嘘
進公学ゼミナール。
正直、誰でも入れるような集団塾。
その中でも、成績がいい人は、地区トップの高校に進学をすることができる。
おれは、今、中二で、この塾に通い始めてから三か月くらいが経つ。
正直、自分はこの塾に通いたくはなかった。
というか、塾に通いたくなかった。
でも、親の計らいで、塾に通うことになった。
そんなおれに、気になる先輩がいて。
その先輩は、花井先輩っていうんだけど、容姿が端麗で、勉強もできて、めちゃくちゃすごい人。
そんな先輩が、今受けようとしている高校が、地域で二番目に頭のいい、西成高校。
理由は、「駅から近いから」らしい。
それだけでも、結構かっこいいなって思ったりする。
おれは内申30くらいしかなくて、全然そんな高校届くとも思えないような成績で。
だからこそ、そんな先輩を尊敬している。
塾に入ると、少しだけ、病院のようなにおいがして。
踊り場に花井先輩がいる。
「花井先輩」
「おお、透。どうした」
「先輩、最近成績どうですか?」
「ああ、そんなことか。成績は、自信があるよ」
「そうですか、うらやましいです。僕なんて、西成高校なんて、受かるはずがないって思っていますから。」
先輩は、窓の外の夜空を見上げた。
「そんなもんだよ、勉強なんて」
そう言うと、教室に戻った。
いつも通りに、授業が始まった。
一年後。
先輩は、無事に、西成高校に入ることができた。
おれは、先輩と連絡先を交換していたから、先輩と連絡を取ることができた。
先輩は、「余裕だよ」という。
おれは。
先輩に少しでも近づきたくて、西成高校に入るために、めちゃくちゃ勉強した。
「先輩。」
「おお、冬香。」
冬香は、おれの後輩。
「先輩、西成高校を受けようとしているんですね。」
「そうだよ。」
「すごいですね。」
「一年めちゃくちゃ勉強したから、余裕かな。」
三年生になって、受験生になって、結構余裕になってきた。
おれは、西成高校に入った。
「花井先輩!」
「透、なんで、この高校に入ってきたの」
「え」
おれは、その言葉の意味を、のちに知ることになる。
その高校はブラックで、課題がめちゃくちゃ多くて。
おれは、最初のテストで順位ビリを取った。
そして。
おれは。
冬香に。
「成績は好調だよ。」
と。
嘘をついた。
一年後。
冬香は、この高校に入ってきた。
冬香は言った。
「先輩、先輩を追いかけてここまで来ました!」
おれは言ってしまった。
「なんでここに来たんだよ。この高校は、マジでブラックなんだぞ。」
「先輩!」
「何?」
「ブラックでも、やり切ればいいじゃないですか!」
「おれは、この高校でビリを取ったんだぞ」
「じゃあ、一位を目指しましょう!」
「は?」
「やってみなきゃ、わからないですよ!努力をしなければ、報われるか報われないかなんて、わからないですよ!」
「そっか」
そして、おれは、一位を取った。