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王子様男子と恋する乙女の恋愛譚  作者: シト
1年生、夏休み
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35話 研修旅行 大学にて

「なぁなぁ、大学どんな感じかな」

「知るか。見れば分かるだろ。あと30分もすれば着くんだから」

「それもそうだけどさぁ……なんかあるだろ」

「ない」

「いや、でもさぁ、テンション的にさ。もうちょい上げてこうぜ〜」

「断る」


 漣が誰が見ても分かるダル絡みを右京にしていた。右京は明らかに顔を顰めているが、漣はその程度では負けない。


「ほらほら。右京は寝れてなくて機嫌が悪いんだから、ほっといてあげてよ」

「ムリムリ! 漣はカマチョだから、構わずにはいられないの」


 天翼がシートとシートの間から苦笑しながら、後ろを覗いてそう言った。清那はシートの上から漣を煽るように手を横に振った。


「ふっ、俺には右京に気持ちが分かるのさ。これぐらいならむしろ喜んでるんだよ。いわゆるツンデレだからな」

「ねぇ、こいつキモいって思うの私だけ?」

「安心して。今僕も殴りたいと思ったから」


 漣が眉間に指を当てながら無駄に色気たっぷりに溜息を吐くのを見て、げんなり顔の天翼と清那だった。


「じゃあ当ててみろよ。今の俺の気持ち」


 右京が漣に向き直ってそう言った。こめかみには青筋が立っていた。

 だが、そんなもので怯む漣ではない。


「お前は今、皆と研修旅行に行けて喜んでいる! そして、俺にこんなに話し掛けられてちょっと喜んでる!」

「はいハズレ。判決、死刑。殺るぞ」

「「ノッた!」」


 漣がキメ顔で指を上に向けてそう言うのに対し、右京は少しも顔を動かさずに、拳を鳴らした。漣にはボキボキとなるその音が、マンガでしか見たことがなかった。

 右京の言葉に天翼と清那の二人も賛成して、参戦しようとした。


 瞬間的にIQ300まで跳ね上がった漣の脳が叩き出した答えは――――


「すいませんでした。もう二度としません」


 漣はその場で頭を下げた。シートの上の膝に頭がくっついていた。恐らくここが座席でなければ土下座をしていたことだろう。


「まぁ良いや。俺寝る」

「はいおやすみ〜」

「えっ!? あんま時間ねぇのに?!」

「…………」


 右京の宣言に、天翼は手を振って送り出した。漣はわざわざ大きな反応をしたが、右京は無視して眠ることを決めた。


 ギャーギャー騒ぐ声が聞こえたが、眠気の残っていた右京はすぐに眠りの淵へと落ちていった。


 そんなこんなで大学には1時間も掛からずに着き、右京は叩き起こされて眠り眼でバスを降りた。


 そこには横田がいた。


「すみません! 寝坊しました!」

「あ〜、別に良い。来れたんなら良かった」

「はい! すみません!」

「あ〜……うるせぇなお前。何なんだよ。はいはい、戻れ」

「はい!」


 柳田と横田の話は噛み合っているようで、噛み合っていなかった。柳田は鬱陶しそうに手を振って、横田はそれに従ってクラスの皆が集まっている所に歩いて行った。


「お、氏王は何で死にそうなんだ?!」

「……お前がうるせえからだよ」

「そうかそうか! これは俺の性分だから直せないな! 我慢しろ!」

「………………お前無駄に強いよな」

「そんなに褒めても何も出ないぞ!」

「あぁ……存分に分かったから。あっち行っとけ」

「おう!」


 右京は本日何度目かのげんなり顔で、柳田と同じような手の振り方で横田を追い払った。話が通じなさ過ぎて少し疲れてしまったようだった。


 一方の漣達は、大学の光景に目を輝かせていた。


「すっげぇな。キャンパスってこんな広いのか」

「そうだね。僕の行きたい大学もこんな感じなのかな」

「大学ってどこもおんなじ感じなんじゃない?」


 三人三様の反応をしていた。漣に至っては、少し集まっていた場所から離れかけていたのを、天翼がバッグを掴んで引き留めるという事態になっていた。


「お〜い! お前ら、担当の方がいらっしゃったから、班別に分かれろ!」


 柳田が珍しく声を張り上げて、クラスの皆にそう言った。他のクラスでも同じような声掛けが行われていた。何処も似たような状況らしい。


 班別に分かれると、今度は学年全体で班別に分かれて、担当の人の所に集まれと指示が出た。

 その先生の所に行けば、既に陽色と日奈が居た。


「お、いたいた」

「陽色ちゃん! 一緒だったんだ!」

「あれ……? 私言いましたよね。ねぇ日奈ちゃん?」

「言ったね。あれに関しては、多分清那ちゃんが聞いてないだけだから」

「はは……ごめんね」


 漣が二人に手を振ると、清那が大股で二人に近付いた。二人は清那の言葉に半笑い。日奈は完全に呆れていた。それになぜか天翼が謝った。


「何で天翼が謝るの?!」

「清那ちゃんのやらかしは僕の管理ミスだから」

「私は小学生か幼稚園生か!」

「え、違ったの?」

「違うよ!」


 清那は怒ったように不思議そうな表情の天翼に向かって叫んだ。


「それじゃ、行きます! この先生にずっとついて行ってください! 先ずは1組から先に向かって、2組からはその後をついて行ってください!」


 担当の先生は、大学の先生を手で指しながらそう指示を出した。

 陽色と日奈とは、暫く分かれることになりそうだった。


「じゃあ、しばらくお別れですね」

「また後で」

「うん!」

「あとでねー」


 陽色と日奈が歩いて行くと、清那と漣は手を振って送り出した。


「(あれ? お前一回もしゃべってないじゃん?)」

「(別に良いだろ)」

「(ふ〜ん……?)」


 漣がそう耳元で言うと、右京はそっぽを向いた。漣はニヤニヤとしながら適当に流した。


 一方の陽色と日奈は――――


「あ、右京くんとしゃべってない!」

「嫌われたんじゃない?」

「うそー! まぁまた会いますし、大丈夫だよね」

「どうかな」

「日奈ちゃん、そんなこと言わないで!」


 陽色は耳を塞いでそう叫んだのだった。

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