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番外編 右京と漣の出会い

1日に連続で上げたの初めてかも。

 中学校の入学式。

 それは漣にとって暗鬱な気持ちにさせる行事だった。


 元来、人と関わることを苦手とする漣は、幼馴染との出会いで、その性格は180°変わった。

 明るく、人とも積極的に話すようになった。


 転校して幼馴染と離れた後も、出来るだけ人と話すようにした。すると、すぐに友達は出来たし、誰とでも仲良くなれた。

 その事は、幼馴染の主張の証明でもあった為、漣の喜びでもあった。


 しかし、入学式ともなれば、また別の話だ。


 学校そのものが変わるからだ。

 小学校と違い、人も増え、知らない人の方が多くなる。そんな時に尻すぼみしてしまうあたり、まだ自分は人見知りなんだと自覚してしまうからだ。


 そんな気持ちで、両親、妹と中学校の門をくぐったのだった。

 そんな時だ。

 非常に美しい少年が自分を追い越していったのが見えた。視線を一身に浴びてしまったのが怖かったのか、ビクッとしてまた門へ戻って行ってしまった。


 門の影に隠れるその姿は、人見知りの自分でも思わず声を掛けたくなるような雰囲気だった。


「ねぇ、大丈夫?」


 漣はそうその美少年に話し掛けた。少年はまた肩をビクッとさせながら、漣の方を向いた。

 目には混乱と怯えが宿っており、人見知りなんだなと理解するにはあまり時間がかからなかった。


「…………」

「こわいの?」


 無言で俯く少年に、漣は続けて声を掛けた。

 その問いに、少年はゆっくりと頷いた。


「そっか! ならおれといっしょに行こう!」

 漣はそんな少年の手を引き、自分の両親の元へと戻った。


「どうしたんだ、その子は?」

「漣、勝手に連れて来ちゃダメでしょう」


 父親は漣に尋ね、母親は漣を窘めた。


「なまえ、なんていうの?」

「氏王……右京」

「そっか! じゃあ右京だね。よろしく!」

「……よろしく」


 少年――右京は長い前髪に目を隠しながらそう言った。


「親御さんはどこかな」


 漣の父親は少し屈んで、視線を合わせながら尋ねた。


「お母さんは……来ない」

「お仕事か」

「はい……なくても来ないと思うけど」


 右京が自嘲するような雰囲気で笑みを浮かべたのを見て、漣の両親は目を見合わせた。


「なら、私たちと一緒にいよう。丁度、漣も入学するからね。それで良いかな?」

「はい、大丈夫です」


 漣の父親の提案に、右京は少しだけ笑みを浮かべた。


 それを見て、漣の父親は少し痛ましく思った。

 自分の息子と同じ歳なのに、この物分りの良さは、そうならざるを得なかったということだ。

 自分の母親が来なくても寂しそうな顔すらせずに、更にルックスの良さから好意の視線を寄せられる。

 自分がそんな環境に居たら、気が狂ってしまいそうだと漣の父親は思った。


 右京は受付を済ませると、ぼーっと段差に座っていた。


 漣の父親は、漣に向けてこう言った。


「漣。あの子とは積極的に関わるんだ」

「なんで?」

「あの子は多分、これまで沢山辛い思いをしてきている。なら、お前が3年間いや、ひょっとしたらもっと長く関わるかもしれないが、その分だけあの子の生活を楽しく彩ってあげるんだ。

 それが友達ってものだ。お前は、あの子と友達になりたいと思ってるんだろ?」

「うん!」

「なら、優しくしなさい。そして、一緒に楽しみなさい」

「分かった」


 漣の父親の言葉に漣は元気よく頷いたが、果たして漣は分かっているのだろうかと思いながら、漣の父親は笑い掛けたのだった。


「入学する皆さんは、こちらに集まってくださ〜い!」


 中学校の先生と思われる人が、声を張り上げていた。


「ほら、行ってきなさい。父さんと母さんと柚果ゆうかは見てるからね」

「うん! 右京、行こう!」

「……うん」


 漣は右京の手を引っ張りながら、その方向へと駆けて行った。


「あの子は……」

「きっと優しい子だな。本当は知らない人に対してもっと警戒しても良い所だ。だけど、こちらの厚意を察して素直に受け取った。

 優しさを察して更に優しさで返せる子だよ、あの子は。漣とはいい友達になるよ」

「ともだち〜?」

「そう、友達だ。柚果にもいるだろ?」

「うん!」


 残った漣の家族の三人は、ゆっくりと成長した漣を見ながら、そう話していた。



 月日は流れ、中1の夏休み。

 あれ以降、漣の家族と右京は会うことは無かったが、右京が遊びに来るということで、少し漣の家族はソワソワとしていた。


「久しぶりに会うからな」

「あぁ、甘い物好きかしら?」

「落ち着け、果成かな

「でも!」

「良い子なのは判ってるだろう?」

「そうね、諒祐りょうすけさん」


 漣の母親――果成はだいぶ落ち着いて、椅子に座った。そんな果成の様子を見て、漣の父親――諒祐はコーヒーを啜った。


 インターホンが鳴った。

 柚果が「鳴った〜!」と叫ぶのを聞きながら、二人は立ち上がり、玄関へと向かう。


 漣も二階から降りてきて、既にドアを開けていた。


「よう、右京!」

「漣、久しぶりって訳でもないな」

「そうだな」


 怯えた様子だった右京はそこにはなく、笑いながら漣と話していた。背丈も少し伸びていた。


「あ、こんにちは。お久しぶりです。お邪魔します」


 右京は漣の後ろの果成と諒祐に気付き、頭を下げた。


 二人は自分の事を覚えていてくれたことに仄かな喜びを感じながら、笑って出迎えた。


「久しぶりね。上がって」

「こんにちは」


 二人はそう言って、笑った。 

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