「ただ、聞かせてくれ」

「お前は、何を目指しているんだ」


沈黙。


「一年前だ」

「お前が他の村で修業をすると言い出したときから」

「何かが、変わった」


「それは……」


「その理由は、いい」

父さんは首を振った。

「ただな」

「お前の“目的”を、ちゃんと知りたい」


俺は、ゆっくり息を吸った。


「父さん」

「俺、この村を――いや」

「世界を守れる男になりたいんだ」


「……世界?」


「俺は、この一年で知った」

「自分が、どれだけ小さな存在か」


「でも同時に」

「俺じゃなきゃ、できないことがあるってことも」


父さんは、黙って聞いている。


「力を得ることも」

「力を使うことも」

「俺は、学びたい」


「力に支配されず」

「誰かを助けられる自分になりたいんだ」


「……それは、詭弁だ」


父さんは、静かに言った。


「その力の裏で」

「泣く人間が出ることもある」


「お前が正義だと思う行いを」

「悪だと思う者も、必ずいる」


「……分かってる」


俺は、はっきり答えた。


「だからこそ」

「俺は、俺の正義を貫けるだけの力をつける」


「この世界を守るために」


「なぜ、世界なんだ」

父さんは言う。

「それは、俺には分からない」


「だがな」

「それは、茨の道だ」


「一人の命を守るだけでも」

「本当に、大変なことだ」


「時には」

「自己犠牲を、払わなければならない」


「……」


「それでも」

「本当に、お前がやらなければならないことなのか」


俺は、迷わなかった。


「俺は、この力が」

「世界を救うためにあることに、気づいた」


「だから」

「俺は、俺の信じた道を行く」


「……それが」

「地獄へ続いていたとしても、か」


「俺は」

「世界を守りたい」


しばらくして、

父さんは、複雑そうな――

それでも、どこか納得した表情で、俺を見た。


「……それが」

「お前の答えなんだな」


そして、ぽん、と。


「魔獣討伐見習い」

「頑張れよ」


頭に置かれた父さんの手は、

驚くほど、温かかった。




このとき俺はまだ知らなかった。

世界を守るという言葉が、

どれほど多くのものを奪うのかを。

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