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王子様男子と恋する乙女の恋愛譚  作者: シト
1年生、1学期
5/57

5話 体育祭 1

 「体育祭ダァぁぁぁ!」

 「黙れ!」

 「あいてっ!」

 右京は校庭で叫ぶ漣の頭にチョップをくらわした。うるさく、迷惑になっていた。周りからも少し視線を感じる。

 「え、酷くない? ヒドイよね?!」

 「いや、正直今のは漣が悪い。うるさかったもん」

 「陽色ちゃ〜ん、みんながいじめる〜」

 「はいは〜い、黙りましょうね〜。迷惑ですよ〜」

 清那に正論を言われた漣は、陽色に泣きついたが、こちらも素気なく対応した。

 「なっ! 陽色ちゃんもそっち側に……。俺はまだ諦めないぞ! 陽色ちゃんを魔王の手から救い出してみせる!」

 「お前……。死にたいの?」

 「申し訳ございませんでした」

 ふざけたことを言い出した漣に、右京は冷え切った目で視線を送った。何言ってんだ、お前……、という思いを込めて……。というか、あまりにもバカなことを言っていて話にならなかった。

 「ほら、皆並んでますよ。開会式ですよ〜」

 「急がないと」

 陽色と天翼の声で、右京たちは周りが少しずつフィールド内に集まり始めている事に気づいた。その言葉に従い、急いで列に並びに行く。

 開会式が始まった。定番の競技上の注意や校長先生の話にラジオ体操。無駄に長く、めんどくさいというのは、全国共通なんだろうな……。とか思う右京だった。

 開会式が終わると、

 「右京、テントどこか分かる?」

 「ん? 確かに……、どこだ?」

 「おい、自分のクラスの色分け分かってるか?」

 漣が右京に今更なことを聞いた。が、その問いに右京も答えられなかった。それに突っ込む清那、という謎の構図が出来上がった。

 「僕たちは、赤組。陽色ちゃんが白組だね」

 「てことは、あれか!」

 天翼が呆れたふうに言うと、漣が赤色の旗が立っているテントを指さした。

 「ああ、コイツラやっぱりバカだ……」

 「おい清那! 俺も一緒にすんな!」 

 「これで、俺と一緒だね」

 清那は、天を仰いだ。流石に自分のクラスの色を覚えていないとは……。まだハチマキが配られてないとはいえ、もう発表はあったというのに。清那から見れば、お前らは同類だよ、としか思えなかった。

 まだ言い争っている右京と漣を止めて、

 「ほら、もうみんなテントに移動してるから。移動しないと。いい加減にしようか」

 と天翼が促す。そして少し怖い笑顔で脅す。なんだかんだで1番大人な対応をしているのが、天翼だった。

 「「はい……」」

 「清那もね」

 「はい……」

 天翼に言われて、一瞬で静かになる右京と漣。窘められて萎れる清那。みんなは天翼に逆らえなかった。理由はあることはあるのだが、今のところは伏せておこう。

 そうして、自分たちのテントに移動しだした。

 移動し終わった後、

 「そういえば、右京と漣はこのあとすぐ100メートル走じゃなかった? 早く行きなよ」

 「あぁ、そうだった……。はぁ……」

 天翼が思い出したように右京と漣に言う。右京はだいぶ嫌そうにしながら立ち上がった。

 「よっしゃ! 右京! 頑張ろうな!」

 「えぇ〜」

 ノリノリで肩を組みだす漣に、少しゲンナリしながら向かおうとする。

 「氏王! きちんと本気で走れよ」

 どこからともなく現れた坊主頭の男が右京にそう言った。

 「横田……、誰のせいでこんなに、やる気失くしてるとおもってるんだ?」

 「ん? 何でやる気失くすんだよ」

 右京が恨めしげに、元気良い坊主頭――横田に問いかけたが、あまり効果が無かった。というか、何故やる気が無いのか全く分かっていなかった。

 横田は自分のしたことを覚えていなかったようだった。

 「まあ、いいや。ガンバれよ!」

 「はいはい……」

 横田は首を傾げていたが、やがて考えるのを止めて、サムズアップした。そんな横田に呆れて、右京はさっさと歩いていった。

 「じゃ、頑張ってくるわ!」

 「おうっ! ガンバれ!」

 そんな横田に元気良く返す漣。それに応えて激励を送る横田。

 この2人が揃うとやかましくなるんだよな……と歩きながら思う右京だった。

 後ろから漣が追いついてくると、

 「で? 右京は本気出すの?」

 「なわけねぇだろ。3位ぐらいをキープかな」

 「ん〜、そっか〜。でも、周りが少し騒ぐかもな。男子もだけど女子も」

 「ん? 何で?」

 漣は疑問に思っていたことを右京に聞いたが、案の定、右京は本気を出さないようだった。

 そう、右京は基本的に何でもできる。勉強、スポーツ等々。そのため、本気を出せば右京にとって1位を取ることは簡単なことだ。

 ただ、それはしない。なぜなら、告白される回数が増えてしまうから! これ以上増えてしまうと面倒で、自分の時間が無くなってしまうと思ったようだった。

 ただし、どちらにしても注目を集めてしまい、告白の回数は増える。

 「じゃ、俺が代わりに1位取っとくわ」

 「頼んだ」

 そういうことに慣れている漣は、意味を理解し、右京のために悪い方向にならないような行動を選択する。

 これがいつもの2人だった。

 『それでは、桔梗学園高等部体育祭、第一種目目、男子100メートル走のスタートです』

 アナウンスがかかった。

 どうやらこれでもう、体育祭が始まってしまう。

 あぁ……逃げたい……と招集所の列に並びながら思う右京だった。

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