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王子様男子と恋する乙女の恋愛譚  作者: シト
1年生、1学期
6/57

6話 体育祭 2

 男子100メートル走の一組目が始まった。

 右京は四組目で、漣が五組目だ。

 この体育祭での100メートルレーンは、トラックを斜めに横切るように白線で書かれている。

 要するに、非常に目立つ。

 右京は、それがたまらなく嫌だった。

 いつも目立ってるのに、これ以上目立ちたくない。そして、これ以上告白されたくない。相手をフるのも中々精神に来る。

 右京はあの反応で、意外と優しい性格をしているため、多少は心が痛む。あぁ、今からだと思うと、胃が痛い……とか思ってると、もう自分の組だった。

 後ろの漣が、

 「まあ、テキトーにガンバれ」

 と言ってくる。

 「おう、テキトーだ」

 と一応返しておく。

 「オン・ユア・マークス」

 係りの生徒が掛け声をする。

 組の男子がクラウチングスタートの姿勢になる。

 「セット」

 の合図で腰を上げる。

 ピストルの乾いた音が鳴り、一斉に走り出していく。

 もちろん右京は1番最後からだ。

 みんなは、必死に走っているが、右京は涼しい顔で、

 (え〜っと、今俺が6番か……じゃあ、あと3人抜くか)

 と考えていた。

 正直に言おう。これは、真面目に走っている皆にとても失礼なことをしている。これを見た皆さんは、しっかりと走りましょう。

 メタいことは置いておこう。

 現在、右京は6番。最下位だ。半分の50メートルを過ぎたところで、周りのみんなは疲れてきた様で、スピードが落ちる。

 だが、逆に右京はスピードを上げて、一気に3人を抜いた。

 そこで周りを見て、

 (よし、ここでうまいこと終わらせる)

 と笑顔で頷く。

 それを見た女子生徒が、

 「え、何あれ? めっちゃ可愛いんだが?!」

 「あぁ、死ぬ……」

 「きゃああぁ」 

 と黄色い歓声と同時に倒れる人が続出した。

 それを聞いた漣は、なんとなく右京がやったことが分かった。

 (あ〜……あいつどうせ、3人抜いて目的達したから、気い抜いて笑ったりしたんだろ。バカだなぁ……自分の顔の良さ分かってねぇんだよな……)

 逆にそれがモテる原因になってんだよ……と思った、漣だった。

 そんなことを露も知らずに、右京はそのままゴールした。

 (よし! 目的、完っ遂! 多分、大丈夫だよな……歓声上がってたけど、俺じゃないはず!)

 右京は、自分は目立ってないと思い込む事にした。

 「次は漣か……ま、ここで待機してりゃ来るだろ」

 と言って、右京はゴール地点で待つことにした。

 そうやって待っていると、すぐに漣たちの組がスタートした。

 漣はスタートから先頭に出る。異様にタイミングバッチリなスタートだっと。そして、全力で走る漣に誰も追い付けず、そのままゴールした。

 「流石、元本職! レベルが違うな」

 右京は漣を眺めながら、呟いた。右京の時ほどではないが、多少は歓声も上がった。

 どこぞの王子様のせいで霞みがちだが、漣もかなり顔は良いのである。ただ、王子様の方が圧倒的な人気であった。

 ゴールした後、漣は辺りを見回して右京を見つけると、そちらに小走りで向かった。

 「すまんな、俺のせいで。助かった」

 「おう!」

 右京は謝りながら拳を突き出し、漣もそれに応えて拳を軽く打ち付ける。

 「にしても、本職はやっぱり違うな。スタートから違うわ」

 「だろ?」

 右京が漣に笑いかけると、漣も笑い返す。そのまま、自分たちのテントへと戻っていった。

 ちなみに、その間も女子からの視線は止まなかった。

 テントに戻ると、

 「右京、やらかしたね」

 「手ぇ抜いたでしょ! あんたそんなに遅くないじゃん!」

 と天翼と清那に突っ込まれた。右京が手を抜いたことが分かったらしい。

 「バレたか……って、俺はやらかしてねぇぞ!」

 「いや、お前結構やらかしたぞ……」

 「えっ……? 具体的には?」

 漣は肩をすくめながら言ったが、個人的には、やらかした記憶など無かった。

 「お前、3位になったところで笑ったろ、安心して」

 「何故それを?!」

 漣は呆れたように笑いながら、指摘する。だが、右京には何故それが分かるのか、分からなかった。

 「それ見て女子の歓声が上がってんだよ……」

 「え、あれ俺だったの?」

 「そう……」

 やっぱり分かってなかったとでも思っているのが、手に取るように分かる。漣は目を手で覆い、天を仰いでいる。右京はと言えば、やはり分かっておらず、驚いている。

 「いや、普通さ、あれぐらいであんな反応する?」

 「お前、いっぺん鏡見ろ」

 「右京は、顔が普通じゃないから」

 清那と天翼が同じように見えた呆れた笑いで言う。

 「ま、どうでもいいわ。今に清那も同じ様になる」

 「やめてくれ!」

 考えるのが面倒くさくなった右京は、清那に諦めた様に言うと、清那は頭を抱えて叫んだ。

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