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王子様男子と恋する乙女の恋愛譚  作者: シト
1年生、1学期
2/57

2話 仲良くなろう

 翌日の朝、いつものように4人で登校していた時だった。

 「あ、王子様だ! カッコいい!」

 「あそこの集団、レベル高っ! 1人以外全員カッコいいじゃん! その1人も可愛いし」

 「いや、でも1人女子なんだよな。しかもカッコいい」

 とか騒がれるのは当たり前のことだが、そこに1人、元気に話しかける女子がいた。

 「氏王君、おはようございます!」

 それは陽色だった。

 これを見て、周りの観衆はというと、

 「おい、アイツマジか。女嫌いで有名な王子様に話しかけたぞ」

 「あ〜、撃沈しちゃうよ」

 「てか、あの子誰? 初めて見た〜。可愛くね?」

 とか言っていた。

 「あれ? 陽色ちゃんじゃ〜ん。昨日は貴重な右京の情報ありがとう! これでこいつを煽る材料が増えたわ」

 「いえいえ、それ程でもないですよ? ていうか、煽る材料じゃなくて、良いところってことになってしまうような気がするんですけど……」

 と漣と陽色は話し始めた。

 「おい、漣! 何話してんだよ。ほら、もう行くぞ」

 「まぁまぁ、良いじゃん! 少なくとも俺は陽色ちゃんを気に入ったよ。悪い子じゃない」

 と漣は右京に言った。

 「僕もそう思うよ」

 「まぁ、大多数の顔で惚れたわけじゃないみたいだしね」

 と天翼つばさと清那も漣に同意をした。

 「ありがとうございます、風凪さん、空井さん、清流せいりゅうさん」

 陽色は、漣、天翼、清那にお礼を言い、頭を下げた。

 「いや、別に良いって。それから、苗字じゃなくて名前で呼んでいいよ。同い年だし」

 「うん、僕も名前で良いよ」

 「私も、苗字で呼ばれるのは何か落ち着かないな」

 「分かりました。漣くんと天翼くん、清那ちゃんって呼ばせてもらいますね!」

 陽色は、笑顔で3人にそう返した。

 「うっ! 今のはなんというか……」

 「うん、すごいね」

 「破壊力が……。これが右京には全く効いてないっていうのがすごいな」

 3人は陽色の笑顔にたじろぎつつ、右京に呆れたのだった。

 「うん? なんのことだ?」

 「まあ良いよ、王子様。ほら、授業が始まるから、行くぞ〜」

 首を傾げる右京を背中から押しつつ、漣は急かした。

 「いや、まだ時間あるだろ……。ていうか王子様はやめろ! はぁ、まったく……」

 右京はため息を吐きつつ、早歩きをしたのだった。

 その後、陽色と別れ、(クラスは別だった)右京は漣に尋ねた。

 「漣、そういえば、あの柊とやらから何を聞いたんだ?」

 「うん? それはヒ・ミ・ツ!」

 「うわ、きっしょ!」

 「酷くね! 流石に自分でもキモいとは思ったけど……。まあ、これは切り札として取っとくよ」

 漣は唇に人差し指を当てながら笑って言った。

 「クソが! 後で覚えとけ!」

 「右京くん、知られたくないの? 優しいことしてるの」

 天翼が右京に尋ねた。

 「ああ。じゃないと、コイツにめちゃくちゃ煽られんだよ」

 「俺はね、右京が女嫌いなのは知ってる。でもそこだけ切り取られると、冷たい奴と思われることが多いだろ。俺は右京の優しいところを知ってもらいたい。俺は、俺たちはそれを知ってるから……」

 漣は今までにない優しい笑顔を浮かべた。

 歩いていた廊下の窓から、太陽の光が入ってきた。

 それを見た右京は何も言えなかった。

 しばらくの後、

 「ああ、教える気が無いってことはよく分かった。こんにゃろ〜」

 と言って右京は漣の首を締めた。

 「あ〜、死ぬ死ぬ! ギブギブ!」

 と2人は笑いあっていた。

 天翼と清那の2人はそれを慈愛に満ちた目で見て、微笑んでいた。

 その後、授業を4限しっかりと受け、昼休み、わざわざ陽色が右京の教室まで来て、

 「氏王君、昼ごはん一緒に食べましょう!」

 と言った。

 「お〜、陽色ちゃん! 良いよ、食べようよ!」

 と漣は返したが、

 「おい、漣! 何勝手に決めてんだ!」

 と右京から厳しい声が聞こえた。

 「まぁまぁ、良いんじゃない? 別にそんなに困るわけじゃないんだから」

 と天翼がなだめた。

 「大丈夫大丈夫。さ、早く来て。右京は意外と流されやすいから、強引でも食べれる状況まで持っていったらこっちの勝ちだよ」

 と清那が陽色を手招きした。

 「おい、何言って……」

 「右京はこんなふうに距離を詰められたことが無いから、困惑してるんだよね〜。ある意味でチャンスだよ、陽色ちゃん!」

 と漣は右京が喋ろうとしたのを遮って言った。

 「頑張ります!」

 と陽色は既に近くの席に座りつつ、言った。

 「もう好きにしろ」

 右京は目を手で覆ってそう言った。

 「ありがとうございます!」

 右京の姿を見て、陽色はそう言った。

 「そういえば、みなさんはまだ5月ですけど、仲良いですよね。中学から一緒なんですか?」

 と陽色は首を傾げた。 

 「いや、天翼とは中学からだけど、漣と右京は高校からだよ」

 と清那が笑いながら答えた。

 「右京と俺は中学から〜。ちなみにこの2人は俺がすぐに友達になって連れてきました〜」

 「コミュ力高いですね。一体どうやって……?」

 「それはね、俺から話しかけたの。いや〜、だって可愛い男の子とカッコいい女子がいたら気になるじゃん?」

 「いきなり聞いてきたのが、君、男子? 女子? は普通に驚くよ」

 「しかも私はガッツリスカート履いてんのに男子? って聞いてくんのはおかしいでしょ」

 「ああ〜、うん。なんとなく察しました。やっぱり漣君はそんな感じなんですね……」

 「そう、初対面からめっちゃ失礼なの」

 天翼と清那は呆れたように首を振った。

 その後も歓談をしつつ、各々で弁当や買ってきた昼食を食べていた。

 「右京君は喋らないんですか?」

 「いや、俺が女嫌いって聞いてなかったのか?」

 「まあ、聞きましたけど。私は右京君と付き合いたいからこんな風にしてるわけであって……」

 「あのな、フッたのにこんな感じで距離詰めてくるやつとかいなかったぞ」

 「へ〜、意外とみなさんメンタル弱いんですね」

 陽色と右京はそう話していたが、

 「珍しいじゃん! 右京がこんなに長く話せる女子なんて。清那以来じゃない?」

 「いや、清那はもうほとんど男子みたいなもんだろ」

 「ヒドイ! 私だって女子なのに!」

 「大丈夫、かっこいいよ」

 「何か天翼に可愛さで負けた気がする!」

 漣、天翼、清那も会話に加わり、なにやら騒がしくなっていた。

 「そういえば、5月ってなんか行事ありましたっけ?」

 陽色がその場のみんなに尋ねた。

 「あ〜、なんか体育祭とか末に無かったっけ?」

 「ああ、そんなのあったあった。めんどいなって思ってた」

 「いや、頑張ろうよ……」

 「で、それが?」

 「なんとなく……」

 「ま、いっか。よし、そろそろ休みも終わるし、戻ったほうが良いと思うよ」

 「はい、分かりました。ありがとうございます」

 と陽色は自分のクラスに去っていった。

 その後も何事もなく、放課後まで過ぎ去った。

 「ねぇ〜、右京〜。何する〜、放課後〜」

 漣が机に突っ伏しながら言った。

 「知るか!」

 「あ、みなさんまだ残ってたんですね〜。一緒に帰りましょう」

 右京が少し漣にキレていたとき、陽色がふんわりとした雰囲気を連れて来た。

 「良いよ〜。一緒に帰ろ〜、って用事あんのわすれてた〜! 誰か手伝ってくれる、優しい人、いないかな〜?」

 「「「自分でやれ(やって)!」」」

 その場の陽色以外の全員の気持ちが一致した瞬間だった。

 「え〜、ひど〜い。陽色ちゃん手伝って〜」

 「はい、良いですよ」

 「うわ、やっさし〜。どこかの誰かさんたちとは違うなやっぱり」

 漣は右京たちのほうを見ながら言った。

 「まあ、いつものカフェで待っとくわ」

 清那が漣に向けて言った。

 「分かった。さっさと終わらせてくる」

 「じゃね〜」

 漣が頷いたのをみて、3人は教室を出ていった。

 「さて、出ていったかな」

 「私だけ残して、何をするんですか?」

 「いやいや、聞きたいだけだよ? そんななんもしないって」

 2人は笑顔のままで話す。それが逆に怖い雰囲気を醸し出していた。

 「俺が聞きたいことは1つ、何で旧柊財閥、現柊グループ会長の孫娘がなんでここにいる!?」

 「それだったらあなただって、風凪コーポレーション社長の息子さんがなんでここにいらっしゃるんですか?」

 外は今にも雨が降りそうな天気に変わっていた。

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