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王子様男子と恋する乙女の恋愛譚  作者: シト
1年生、1学期
8/57

8話 体育祭 4

 テントに戻る途中、右京は疑問に思ったことを、前を歩いていた陽色に聞いてみる事にした。

 「なあ柊、お前が欲しがってたお題とやらは何だったんだ?」

 すると、陽色は顔を赤くしながら振り返って、

 「絶対に教えません!」

 と叫んだ。

 右京には、何で陽色が恥ずかしがっているのか分からなかった。

 テントに戻ると、漣達が話しかけてきた。

 「右京、目立ってたな!」

 「コイツ、ウザい」

 「何故にカタコト!?」

 右京は、揶揄われている様な気がしたから、適当に返すことにした。

 「まあまあ、この競技で終わりなんだったよね?」

 「確か……」

 「じゃあ、戻るか」

 右京達がそう話していると、陽色が、

 「あ、待ってください」

 と言った。

 歩き出していた右京たちは陽色の声を聞いて、振り返った。

 「何かあるの?」

 と清那が尋ねると、

 「はい、日奈ちゃん……友達がこの後の組で、借り物競走に出るので……その、見て行きたいな〜と思いまして……」

 と申し訳無さそうに、人差し指を突き合わせながら、陽色は言った。

 「じゃあ、見て行こうぜ。どうせ早めに戻っても暇だし」

 と言ったのは右京だった。そっぽを向いていたが、陽色の為を思って言ったのは、この場の皆が分かっていた。

 「陽色ちゃんの友達も大事だからね」

 「先に言わないとな、そうゆうのは」

 「え、誰? 見てみたい!」

 概ね、同意の意を示し、その場に残って観戦することとなった。

 次の組が、スタートラインに並び出した。

 「ねぇ、どの子?」

 と漣が聞いた。

 「あ、今並んでる子です。1番手前の」

 「あ〜、あの子か……」

 「何かしっかりしてそうだね」

 陽色が、教えた女子を見て、中々に失礼なことだが、感想を述べる。

 そんなことをしながら、見守っていると、辺りを見回した後で、こちらへ走ってくる。

 「あれ? こっちに来たけど……」

 「デジャヴかな?」

 と話したのは、漣と清那だ。

 コイツラいい加減にしろよ、と右京が思っていると、いつの間にか日奈が近くまで来ていた。

 「えっ……? 何か陽色、スゴイ人たちの所にいるじゃん。入りにくい……」

 と戸惑った様子で日奈は、陽色に話しかける。

 「日奈ちゃん……とにかく、お題は? 何だったの?」

 少し呆れた様子で陽色が問いかけると、

 「親友!」

 と日奈は元気よく返しながら、お題の紙をこちらに見せる。

 「え? 誰? 日奈ちゃん、いつの間にここの人たちと仲良くなったの?」

 「陽色ちゃん、違うよ、それは……間違いなく陽色ちゃんのことだと思うよ」

 「えっ……! そうなの!?」

 日奈の回答に首を傾げる陽色に、そっと教えたのは、天翼だった。その指摘に陽色は驚いたように、身を反らす。

 「うん……だって、アンタぐらいしか思い浮かばなかった……」

 「そ、そっか……ありがと!」

 陽色の反応を見て、日奈は少し恥ずかしそうな顔をした。陽色もそれにつられて、顔が赤くなったが、笑顔で返した。

 そんな会話をしたあと、2人で手を繋いで走っていった。

 「仲、良さそうだね」

 「いいね、あんな友達欲しいわ……」

 「陽色ちゃんが楽しければ、いいんじゃない」

 と日奈と陽色が走っていく後ろ姿を見ながら、漣、清那、天翼は話していた。

 (あいつ、こっちによく来てたからあんまり知らなかったけど、友達いたんだな……)

 とこの中で1番酷い考え方をしていたのは、右京だった。

 もちろん、そう思ってしまうのも仕方ない位に陽色は、右京たちに会いに来ていた。

 昼休み、放課後は常にいたし、そもそもこちらから陽色の方に行くことも無かったため、あまり知らなかった。

 (あんな顔もするんだな……)

 と右京は1人思ったのだった。

 そんなこんなで、陽色と日奈は3位という微妙な順位で終わった。

 「もっと早く行けた人が、いたんだね……」

 「ちょっと話しちゃったせいかな」

 「微妙だな」

 「それ、言っちゃダメなやつね」

 と4人が話していると、日奈と陽色が右京たちのいるところに戻ってきた。

 「お疲れー」

 「お疲れ様」

 と2人に漣と清那が声をかけた。

 「特に何もしてないですけどね」

 とそれに陽色は、苦笑で返した。

 「んじゃ、校舎に戻って、昼飯でも食うか」

 「良かったら日奈さんも一緒に食べない? 最近、陽色ちゃんと食べてなかっただろうし……」

 右京が皆に呼びかけると、天翼が日奈を昼食に誘っていた。

 「え……? う〜ん、じゃあ、お願いします?」

 「うん、それじゃ一緒に食べようか」

 日奈は、何と返したら良いか分からなかったのか、語尾が上がったが、天翼は笑って返した。

 そうして、体育祭の午前の部は終了したのだった。

仲間(日奈)が1人増えました。

いつの間にか、ブックマークが1個ついている……! ありがたや。

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