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別の世界ではただの日常です

着かない

作者: 茅野榛人

「お待たせお待たせ」

「おう! いやあ久しぶり!」

「本当久しぶりだよ、ボイスチャットで騒いでた頃から大分経つからな」

「もう五年位経ったか?」

「そうだねもうそれ位だね! いやあでもマジで会えて嬉しいわ、あと三人だっけ?」


 今日は……高校からの付き合いである友達と遊びに行く日だ……。

 その為に……これからバスに乗り……待ち合わせ場所に向かう……。

 久々に外に出た……インターネットで見る外とはかなりの違いがある……。

 バスが到着した……硬貨を投入し……空いているので後方の席に座る……。

 これから向かう待ち合わせ場所は……初めて行く場所な為……若干ビビっている……。

 昔から……地図は大の苦手なのである……。


「よう! お待たせ」

「よう! って……誰?」

「おい! 忘れんな! 俺だって!」

「あーわったわったわった! サングラス外したらわったわ! ってかなんでサングラス?」

「お前なんか印象変わったね」

「そうか? 久々に会ったからってまさか顔の記憶すっ飛ばされるとは思わなかったよ!」

「悪い悪い。あ、言い遅れた、久しぶり!」

「久しぶり」


 かれこれ二十分位バスで移動しているのだが……一向に目的地に到着する気配が無い……。

 出発前に時刻表を確認したのだが……二十分はかからないはず……。

 しかしこのバスが遅延しているようにも思えない……。

 乗客の乗り降りに時間がかかっているわけでもなく……何かトラブルに巻き込まれたわけでもない……。

 気のせいなのであろうか……本当に目的地に着くのであろうか……。


「わあ!」

「うわあ! 何! あー何だお前か」

「びっくりした?」

「誰だってびっくりしますー! ってか本当に久しぶりだな! 昔でも交流少なかったから!」

「女子友ばっか作りやがってよ!」

「いやいや……違う違う違う違う本当に違う」

「あー良いよ良いよ、別に女子友が何人出来ようとも、友情は決して細い紐じゃねえからよ!」

「そうそう! 何にも気にしなくて良いんだよ」

「違うってば! もうみんなして……交流が少なかったのは……人付き合いが得意じゃなかったから!」

「んーなんか取ってつけたような理由に聞こえちゃうけど、まあそう言う事にしておくよ!」

「うん! それにこうして会いに来れてそれにあんな脅かしまで出来たんだ! 人付き合い上手くなってるんじゃねえの?」

「いや……別に? 人って言うのは……成長する生き物だからさ?」

「おいカッコつけてんじゃねえよ」

「カッコつけてない!」


 一時間が経過した……。

 絶対有り得ない……。

 これだけ長い時間がかかっていると言うのに……どうして着かないのであろうか……。

 きちんと行き先は見たんだ……乗り間違いはしていないはずだ……。

 何が起こっているのであろうか……まさかこのまま一生着かないなんて事……いや……あるわけがない……。

 ずっと乗っていればいつか必ず着く……必ず着く……。


「あと、一人だよね?」

「うん! まだ一人到着してない」

「大丈夫かな、結構長い時間待ってるで?」

「死んだりしてないと良いんだけどね」

「サラッと言うなよな」

「そうだ! すげえ良い事思いついたわ!」

「え? 何」

「何で思いつかなかったんだろうなあ……いやあ……」

「もったいぶるなよ」

「電話だよ、電話すれば良いんだよ!」

「あー! それは思いつかなかったわ、今考えてみれば俺達が持ってるスマートフォンってフォンなんだから簡単に電話が出来る……っておい! 思いつかないわけねえだろ!」

「随分と付き合ったね」

「兎に角電話だ電話」

「どう?」

「んー繋がらないな」

「移動中なんじゃねえのか? 電車とか、バスとかで」

「なるほどそう言う事か」

「いやまだ分かんねえけどな、繋がらない原因は」


 流石に変だ……もう三時間以上経過している……なのにこれっぽっちも着く気配が無い……。

 バスは普通に運転しており……乗客も乗り降りしている……。

 なのに……目的地に到着しない……。

 どうして……どうして目的地に着かないんだ……。

 こんなに移動していると言うのに……。

 こんな事になる位なら……こんなことになる位なら……。


「大丈夫かなあ」

「もう出発する?」

「いやもう少しだけ待ってみようぜ」

「ごめんごめん! 待ったよね!」

「あ! お前おせえって! もうどんだけ待たしてんのよ」

「ごめんごめん、寝坊しちゃって、電車も遅延してて」

「もうやっと揃った! 行こ行こ」

「そうだね! 良し! 行こう!」

「いやあやっと出発できるわ」

「久々に皆で遊ぶの楽しみ」

「行こう! 皆長い時間待たせちゃってごめんなさい」


 もう何日経過したのか分からない……。

 目的地を目指して……バスに揺られ続けて……。

 こんな事になる位なら……誘われてもいない遊びに無理矢理参加しようだなんて……しなければ良かった……。

 人との関わりを一切絶って生きて来たのだから……少し位は同年代の人達と遊びたいと思っただけだったのに……もう……その資格も……ないんだな……。

 このバスは……一生目的地には着かない……。

 どうして……人と関わるのが……嫌いだったんだろう……最初から人と関わっていれば……こんな……事には……。


「そういやさ、昨日あいつから久々に連絡あったんだよ」

「え? 誰?」

「あいつあいつ、あの全く人付き合いがないあいつ」

「ああ! あいつ? 珍し! なんて言ってた?」

「遊んで欲しいって言って来た」

「マジ!? あいつそんな事言ったの!? 有り得ないわー」

「でも今日この予定があるから、今日の一通りの予定だけ伝えておいた」

「遊んで欲しいって言ってたんだったら、誘えば良かったのに」

「いやそれも考えて誘いもしたよ? でも全く返事返って来なくてさ」

「ちょっと待って、何だあの騒ぎ」

「え? 何かあったのか? バス?」

「救急車が来てる、まさか誰か倒れたのか?」

「もしそうなら、無事だと良いのだが」

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