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王子様男子と恋する乙女の恋愛譚  作者: シト
1年生、1学期
27/57

27話 過去 2

 ここからが黒歴史の本番だ。

 いや、ここまでも十分俺としては恥ずかしかったけどな。漣、笑うな。お前もだいぶやられてただろ。


 そうだな。どう話そうか。


 俺と冬野はそれなりに恋人らしいことをこなした。デートにも一応行った。

 柊、睨まないでくれ。何でそんな怖い顔を俺に向ける。


 腕組まれた時は流石に振り払ったな。ゾワッてした。その時の顔が、歪んでたんだ。めちゃくちゃに黒い表情だった。俺はあれ以来、あんなに歪んだ顔は見たことが無い。


 そんな表情を見た後で、また普通に関わるなんて、俺には出来なかった。だから少し逃げることにしたんだ。

 まぁ、この逃げも一週間と保たなかったが……。


 あいつの押しの強さは稀に見る程のものだ。俺なんかじゃ到底逃げ切れなかった。

 捕まった時に、理由を聞かれた。


「なんで逃げるの? 嫌いになった?」


 って。ご丁寧に、泣きそうに目を潤ませながらな。

 そんな顔を見せられて、誰が自分は悪くないって思える?

 すぐに謝った正直に理由を言ったよ。


「すみません……なんか、怖くなってしまって……」


 ってな感じで。

 それを聞いて冬野は笑ったよ。ものすごく笑った。声を上げて。


「怖い〜? そっか〜! それぐらいだったか〜! じゃあさ! 少しずつ慣れていこうよ!」


 とか言って、あまりの勢いに蹲ったままの俺に手を差し出してきた。それはそれは計算され尽くした角度で、頭を傾けながら。


 それからはまた、普通に戻った。

 部活で冬野から教わり、一緒に途中まで帰って、別れる。こんな事をずっと繰り返した。


 そんな風にして、俺は2年生に上がった。

 紫苑とも一緒に暮らすようになった。


 そんなある日のことだ。

 久しぶりに休日に無理矢理予定を入れられなかったから、外に出て本屋にでも行こうと思って、街に出たんだ。


 その時、冬野を見た。男連れだった。


 だいぶ混乱したよ。それなりに信用してた人だったから。曲がりなりにも、お試しで付き合ってたとしても、そんな裏切りはしないと思ってた。


 冬野は、男となんて言えばいいんだ? あそこは。漣、何て言ったらいい?

 俺、未だによく分かってないけど。

 あ、ホテル? あぁ、そうだった。よっぽど仲がいいんだと思った。

 だって、そのまま一泊してくんだろ? そりゃすごく仲が良いんだと思った。


 清那。なんだその呆れた表情は?

 俺、おかしいこと言ったか? 男女でホテルに泊まる人言えばって……泊まる以外になにかするのか?


 まぁいいや。

 親戚や親、兄弟とかの可能性とかもあったけど、あんまり仲良くないって言ってたから、それは無かった。


 その日は取り敢えず家に戻って、適当に飯作ってさっさと寝たよ。

 月曜日に事情を聞くためにね。


 月曜日の放課後、俺は男連れで冬野を見たと伝えた。

 呼び出されて少し嬉しそうだった冬野の顔が一瞬にして変わったよ。あんなに顔が変わったのは、あれ以来見ることは無いと俺は思ってる。


 それからはまぁ、醜いことこの上なかった。

 本人が言うことには、俺が悪いらしい。いつまでたっても、自分に惚れてくれない。全く好きになってくれない。

 そして、俺に関わりだしたのも、全ては自分の自己満足なんだと。

 承認欲求を満たすためだったそうだ。

 端から好きでも何でもなかったし、利用する気しかなかったらしい。


 計画通りに行かなくて、SNSで会った人と出掛けて、憂さ晴らししてたんだと。


 本当に、俺は人と関わるのが向いてないと心底思ったよ。利用される可能性なんて1ミリも考えずに、みんな少しでも関われば良い人なんだと思ってた。

 自分の周りには良い人しか現れないし、悪い人っていうのは、物語やテレビの中だけの話だと、勘違いしてたんだ。


 実際は違った。

 人と関われば関わる程、醜いところが見えてくる。

 嫉妬や恨み辛み、嫌悪。酷いもんだった。


 俺はその後、一週間人と関わることが出来なくなった。部屋に閉じ籠もった。ベッドの上で、がくがくと震えてた。


 そんな時に、漣が俺の部屋のドアを叩いた。そして、こう言った。


「お前が人を嫌いになってしまうのは分かる! だがな、そんな風にして全てを切り捨ててしまうのは違うだろ?! 頼むから、怯えるのを女だけにしないか? 男をその対象から外すんだ。そんな奴らを俺はお前に絶対に近づけない! 約束なんかじゃない! これは誓約だ。

 俺が危ないと感じた奴は、絶対に俺が遠ざけ、近付けることを許さない。お前みたいな良い奴が損をするのは、間違ってる!

 頼むから、ここから出て来てくれ……」


 って。中々な演説に思わず俺は顔を出した。

 それで良いのか、と俺は聞いた。漣に負担を強いてしまうようなことになってしまうから。

 俺は本当に弱いから、俺の目の前からいつか消えてしまうと思ったから。


 漣はそれを頷いて、全てを受け止めた。


 その日から、俺は“女嫌い”になった。

 これは、自分を守る殻であり、自分と人との関わりを保つ唯一の方法でもあった。


 要約しちまえば、これはただ単に、女に騙されて人を信じられなくなったところを、無理矢理女だけ信じられなくしただけだ。

 本当はこんなことは良くないと、分かってはいるんだよ……。女にだって良い奴はいる。だけど、こうでもしないと俺は学校になんか出て来れない。


 結局のところ、俺は女嫌いという皮を被った人間恐怖症なんだ。


 これが俺だ。

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