21話 テストの結果
2週間後の金曜日、全てのテストの結果が返ってきて、順位までが個人に知らされた。
「よし! 赤点回避だ〜! ありがとう、右京、清那ちゃん!」
「良かったな」
「夏休みに補習とか入ったら笑えないからね」
両手を上げて喜ぶ天翼を見て、微笑む右京と清那だった。
「ちなみに順位はどうだったんだ〜?」
漣が頭の後ろで手を組みながら、天翼の手元の紙を覗き込んだ。
そこに書いてあった数字は、162位だった。
一応だが、右京の学年は40名の6クラスのため、240人はいる。
「…………」
「…………」
天翼と漣は黙って見つめ合った。
「え、なになに〜」
「どんだけ悪かったんだよ」
清那と右京も続々と天翼の紙を見た。
「…………」
「…………マジかよ。これって半分以下、だよな?」
清那はその場で黙り込み、右京は引きつった笑いで紙を指差した。
「悪い?! 赤点回避とは言ったけど、点数が良かったとは言ってないよ!」
「あ、あぁ……そうだな」
天翼は言い訳じみた感じで叫び、右京は勢いに圧されて頷いた。
「逆に皆の順位は何なの!」
天翼は皆から見つめられて、怒ったように頬を膨らませながら言った。
「俺は3位」
「ん〜、俺は54位かな」
「私は……36位」
右京、漣、清那の順に天翼の心を折りにいった。
「……バケモノがよ」
天翼はそっぽを向いて、ボソッと呟いた。
「え?」
「なんでもない……。どうせ僕は頭が悪いよ!」
右京が聞き返すと、天翼は拗ねたように怒鳴った。
「え、どうしたんですか〜?」
「空井くん、怒ってるじゃん」
そして、ここで陽色と日奈が合流した。
「ん〜みんなの順位を確かめてただけ〜」
漣が軽く先程までの説明をした。
陽色はそれに納得したように息を吐き、頷いた。勉強会での天翼を見て、察したのだろう。
「じゃ、陽色ちゃんと日奈ちゃんの順位の公開といこうか」
漣がからかうようにそう言った。
「まあ良いですけど。私は2位です」
「あ、私は38位」
陽色は漣の様子を意にも介さずに、淡々と答えた。日奈もついでのように、言った。
その瞬間、天翼の目が死に、漣と清那の目が輝いた。
「え、陽色ちゃん、右京よりも上じゃん!」
「日奈ちゃん私とちか〜い!」
漣は右京を煽るように言い、清那は順位が近いことが嬉しいようで、飛び跳ねながら日奈に抱き着いた。
右京は口を大きく開けて、驚いていた。
まさか、こんなアホっぽい陽色に負けるとは思っていなかったのだった。
「え、お前あんなに英語出来てなかったじゃん!」
「私、理系なので。他で取れるんです」
「あぁ〜!! ちっ!」
陽色のドヤ顔に、右京は苛ついたように頭をかきむしりながら舌打ちをした。
右京は悔しかった。
中々、仲間内で負けることのない順位だったはずが、1つ差で負けてしまったから、余計にその気持ちを強くした。
「次は勝ってやるからな!」
「どうぞ。次も勝ちます」
「ちっ!」
右京が宣戦布告をすると、陽色はそよ風を受けているかのようにそれを流した。思わず右京は舌打ちした。
「はいはい、そこまで。あんまヒートアップすんなって」
そこで漣が収めに来た。
「わかってる……」
「悔しいのは分かるけどな、ムキになるなよ」
「うん……」
右京は注意されたのを少し恥ずかしがりながらも、漣の言う事を聞いた。
「かわいい……」
「陽色ちゃん……ここまで盲目になるとは俺も驚きだわ」
そっぽを向いた右京が陽色の目には可愛く映ったようだった。漣も思わず引き気味な笑いを浮かべた。
「まあ、元々のスペックが高いだけで、本来の性格は負けず嫌いだからな、こいつ。負けることが無かっただけで、露呈はしてこなかったけど。
あ、でも4月には1回出たっけな〜?」
漣は煽るように右京の顔を覗き込みながら笑った。
「クソがぁ! 1センチ差だろうがよ!」
「たかが1センチ、されど1センチ。お前の負けだ」
「だぁ! クソ!」
苛ついた右京はムッとした顔をしながら言い返したが、漣に言い負けてしまった。
それ以上に返せる言葉が見つからなかった。
「えっと……?」
陽色はそんな2人を見て、首を傾げた。その頃は、まだ知り合っておらず、何の話をしているのかが、分からなかったのだろう。
「ん? あぁ……身長の話だよ。こいつは俺に1センチだけ負けてんの」
「ちなみにその身長は?」
「俺が179で、右京が178〜」
漣の説明を聞き、更に興味を持ったようで、陽色は詳細を聞き出した。
「十分高いよ……」
天翼がまたボソッと毒を吐いた。
「今日の天翼、毒多めだな」
「誰のせいだと思ってんだよ、お前ら」
漣が不思議そうに天翼を見ると、清那が呆れた顔でそれにツッコミを入れた。
天翼のコンプレックスしか今日は攻めていなかった。成績と身長――――この2つを言われて、天翼のメンタルは潰れそうだった。
「あ、なんか今日はヤバそうなんで、帰ることにすっか」
「そうしとこう」
漣と清那の間でいつの間にか予定が決まっていた。
「ほら、陽色。帰るよ」
「うん〜」
日奈が陽色を呼び寄せて、昇降口に向かった。
「ほ〜ら、天翼! 帰るぞ!」
「うん……」
謎に1番の笑顔な清那が、俯いたままの天翼の手を引っ張って帰って行った。
教室には、漣人右京の2人が残った。
「ほら、帰んぞ」
「…………」
漣がそう呼びかけても、右京は机の上でうずくまったままだった。
それだけで、漣は右京の心情を察せたようだった。
「じゃあ次、勝てばいいだろ?」
「そうする……」
漣が右京の頭に手を置いてそう言うと、右京は頷いて立ち上がった。
「まあまた負ける未来しか見えねぇけどな」
「お前、いい加減にしろよ?」
「ういっす」
2人は笑って話しながら帰って行った。




