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1-10 学園の闇の片鱗

 俺は盗撮犯へのトラップを仕掛けるついでにチャラ男の道雄を尾行する。やはり彼は周囲を見渡し、不自然な程に警戒していた。


 しかしまさか学園内で尾行をする事になろうとは。本人としては人の目を気にしているつもりかもしれないが、あれが街中ならばむしろ目立つので探偵としてはかなりやりやすいターゲットだ。


 トイレに行くと言っていた彼はそのまま部活棟に向かい体育倉庫の裏に移動する。もしもあそこで立ち小便でもすればその通りになるが、流石にそんなわけはないだろう。


隅地すみち先生、これを」

「ええ、ではこれを。約束のブツです」

「はい。フフッ」

「……………」


 倉庫の裏ではバーコードヘアーの男性教師が待機しており、道雄は彼と出会ってすぐに紙幣と何かを交換してゲスな笑みを浮かべる。


 俺はとりあえずとても分かりやすい決定的瞬間を動画で撮影、素早く立ち去った。


 あのオッサンは確か教頭の隅地だったか。髪が薄くて骸骨の様に痩せ型の彼を立ち絵にすればそのままエロゲにも出演出来るだろう。それくらい気色悪い笑みを浮かべていたし、実際それに似た事をしていたのだろう。


 こんなに間抜けではいろいろ罠を仕掛けたが無駄になりそうだ。楽が出来ていいがもう少しわかりにくくやってほしい。


 だがこれだけでは証拠にはならない。今撮影をしたのは道雄が金を渡してUSBメモリを受け取っただけだ。その中に入っていたのは性的な画像かもしれないし、とても興奮する香嵐渓の絶景なのかもしれないし、Y○SHI-HASHIの誰も興味がない貴重なオフショットかもしれない。この時点ではあれがよろしくないものだと断言は出来ないのだから。


 しかしこの情報はかなり有益なものになるだろう。あいつらを徹底的にマークすればすぐに犯人に辿り着けそうだ。俺は急いで今後のプランを変更した。


「てめぇゴルァッ!」

「っ!」


 だがすっかり油断していると男の怒鳴り声が聞こえてしまう。まさか不審な行動に気付かれたか。依頼の失敗を避けるため俺はすぐに弁明のための言い訳を考えた。


「何度エラーすればいいんだッ! やる気あんのかッ! 死ねよカスッ!」

「す、すみませんッ!」


 しかしその罵声は俺ではなく別の誰かに向けられたものだった。どうやら顧問らしき教師が野球部の生徒を叱責しているらしい。ひとまずは無関係だと知って俺は安堵する。


「お前特待生だろ? なのになんでこんなにゴミカスなんだ? 学校の金を無駄遣いしちゃってこれ犯罪だよ? お前みたいな犯罪者を産んで親もさぞかし悲しいだろうな。リピートアフタミー、生まれてきてごめんなさい、はい!」

「う、ぅ、生まれてきてごめんなさい……!」

「はいよく出来ましたー! なんだよわかってるじゃん! オラとっとと練習に戻れクズが! クズはクズなりに死ぬ気で練習しろッ!」


 人格を否定する発言で叱責された生徒は涙声で謝罪をする。これもまたいろいろ問題がありそうだが、この学校には保護者も教師もヤバい奴しかいないのだろうか。


 今時こんなコンプラをガン無視した指導が生き残っているとは。これも学校の隠蔽体質の賜物なのかねぇ。


 うん、俺は何も見なかった。だがこんな調子ではまた校長先生から別口で調査の依頼をされそうだな。

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