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王子様男子と恋する乙女の恋愛譚  作者: シト
1年生、夏休み
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44話 研修旅行 2日目 1

 翌日、右京は部屋で起きた。無論、ベッドである。布団には負けた二人が眠っている。いや、尤も右京よりも早く起きていた。

 その負けた漣に右京は起こされたのだった。


「おい! 起きろって、右京!」

「あ……うん……。はい…………」

「だっはっはっ! マジか氏王! こんなに寝起きわりぃのかよ!」


 漣が必死で右京の腕を引っ張るが、右京は生返事だ。漂磨がそんな右京の様子を見て、爆笑している。

 慶軌は無言で爆笑している。というよりも笑い過ぎて息が出来てないといった様子だろうか。

 湧誠は苦情しながら腕組みしてそれを見守っている。天翼もその横で笑っていた。


「うん……。起きた。起きた」

「はぁ〜……まぁ良い。着替えろって。今日はジャージにな」


 右京が自力で立ち上がると、漣は苦笑しながらジャージを手渡す。

 右京は寝惚け眼でジャージに着替えた。髪を整えているのは天翼だった。

 今日は他にも人がいる為に、漣が一人で何もかもする必要がなくなった。


 負担が軽くなって少し嬉しい漣だった。


 そうしてなんとか右京の身支度を全員で完了させると、五人で右京を引っ張りながら部屋を出た。

 男子の部屋が集まった所を抜けると、女子からの視線が右京目掛けて飛んできた。

 無防備なイケメンの顔である。誰でも見たいのだろう。


 それをすかさず全員で遮る。

 女子からの睨み付けるような視線に、漂磨は涙目だった。


「俺……彼女出来ないかも……」

「安心しろ、お前は端から出来ねぇよ」

「なんだとぉ!」


 漂磨の泣き言を、慶軌は漂磨の肩を叩いて笑い飛ばした。そんな反応に、漂磨は拳を振り上げて怒った。

 そんな騒がしさに目が覚めたのか、右京がキョロキョロと辺りを見回す。


「あれ?」

「お前の寝起きが遅いことがみんなにバレただけだ気にすんな」

「は? しかも外出てんじゃねぇかよ! はぁ?!」


 右京のその仕草に、漣は半笑いで右京をイジる。右京は疑問符を頭の上に浮かべた後、頭に届いたのか、半ギレで漣の頭をスパン! と叩いた。

 漣は叩かれた頭を擦りながら、右京を見る。


「いや、お前の寝起きが悪いのが悪いんだからな」

「悪い悪いうるさいな」

「しょうがねぇだろうが!」


 右京の舌打ちに、漣は右京に指を突き付けながら叫んだ。最早周りの四人の表情は、子供のケンカを見守る大人である。

 そんなこんなでギャーギャー騒ぎながら、六人は食堂に着いた。

 それはもう周りの視線を引き付けながら。


 バイキング形式のそれを、六人は手早く取って、席に座る。

 右京は昨夜の肝試しの時に湧誠の姿を見かけなかったのを思い出し、湧誠に目を向けた。


「なぁ、湧誠。お前、肝試しの時いなかったよな。何処に行ってたんだ?」

「あぁ……彼女と回ってたんだよ」

「へぇ? 湧誠、彼女いたのか」

「俺には勿体ないのがな」


 右京の質問にあっさりと答える湧誠に、右京は目を見開いた。湧誠はコーヒーを飲みながら目を細めて笑った。

 隣の漂磨の目は、恨みがましく湧誠を睨みつけていた。涙目で。


「お前になんで彼女がいるんだよ! そしてなんで氏王から呼び捨てにされてんだよ!」


 漂磨は二重の意味で怒りながら湧誠に向かって叫んでいた。

 右京はそれを見て微笑んだ。


「俺、西村に彼女ができない理由、分かったわ」

「あ、まだ右京分かってなかったの?」

「俺と天翼はとっくに気付いてたぞ」


 右京の言葉に、天翼は驚いて右京を見て、漣は苦笑気味でご飯を口に運んだ。

 慶軌はそんな三人の反応を聞いて、ニヤニヤと笑いながら漂磨の肩を叩く。


「だってさ?」

「…………俺、泣いていい?」

「ダメだ。めんどいだろ」

「うわぁぁぁんん!!」


 漂磨は涙目で湧誠を見るも、湧誠は首を振ってそれをまともに受け合わなかった。漂磨は身体を机に突っ伏しながら嘘泣きを始めた。

 その間に、他の五人は朝食を食べ続ける。


 漂磨は放置しても大丈夫だという、共通認識が成されていた。


「あ、右京くん! 寝惚けたままで外に出てこないでくださいよ! 可愛いのがバレちゃうじゃないですか!」


 そんな右京の背後から怒ったような声が聞こえてきた。

 右京はげんなりとしながら振り向いた。


「柊……うるさいぞ。第一に、俺がすすんで外に出た訳じゃない。漣が外に出したんだ」

「漣くん?」

「ひ、陽色ちゃん……?! ご、ごめんって! 悪かったよ!」


 陽色のほんの少し殺意が籠もった視線に、漣は焦って平謝りするしかなかった。

 陽色は頬を膨らませながら、右京の真後ろの席に座った。


「え、柊さんって、お前の寝起きの悪さ知ってんの?」

「あー、なんか一回朝に俺の部屋に入ってきてんだよな。なんであんなことになったんだっけ?」


 漂磨が不思議そうに右京に尋ねると、右京は記憶を探る様に上を向きながらそう答えた。

 右京からは見えなかったが、陽色は少しだけ振り返って微笑んでいた。漂磨は唖然とした後、背筋が粟立ち下を向いた。


(え? 何今の顔?! 柊さんって……怖いのか?)


 漂磨は夢に出てきそうな恐ろしさの陽色の笑顔に、黙々と朝食を食べるしかなくなってしまった。


 そんな風に二日目は始まった。

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