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王子様男子と恋する乙女の恋愛譚  作者: シト
1年生、夏休み
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40話 研修旅行 1日目の夜 3

 そんな風に過ごしていると、夜の八時を回った頃に放送がかかった。


『え〜、桔梗の生徒は、正面玄関まで降りてこ〜い。今からお楽しみだぞ〜』


 明らかにやる気のない声は、聞き覚えがあった。柳田だった。


「そういや、何か言ってたな」

「柳田……ここに泊まってる他校の人にまでやる気ないのバレちまったじゃねえか」


 漂磨がスピーカーから目を戻してそう言うと、漣は眉間を揉みながら溜息を吐いた。

 漣はなんだかんだで柳田よりも、色々なことを考えていそうだ。尤も、彼にはそこまでの愛校心は無いが。


 六人が部屋を出ると、見覚えのある人達が廊下に出て来ている。

 ぞろぞろとその流れに従って、六人は階段を降り、正面玄関に向かう。


 既に半分程は集まっていて、少しざわざわと騒がしかった。


「何するんだろう……?」

「柳田が考えてるからな……碌な事じゃないぞ」

「言えてるわ〜」


 天翼の疑問の声に、右京は顔を顰めて唸った。その言葉に、漣は呆れ笑いで同意した。


「なんか肝試しとか言いそうじゃね?」

「うわ、いかにもって感じ」

「それ、許可下りんのか?」


 漂磨が笑って言った言葉に、慶軌が指を指して目を見開くと、湧誠が首を捻って冷たい言葉を挿し込む。


「う〜ん……生徒からなら間違いなく下りねぇよな」

「だけど先生なら……」

「分かんねぇってか」


 漣は悩みつつ確認するかの様に言葉を発した。それに天翼が追随する様に生徒を誘導している柳田を見ながら続けると、湧誠が理解したように頷いた。


 右京は澄まし顔のままで口を開いた。


「ふ〜ん。珍しく柳田が先導することもあるんだな」

「まぁ、一応一年生の主任だしね」

「は? いつもおじさん先生とかがなるのに?!」

「そうなんだよね」


 右京のつれない反応に、天翼は苦笑した。それに漂磨が反応して天翼を見ると、天翼は笑顔のままで頷いた。


 そうして話し合っていれば、柳田が声を張り上げて全体に知らせ出した。


「はい! 全員揃ったっぽいんで、説明始めんぞ!

 さっきはお楽しみって言ったが、要は今から肝試しをする! 二人一ペアになってくれ! 男女でも男男でも女女でもいいぞ! ただし、あんまり帰ってくんのが遅かったら、このスクリーンに繋がったスマホもって動画回しながら凸るからな!」


 柳田は建物の外にあるいつの間にか立てられたスクリーンを指差しながらそう言った。


「うわ、えげつね!」

「生徒が嫌がることをとことん分かってやがんな」


 慶軌は大げさに顔を顰め、漣は面白そうに笑った。


「特にカップルがおっ始めてたなら、公開処刑も同然だからな」

「何を始めるんだ?」

「…………それはう〜ん……、イチャイチャだよ」

「あぁ……。それにしても、これをする許可下りたの奇跡じゃないか?」

「まぁそうだな。柳田、頑張ったんだなぁ……」


 漣は遠い目をした。二重の意味で何やら苦労したようだった。天翼はそんな漣を見て、笑うばかりだった。


 そんな漣の肩を漂磨が叩いた。


「(なぁ、もしかして右京って……)」

「(……その通りだ。ピュアっピュアだから変なこと言うなよ。それを教えるのは、陽色ちゃんと付き合ってからって俺は決めてる)」

「(了解!)」


 漂磨の質問に、漣は頷き、キリッとした顔で漂磨に命令する。漂磨はそんな言葉に、敬礼して返したのだった。


 そして、右京に向く視線が多くなってきた頃、右京に近付く者がいた。

 陽色だった。


「右京くん」

「ん? 柊か。なんだ?」

「一緒に行きませんか? それに……なんかここ、本当に()()らしいじゃないですか……。どうにも怖くなってしまって……」

「あ、あぁ……良いぞ。どういう道を通るんだろうな」


 服の裾を引っ張って、真っ青な顔を見せ付ける陽色に、驚きながらも右京は頷いた。陽色が何かに怯えている様子に、驚きを隠せなかった様だった。

 それどころか、右京が思っていたことというのは――――


(こいつ、怖いものあったんだ……)


 というものだった。

 最早、陽色を同じ人として捉えてすらいないような思考だった。


 身体を震えさせながら、辺りを見回す陽色の姿が、右京の中の記憶にオーバーラップした。


(…………あれ? なんか、こんなの前にも……)


 右京はそう思ったが、きちんと思い出すことは出来ず、取り敢えず頭の中から追い出すことにした。


 陽色の視線を追ったりしていると、右京は周りが暗いことに気が付いた。


「あ、暗……」


 右京の思考は、暗闇に乗っ取られる。

 唐突に身体が震え出した。

 不自然に手を前に突き出し、何かを叩く様な動作をする。自分でも何をしているのかよく分からなかった。


「右京くん……?」

「あ、あぁ、どうした?」


 陽色の声で右京の意識は再び戻って来る。依然として未だ辺りは暗いが、陽色の存在が自分の意識を保ってくれていた。


「いえ……大丈夫ですか? 私よりも酷い顔してましたよ?」

「大丈夫だ。大丈夫」


 陽色の心配そうな顔に、右京は笑顔で返した。顔はやけに青白かった。

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