番外編 清那と天翼の出会い
放課後の中学校。
教室の隅。
その隅まで追いやられた可愛らしい少年と、それを追い詰める複数の少年たち。
その可愛らしい少年こそが、中学校1年生の天翼だった。
見た目が今よりも女子っぽくあった為、前はよくからかわれていた。
そんな1年生、秋の話だ。
「お前、ガチで女みたいじゃん!」
「傷とか出来たらカッコよくなるんじゃね?!」
「俺たちがカッコよくしてやるよ」
まるでいじめるかのように、少年たちは拳を振り上げた。とはいえ、それを振り下ろす勇気が無いことも天翼は分かっていた為、ピクリとも動かなかった。
ただ、怒りで拳を握り締めてはいた。
よく見れば、天翼の顔は笑顔ではあるものの、時々顔が引き攣っていた。
「ちょ〜っとそれは良くないな!」
教室の前のドアから、そんな声が響いた。見れば、驚く程イケメンな人がいた。足元を見ると、スカートを履いており、一瞬脳が混乱するレベルだ。
「げっ! アイツ、女なのに男みたいって女子が騒いでた奴じゃね?」
「うわ! マジじゃん!」
「めんどくせっ! もう行こうぜ」
「「うん」」
少年たちは見られたことを気まずく思ったのか、立ち去って行った。
「君、なんで反撃しないの?」
「僕がやったら、あいつ等が大怪我するから」
「おお〜、それはすごいね。でも、関わる友達は選ばないと」
清那の質問に、天翼は少年たちが出て行ったドアを見ながら答えた。清那はそれに大袈裟な反応を見せつつ、軽く諌めた。
天翼はそんな清那を不審な目で見つめた。
「そんな目で見ないで〜。かわいい顔が台無しだよ〜」
「僕は可愛いっていう言葉が嫌い」
清那が茶化しながらそう言うと、天翼はそう吐き捨てた。
「僕の顔だけであんな風に言ってくる奴がいる。面倒臭いんだよね」
天翼は溜息を吐いて、毒を吐いた。
「でも、私は好きだよ? かわいいの」
「はぁ? そういう話をしてるんじゃ……っ!」
清那は不思議そうに天翼を凝視した。天翼は思わず叫びそうになったが、途中で言葉を止めてしまった。
何故なら、視界が何か分からないもので埋まっていたからだ。同時に温かみを感じたことから、やっと抱き締められているということに気が付いた。
反射的に、天翼の頬はカッと熱くなった。
「何するの?!」
そして、清那を突き飛ばした。
「ん〜……ハグ?」
適当な雰囲気で首を傾げる清那。
「いや普通、初対面の人にハグはしないでしょ?! 外国の方ですかね?!」
「え? 私は君のこと知ってたし……」
「そういう話じゃないでしょ?!」
天翼の言葉を意にも介さず、きょとんとする清那に、天翼は更に叫んでしまった。
「い〜や、そういう話だね。私がしたかったからした! これで十分」
「っっっっ! もう良いよ!」
清那は再び天翼を抱擁した。天翼は少しだけ身を固めると、諦めたように肩の力を抜いた。
「ねえ、天翼。私と友達にならない?」
「なんで僕の名前……」
「いいから!」
清那は悪戯っぽく笑ってそう言うと、天翼は自分の名前に反応して驚いた。清那はそれを軽く躱して続けた。
「う〜ん……良いよ」
「やった! 私は清流清那!」
天翼が顔を顰めて答えると、清那は跳び上がりながら喜んだ。
そんな光景に、天翼は仕方なさそうに笑った。
「僕の紹介はいる?」
「欲しい!」
天翼は念の為と言わんばかりに確認を取ると、清那は凄い勢いで頷いた。
「……じゃ、僕は空井天翼。よろしく」
「うんっ!」
天翼が照れ臭そうに自己紹介すると、清那は輝きに満ちた笑顔で返した。
その後、校内で天翼と清那が手を繋ぎながら歩き回る姿が目撃された。正しくは清那が渋る天翼を引き摺り回す様子だったが、周りからは勘違いをされてしまい、付き合っていると思われたらしい。
天翼はその誤解を解くのに、半年は掛かったという。
天翼曰く、
「あれ、大変だったから。高校生になるにあたって止めてもらったけど、本当に意味が分からないくらい嫌がって……不思議だった」
だそうだ。
清那に聞いてみると、
「だって、手繋いで歩いてたら牽制になると思ったんだもん! え? もちろんあの男子たちにだけど。ついでに仲良く見えるでしょ? なんで繋ぐの嫌がるんだろう……? 別に変じゃないよね?!」
と首をひねっていた。




