表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幸せの見つけ方―大正妖恋奇譚  作者: 麻路なぎ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/49

35 守りたいから

 昴さんが朝食を運んできてくれてそれを食べ、私はひとり、静かな部屋で寝て過ごしていた。

 着物を縫う気力はなく、起きていることもできなくてただベッドに寝転がっていた。

 ひとりでいると余計なことを考えてしまう。

 昨日のことが私の頭の中を回っている。

 神社の本堂の上に座っていた、銀髪の美しい鬼。

 あれが私のおっとうで、昴さんの家族を殺した鬼。

 なんでこんなことになるんだろう。

 私、本当にここにいていいのかな。昴さんはいいって言ってくれたけど……私は受け入れきれない。

 私ってなんなんだろう。

 人? 鬼?

 私は人だ。そう思いたい。なのに、私の目は紅いままだし髪の色も金色で、元の色には戻っていない。

 一緒に来いと、あの鬼は言った。でも私は一緒になんて行きたくない。そう思ったのに……今は一緒に行った方がいいのかと思ってしまっている。

 私がここにいる理由。私がここにいていい理由なんてあるのかな。

 無理を言っておいてもらってる。

 昴さんに、私をここに置いておく理由なんてない。だって何の繋がりもないんだもの。

 だったら出て行くべきかな。

 だめだ、考えがまとまらない。

 いたいけどいたくない。

 だからといって私の行くあては、どこにもない。

 ベッドから起き上がり、とぼとぼと棚の前に立ちそこに置かれたおっかあの位牌を見つめる。


「どうして黙っていたの?」


 位牌に語りかけたって答えなんて返ってこない。

 おっかあが鬼の事を知らなかった、ってことはないだろう。

 おっかあは孤児だったと聞いた。それである人に育てられたと。

 いったい何があって鬼なんかと……

 考えても語りかけても何も返ってこないから、私は小さくため息をつく。

 

「私、ここにいていいのかな」


 何度も繰り返し、答えのない質問を繰り返す意味なんてきっとない。

 でも考えずにはいられなかった。

 昴さんは私が何者であるか知っても私を追い出そうとしなかった。

 何でだろう。

 鬼は殺すものだと言っていたのに。

 でも鬼の血をひいてると誰かにばれたら捕まって、解剖されるかもしれない。それも怖い。

 どうしたらいいのかわからなくなってきた。

 余計なことは考えるなって、昴さん言っていたけど……でも考えてしまう。


「私のおっとうは……昴さんの家族を殺したんだもの」


 もちろん私は関係ない。だってその頃、おっとうは私と一緒にいなかったもの。

 でも、その事実が重く悲しい。

 そしてあの鬼は昴さんを殺そうとするだろう。

 昴さんはあの鬼を殺そうとしているんだから。

 どちらかが生き、どちらかが死ぬ。そうだ、殺し合いになるんだ。戦争じゃないのに殺し合いが行われるなんて怖すぎる。

 生きていて欲しいのは昴さんだ。でもあの怖い鬼を相手に昴さんは無事でいられるのかな。

 昴さんになにかあったら私……やだ、視界が涙で歪んできた。

 昴さんを死なせたくない。

 なら私……私は自分の両手を胸まで上げてじっと見つめる。


「この手で昴さんを守ることができないかな」


 だって半分鬼だってことは、私、戦えるって事よね?

 ひとりで鬼と戦うよりも、ふたりの方がいいよね? 勝てる可能性あがるよね?

 鬼にはなりたくない。でも、力があるなら私は守る為に使いたい。


「私は昴さんに死んでほしくないし、生きていて欲しいから」


 昴さんに言ってみよう。

 怒られるかな。あきれるかな。

 今、昴さんは屋敷にいないはず。

 戻ってきたら話そう。

 そう思い、私はぎゅっと、自分の手を握りしめた。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ