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ドラゴンの庭

橙色のドラゴン

作者: 笹月美鶴

 この世界はドラゴンの庭ほどしかない。

 はるかな山々、広大な草原、巨大な街。

 そのどれもがドラゴンの庭に散らばったおもちゃたち。

 世界は、ドラゴンの庭なのだ。


 これはここではない、どこかの世界に伝わる、ドラゴンのお伽噺。

 南の島に、橙色(だいだいいろ)のドラゴンが住んでおりました。

 橙色のドラゴンは島の守り神として崇められ、島に住む人間はドラゴンに色とりどりの花や果物を供物として捧げ、島の平穏をドラゴンに祈り、願います。


 ドラゴンもそれにこたえるかのように、島民を襲うこともなく平和に暮らしておりました。



 ある年、島の中心にある火山が活発に活動をはじめました。

 灰が降り注ぎ、作物を枯らせます。

 天変地異はそれだけでは終わりません。嵐が長く続き、島の実りは落ちて腐り、強い風で船も出せず、魚も捕れません。



 ドラゴン様が、島の神が怒っておられる。



 島民たちは神の怒りを鎮めようと供物を捧げようとしたのですが、今の島には果物も作物も、魚もありません。

 仕方なく、一人の乙女が捧げられました。


 するとどうでしょう。火山はぴたりと活動をやめ、嵐は過ぎ去りました。



 それから天災が起こるたびに、乙女がドラゴンに捧げられました。


 雨が長く続けば乙女を捧げ

 地面が少しでも揺れれば乙女を捧げ

 作物がうまく実らなければ乙女を捧げ



 そうして、いつしか村から乙女はいなくなりました。



 男と年寄りだけになってしまった島民は生贄と嫁を求めて別の島を襲います。

 女をさらう蛮族たちに近隣の島は団結して戦い、蛮行働く島民たちは一人残らず滅ぼされてしまいました。


 他の島の者は、ドラゴンを恐れて誰も島には近づきません。

 島には橙色のドラゴンだけとなり、橙色のドラゴンは島でひとりぼっちになりました。




 でも、橙色のドラゴンはなにも困りません。




 ふわふわの草が生える森の涼しい木陰でまどろんで、あまーい匂いに目を覚ます。

 鼻先に積まれた島に実るたくさんの果物。

 橙色のドラゴンはぺろりと舌を出して果物の甘さに舌鼓を打ちながら、幸せに満たされる。


 橙色のドラゴンはあまーい果物が大好き。

 人間の肉など興味もないし、食べたりしません。


 天変地異が収まったのも、ただの偶然。

 橙色のドラゴンは神ではない。

 寝るのと果物が大好きな、甘い香りのするだだのドラゴン。


 生贄にされた乙女はドラゴンが自分を食べないとわかると男たちの目の届かない所へ逃げました。

 女を虐げる男たちに苦しんでいた彼女らは、誰も村へは戻りませんでした。

 生贄が捧げられるたびに女たちがこっそり乙女を救い、ドラゴンの背に隠れるように、少し離れた小さな島に女だけの村ができあがりました。



 気持ちよさそうに眠る橙色のドラゴンに、乙女は今日もあまーい果物を捧げます。

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