2-16 捏造探偵は夜の闇に消えて
んで。
「パパがラテン系美女を泥酔させて家に持ち帰っとる!?」
「違ぇよ。あと子供はもう寝る時間だ」
ニナは事務所に帰るや否や俺が背中に背負ったミシェルに即座に反応、あらぬ誤解をしてしまった。なおソファーの上で眠っていたロッシーは大声に反応して一瞬目を覚ますが、またすぐにぐーすかと眠ってしまう。
「そんな、パパがとうとうやらかしちまった……義理の娘やロッシーにもまだやらかしてないのに……!」
「だからやらかしてねぇしやらかしてたまるか、どっちにしろ変態だ。ちょっと見張っててくれ」
「え、行為の最中に人が来ない様に? 娘にそんな事をさせるのは流石に人としてどうかと思うよ」
「どうかしてるのはお前の頭だ。ただの散歩だよ」
気まずくなった俺はバカな事を言ったニナを放置して家を出た。出来れば戻った時にミシェルの酔いが覚めて起きていてほしいが、そう上手くはいかないだろうな。
「ふひー」
俺は安堵のため息とともに夜の街を適当にブラブラする。探偵と欲望渦巻く夜の街はセットではあるが、基本的に俺は遊び人ではないので飲食や浮気調査以外で夜中に出歩く事はそんなにない。あってもせいぜいコンビニに行くくらいだろうか。
うーむ、大人の遊びと言えば飲む打つ買うの三拍子だが、俺も探偵なら一丁前にキャバクラとかで遊んだほうがいいのだろうか。
だが正直あの類の遊びにそこまで興味があるわけじゃないしなあ。まだニナやロッシーの相手をしている方が楽しいし。
暇を持て余した俺は人間観察をしてみる。やはり夜と昼では通行人の雰囲気も様変わりし、バイクで爆走するババアや、絡んできたチンピラをフェイスクラッシャーで沈める赤髪の少女、街行く人に松茸を配るマッチョのおじさんなどなかなか個性豊かな面々ばかりで見ていて飽きない。最早珍獣ばかりのサファリパークだな。
「神よ! 私のありのままの姿を見てください!」
「キャー! とても堂々とした変態がいるわ! だけどそれは何!? その醜くねじ曲がったヘビ花火みたいなシンボルは!」
「ギャー!? それは言わないで!」
またやはり今日も変態が現れ被害者は見事に言葉のみで撃退、救援にやって来た赤髪の少女がとどめを刺しおまわりさんに引き渡す。
それにしてもまた変態かあ。冒頭の変態といい、もふもふ君の家で遭遇した下着泥棒といい、今回の露出狂といい、どいつもこいつも神様がどうのこうのって似たような事を言ってやがる。この街に隠れた性癖を呼び覚まし変態を導く神様でも現れたのかね。
「ん」
珍獣たちの観察に夢中になっていた時、俺は視界の隅に一瞬異質なものをとらえた。それもある意味個性的な見た目をしていたが、その姿を自らの意志で選んだ彼らとは事情が異なっているのでこの表現は適切ではないだろう。
「朝霧芙蓉……?」
遠目なのでハッキリとはわからなかったが、その顔を半分隠す程の眼帯を付けていた少女は失踪していた朝霧芙蓉の様に見えた。
夜も遅く子供が出歩く時間帯ではないが確か聖愛が探していたっけ。警察に引き渡してもいいが、ここは恩を売る事も兼ねて聖愛に伝えておこう。
そう考えた俺は聖愛に電話をして尾行を開始する。向こうは警戒している様に見えないし難易度はそこまでじゃなさそうだ。




