番外編 清那、天翼と漣、右京の出会い
「いや〜、良かった良かった。無事に入学出来たね〜」
「うん。僕はギリギリだったから余計ね」
入学式終わりの少しざわざわとした教室で、清那と天翼の二人はそう話した。二人の顔には笑みが浮かんでおり、安堵していたようだった。
入学式が終わった直後で、見知った人たちと固まっている教室は、安心と不安が入り混じっていた。
「天翼とおんなじクラスで良かった〜! 私は誰か知り合いが居ないと縮こまっちゃうからね」
「とか言って、すぐに友達作ってるくせに、よく言うね」
「ははは〜! そんなには作ってないよ」
「僕は友達作るの、苦手だからな」
清那のカラッとした笑いに、天翼は少し憂鬱そうな表情で返した。
「ま、大丈夫でしょ」
「そうだね」
そんな天翼を見やって清那は笑った。天翼もそれにつられるように笑った。
「え、君たち女? 男? どっち?」
その時、横から声が聞こえた。
二人がその方向を見ると、軟派な印象の赤みがかった髪の男がいた。
「一応私女なんだけど!」
「僕も男だよ」
清那は怒ったような顔で、天翼は苦笑しながらそう言った。
「あ、悪い悪い。なんかどっちにも見えたから。俺は風凪漣。お前らは?」
漣は少しも悪いとは思ってなさそうな顔で謝罪をした後、そう名乗った。
「私は清流清那」
「僕は空井天翼だよ」
清那は渋々といった様子で名前を言い、そんな清那の肩を叩いて宥めながら天翼も名乗った。
「へぇ〜。じゃ、清那と天翼だな。ちょっとこっち来て」
「「へ?」」
漣の流れるような名前呼びと先に歩いて手招きする姿を見て、思わず間抜けな声を洩らしてしまった二人だった。
その行き先を見れば、見るも綺麗な男子がいた。
「あれまぁ、すっごい美男子が」
「あれはすごいね……」
二人は顔を見合わせながら、思わず嘆息した。
そんな二人を誘導していた漣は、その綺麗な男子と話し始めた。何やらこちらを指差しながら説明しているようだった。
「何してんの? 早くこっち来いよ」
「あ、うん」
「分かった」
漣は止まったままの二人を訝しげに見ながらまた手招きした。清那と天翼の二人は、そんな漣を見て我に返って、そちらへと歩み始めた。
「ほら、こいつは氏王右京。俺の中学校からの親友な」
漣は二人に右京をそう紹介した。
「いつから親友になった」
「でもお前と一番仲良いの俺だろ? てか、俺抜きでまともに話せる奴あんま居ないじゃん」
「くっ!」
右京は思わず漣にツッコんだが、完璧にいなされてしまい、逆に自分が追い込まれてしまった。
「あ〜、仲良いんだね」
「おう!」
「離れろ!」
清那が愛想笑いをしながらそう言うと、漣は右京と肩を組んだ。右京はそれをすぐに引き剥がした。
「で、誰?」
右京はチラッと二人に視線をやって、漣に尋ねた。
「おんなじクラスの清那と天翼! 面白そうだったから声掛けてみた!」
「はぁ……お前な、学べよ。適当に声掛けたら相手が困るだろ。あと俺も」
漣が太陽の如き笑顔で清那と天翼を紹介すると、右京は眉間を押さえ、溜息を吐いた。
右京は少しだけ二人の足元を見て、清那をキッと睨んだ。
「おっと、右京……初対面で人を決め付けるのは良くないな」
「だったら、俺の人生を経験してみろ」
「失礼しました。だけど、俺の人選眼が間違っていたことがあるか?」
「結構あるだろ。自分の友達もミスってたじゃねえか」
「うぐっ! 痛いとこ突くじゃん」
と、二人は同中の会話をし出した為、清那と天翼はついて行けずに首を行ったり来たりさせていた。
それに右京は気付き、漣の頭を小突いて咳払いをした。
「ん゛っ!」
「おうっ! ゴメンな〜。ちょいとやってしまったよ〜。清那についてはすまんな。こいつはこんな見た目してるから色々と苦労してんだよ」
右京の咳払いに驚きつつ、漣は我に返って二人に謝った。
「あ〜、察したわ」
「大変そうだもんね。僕も大変だったから、主に男子から」
「私と初めて会った日も、男子にからかわれてたもんな」
清那は納得したように頷き、天翼は自分の過去を思い出してげんなりとした。そんな天翼を見て、清那は思い出し笑いをしたのだった。
「まぁ仲良くしてやってよ」
「良いよ〜!」
「氏王くん次第だけど、僕としても仲良くはしたいかな」
漣の頼みに、清那と天翼は頷いて引き受けたのだった。
「漣! 俺は……」
「はいはい! でも俺は清那なら大丈夫って思ったから。だって……」
右京がそう叫ぶと、漣はそれを遮って清那に視線を送った。
「私が男みたいだから、だろ?」
「正解っ!」
「はぁ……まあ良いよ。私としても、なんか面白そうだし」
漣の元気の良い声に、清那は溜息を吐きつつ笑った。
右京は密かに、もしかしたらもしかするかもしれないと思いながら、顔を固めて表情が動かないようにしたのだった。
次は清那と天翼の出会いかな……。




