50話 研修旅行二日目 青年の家でのレクリエーション 4
いつの間にかやら五十話です。コイツラ進展もしないわ、話も進まんわでヤバいですね。
二人きりになってしまった右京と陽色は淡々と次のチェックポイントへ向かった。
今更沈黙が続くような仲ではなく、適当にそこら辺の話題で話し続けた。
「あ、そう言えば右京くんの誕生日っていつなんですか? もう過ぎてたらものすごく悲しいんですけど……ていうか怒りますけど」
「おい、理不尽だな……。誕生日か、俺は8月10日だな」
陽色からの言葉に、苦笑を浮かべつつ右京は質問に答えた。
それを聞き、陽色は目を見開く。
「あと一週間ぐらいじゃないですか?!」
「そういえばそうだな」
陽色からの叫びに、右京は気にせず反応した。
そんな適当な雰囲気の右京に呆れ気味の陽色だった。
「なんで自分の誕生日なのに、そんなに適当なんですか」
「まぁ……正直なところ、祝われるのに慣れてないからな。ここ数年でだいぶ色々してくれる人が増えたけどな」
「じゃあこれからはどんどん慣れていきますよ」
「ん?」
「私がずっと祝ってあげますから!」
陽色は右京の横でガッツポーズをしながら、そう言った。得意気な顔が、なんだか幼児が張り切っているように可愛く思えてしまい、右京は思わず笑みを浮かべた。
「そうかよ。それじゃあ頑張ってくれ」
「頑張ります!」
右京からの励ましの言葉に、陽色はむんっと気合を入れていた。
右京は聞かれっぱなしが癪に障ったのか、逆質問で今度は陽色に攻めかかった。
「お前の誕生日はいつなんだ?」
「え、私ですか? 7月22日ですけど……」
「……お前なぁ」
あっさりと既に過ぎた日付を口にする陽色に、半ば呆れている右京であった。
「え、でもそんなに誕生日の話題になること無いですよね。仕方ないですよ」
「自分は盛大に祝うとか宣言しときながら、自分はしれっと人にスルーさせるのかよ」
「私は祝う方が好きです!」
「そうかよ。じゃあ来年は祝ってやる」
確信を持って叫ぶ陽色に、右京は首を振りながらそう言った。
その言葉に、思わず陽色は立ち止まる。
「……え?」
「どうした?」
「今、……」
「来年は祝ってやるって言ったが、なんか変なこと言ったか?」
「ふふっ、ありがとうございます! 期待してますね」
陽色はただそう笑った。
太陽が雲を貫通して光を突き刺してくる。
まるで太陽が透けて見えるようであった。
それが、その光景がどうしようもなく陽色には嬉しく感じられたのだった。
謎に喜んでいる陽色を訝しみながら先を歩む右京は、チェックポイントを見つけた。
地図で確認すれば、それは一番遠い所であった。
「おい、あれチェックポイントだぞ」
「あ、本当ですね。早めにやっちゃいましょうか」
右京の声に、陽色はそちらを指差して誘導した。
二人で先生の元に向かい、プリントを差し出す。
今度は中年の男教師だった。
「お、お前らは二人だけなのか?」
「はぐれてしまって……」
「実はお前らがカップルで気を利かせたり、とかは?」
「ないですね」「……残念ながら」
ニヤニヤと尋ねる男教師に、右京はきっぱりと、陽色は沈んだ顔をしながら答えた。
それを見て、一瞬驚いた表情を見せると、男教師は大声で笑い出した。
「あっはっは! そうかそうか! 頑張ってこいつを射止めなきゃな!」
「はい、頑張ります!」
「やめてくれ……」
ノリ良く笑う教師に、陽色は意気込んで応答した。それに思わず心の底から拒否したくなった右京だった。
そんなこんなで、チェックポイントは二つスタンプで埋まった。
「あとは……二つが山の中、もう一つが青年の家を挟んで逆側か」
「その前に報告した方が良いんじゃないですか?」
「あぁ、確かにそうだな」
右京は陽色からの助言に素直に従い、ポケットからスマホを取り出した。
『(右京) お前ら、一番遠い所は回ったから、次は山の中のやつな』
『(漣だぁぁぁぁ!!) りょ〜かい!』
『(つばさ) 分かった』
右京からの連絡に、漣と天翼から即座に既読、かつ返信が返ってきた。
「あいつら、早いな」
「ていうか、本当に合流しませんね」
「どっかですれ違ってでもしないとこうはならないだろ」
二人はそう不思議そうに話していたが、それは勿論その通りなのだ。
漣・日奈の二人は既に二人の背後につけていた。実は先生に見られていたが、人差し指を唇に当てて静かにさせていた。
なお、先生はノリが良い為に黙っていてくれていた。
清那・天翼は、ワクワクしている清那を宥めながらも天翼がスマホで地図を見ながら、なんとか漣達との合流を目指していた。
六人が揃うのは、まだまだ先の話になりそうだった。




