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未来で全てを失った俺は、十歳に逆行し“二重マナ”で世界を救う  作者: ユミウタ


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13/19

死闘と未完成の魔法剣

その男は――強かった。


力。

速度。

技の冴え。

どれも一流。

いや、一流のさらに上。


「……手ごわいな」


アレン師匠が、わずかに息を乱している。

それでも押しているのは師匠のほうだ。


(どれだけ強いんだ、師匠……)


だが――妙な違和感があった。

男は苦戦しているはずなのに、

一切焦っていない。


「くくく……強いですねぇ。ですが、私は負けませんよ?」


斬りつけた傷が、

目の前で“瞬時に”塞がっていく。

……再生している。


「……ゾンビ相手みてぇだな」


「くそ……きりがねぇ……!」


アレンの攻撃は確かに通っている。

だが、回復がそれを上回る。


このままでは――師匠が削られる。


「やれやれ……奥の手を使う羽目になるとは」


男が懐から黒い球体を取り出す。


「……まずい!」


反応するより早く、男はそれを飲み込んだ。

黒い“気”が男の体から溢れ、

周囲の空気が一瞬で沈む。


「――遊びはここまでです」


次の瞬間、男は消えた。


「!?」


アレンの防御が間に合わない。


「ぐっ……!」


重い一撃が、師匠を地に叩きつけた。


「師匠!!」


「……くそ、油断した……!」


容赦なく追撃が迫る。

このままでは――師匠が死ぬ。


(……使え)


――え?

誰の声だ?


(マナの“波”を感じろ)


(感じれば、お前の力は掴める)


(我は、お前。お前の心の“主人”)


(まだ未完成だが――今だけ力を解放する)


その瞬間。

胸の奥でマナが“爆ぜた”。


熱でも怒りでもない。

澄んだ光が、内側から広がる。


(これが……俺の……)


(本来のお前のマナだ。そして――)


(今、対峙している男は“魔族”)


「魔族……?」


(魔族はロドストの邪神の血を引く眷族)


(世界を歪める存在だ)


(お前の“使命”は――)


(ロドストから世界を守ることなのじゃ)


使命――。

その言葉とともに光が形を成す。


魔力がマナと溶け合い、

白い剣の輪郭が生まれる。


(魔族を倒すには――浄化せよ)


俺は息を吸った。


「……分かりました」


(だが覚えておけ)


(今の力は“未完成”。身体も心も耐えきれぬ)


(それでも――行くしかない)


「師匠!!」


「来るな、クリス!!」


だが、もう止まれなかった。

光が、剣となる。


男が初めて――焦った。


「なんだその力……嫌な感覚だ……!


まさか、それは――!」


「お前たち魔族を浄化する力だ」


剣を構える。


「――はあああああッ!!」


男が反撃しようと踏み込んだ瞬間――

光が応えた。


「……動け……ない……!?

なぜ……体が……!」


浄化のマナが、男の魔力を“封じた”のだ。

俺は一気に詰める。


「うおおおおおッ!!」


白い光が剣となってほとばしる。


「ぎゃああああああああッ!!」


「……こんな……ところで……!」


魔族は光に焼かれ、

灰となって風に散った。


剣が消えた瞬間――

全身から力が抜けた。


「……し、しょ……」


視界が、暗転した。

俺はそのまま倒れ込んだ。







……夢を見ていた。


「クリス、またこんなところで寝て」


エマが見下ろしていた。


「今日は収穫祭でしょ。早く起きなきゃ」


「ああ……そうだったな」


村の祭り。

屋台を回りながら、笑うエマ。


「クリスはさ」


「十五歳になって、これからどうするの?」


「父さんと畑を……」


「そっか。じゃあずっと村にいるんだね」


少し照れたように笑うエマ。


(――この時間が、ずっと続けばいい)


心からそう思った。


……だが。


(あの日のあと、俺は――全部失ったんだ)


“祭りの後”から、全てが地獄に変わった。

夢が、ゆっくりと崩れていく。




※アレン視点

「……クリス」


ぼろぼろの体で、弟子を担ぎ神名の間へ辿りついた。

だが――


クリスは、目を覚まさない。

魔族の覚醒。


そしてあの黒い球体。

完全に虚を突かれた。


俺の攻撃は確かに効いていたが、

奴の再生がそれを上回っていた。


……正直に言えば。

クリスがいなかったら、


俺たちは全滅していた。

あの光の剣は、間違いなく魔法剣。

未完成で、無茶苦茶で、命を削る力。


なのに――

仲間を守るために迷いなく振るった。


そして今、その代償がこれだ。

横たわるクリスの顔は――


眠るように静かだった。

俺は拳を握りしめる。


「……早く起きろよ」


声が、震えた。


「礼を言わせろよ、馬鹿弟子……」


神名の間の静寂に、

俺のかすれた声だけが落ちていった。

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