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王子様男子と恋する乙女の恋愛譚  作者: シト
1年生、1学期
22/57

22話 右京の諦め

本編の書き忘れを書こうと思って書いたら、予想以上に後々に繋がってしまう風に書いてしまった……。ということで、これはこの流れっていうことにしたいと思います。

 陽色の告白から2日後、漣と陽色の腹の探り合いの翌日の話だ。


「こんにちは! 右京くん!」

「またお前か……」


 廊下で陽色に話しかけられ、右京はげんなりとした顔をした。

 それもそのはずで、本日、3回目程の挨拶だった。休み時間の度に、必ず話しかけられていた。


 流石の右京もかなり冷たく当たったのだが、全く意にも介さず、こうして3限と4限の間の休み時間にまたこうして、右京のクラスである、3組の教室に訪れていた。


「何でこんなに来るんだよ!」

「え〜、ほら、よく言うじゃないですか。好きな人の好きな人になるためには、少しでも視界に入ることが大事だって」

「まあ、確かに言うけども……」


 右京の言葉に動じず、飄々と言ってのける陽色に、右京は呆れたようで、額に手を当てた。そんな右京を見て、陽色は首を傾げていた。


「お〜、仲が良さそうで」

「隣のクラスと言っても、別のクラスの教室によく来るね」

「おまけに右京に会いに行くなんて、女子の目が……おお、恐ろしい!」


 天翼は感心したように言っていたが、漣と清那は確実に煽っていた。そのニヤけた2対の目は右京へと向いている。


「はぁ……別に俺には関係無いだろ」

「ま、そうだわな。陽色ちゃんはちょ〜っぴり危ないかもだけどな」


 右京が溜息をつきながら窓の外を見た。そんな右京に漣は忠告でもするかのように、言った。


「危ないって、何でですか?」


 陽色はやはり、首を傾げた。天然のパーマが入ったフワフワの髪が揺れる。


「あちゃ〜、知らなかったか」

「意外だね。有名だったと思うんだけど……」

「結構な騒ぎにならなかった?」

「知らん!」


 漣はマズいというような表情をし、天翼は苦笑し、清那は右京に問いかけ、右京はまたそっぽを向く。

 綺麗な役割分担が為されていた。


「え〜と、そうだね。右京に告白した、4組の女子がいたんだよ。まあいつも通り、こっ酷く振られました〜、と。それで諦めなかったんだよね。しかも、右京に近付く女子を片っ端から嫌がらせだの、何だのして遠ざけたりとか」


 天翼が指をピシッと立てながら、説明をした。


「結局、それを右京が現行犯で押さえて、その時やられてた女子を助けて……告られて。で、その陰湿な女子は歯噛みし、キレて……あれは修羅場だったな……」

「私でも笑えなかった…………」


 漣が補足をして遠くを見た。清那ですら、無表情になり、顎に手を当てて、遠い目をした。


「え、え〜……。なんか怖くなっちゃうじゃないですか。ぶっちゃけ、そんなことされたぐらいで負けるんだったら、かな〜り弱かったんですね、その女の子たち」

「はははっ! やっぱ強いわ! 面白いわ〜!」


 陽色は不思議そうな顔をしたが、漣にはそれを見て笑われてしまった。


「漣。嫌なこと思い出させんな」

「おっと、当事者がいらっしゃった。っていうか、その時に助けた女子は、うちのクラスの子だったんだよね〜。可哀想なことに、ただ近くにいたってだけでそんな風にされちゃっんだから。

 挙句の果てに、右京に助けられて、惚れちゃう、と……」


 右京からストップがかかったが、漣は聞かずに詳細を述べ出す。


「漣、黙れ。本人が聞いたらどうする」

「悪かったよ。でも、これだけは言っとかないとね。陽色ちゃん。今聞いた話みたいに、嫌がらせされるのが日常茶飯事になっちゃうかもしれない。それでも、右京の近くにいたい?」


 右京が漣を止めると、漣は軽く謝り、そのまま陽色に忠告をした。


「別に大丈夫ですよ? 私はそれをぶちのめして、右京くんの彼女になります!」

「よし、その意気だ!」

「その意気だ、じゃねえよ! 彼女なんかいらない! お前はさっさと帰れ!」

「分かりました。じゃあ、また昼休みですね」

「じゃ〜ね、陽色ちゃん」

「二度と来るな!」


 陽色は帰って行ったが、右京の憂鬱なことがまた1つ増えてしまった。


 そして、陽色は宣言通りに、昼休みに右京の教室を訪れ、放課後にも押し掛けた。

 なんだかんだで、右京も流されて、一緒に校舎を出る。漣たちも後ろからついてきている。


「何でこんなに話しかけて来るんだよ! 普通は諦めるだろ!」


 右京は呆れというか、最早驚きで叫んでいた。ここまで積極的になられることが無かった。

 多少自分に自信がある人はいたが、最初の告白の段階での右京が冷たい反応で、心が折れていた。

 だが、目の前の不思議な少女は諦めることはなく、寧ろ更にヒートアップしている。


「う〜ん。普通ってなんですか?」

「は?」


 陽色は右京の言葉に、真剣な表情で返した。


「普通って言うのは、一般的という意味ですよね」

「そりゃそうだろ」

「ですよね。でもそれが、全員に当てはまる訳ではないのは分かっていますよね」

「例外は何事にもあるからな」

「だから、私はあなたの普通を壊すんですよ。じゃないと、あなたは私に振り向いてくれない。そのためには、その普通を超えないと、絶対にあなたが私に気付いてくれない。だから私は、あなたの高い壁の外から、あなたの名前を呼び続けます。

 そうすれば、その内答えてくれるようになるでしょう?」


 右京の前を歩いていた陽色はくるりと回転しながら振り向いた。その顔に浮かぶ笑顔は、右京ですら見とれてしまう程、綺麗で、輝いていた。


 右京は暫く固まった後、はぁ〜、と深く溜息を吐いて頭をかいた。


「もう良いわ。お前に関して、俺は考えるのを一切やめる。好きにしろ」

「言われなくても、好きにしますよ」

「そこは自重しろ!」


 諦めた右京に、陽色は当然と言わんばかりの顔で返した。つくづく、癇に障る奴だと右京は思った。


 右京は先程の陽色の笑顔を思い出した。

 それは、記憶の片隅にあるような、そんな気がした。

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