19話 右京を起こす会 2
「じゃ、右京と漣くんが出てくるまで、朝食の準備をするから。陽色ちゃんは? 食べてく?」
紫苑は廊下の突き当たりのドアへと向かいながら、陽色に問いかけた。
「いえ。家で食べて来たので大丈夫です」
「そう。じゃあ、準備、手伝う?」
陽色が丁重に断ると、紫苑は別の問いをかけてきた。
「いやぁ……それが私はあまり料理が得意ではなくてですね……」
「そうなの! じゃあ右京に料理してもらって! あいつ得意だからね」
陽色が気まずそうに言うと、紫苑は快活に返した。陽色のことが気に入ったようだった。
紫苑はリビングに入った後、陽色にソファに座るよう促して、自分はそのまま台所に行った。
しばらくすると、漣が右京を洗面所に連れて行く姿が見れた。
「おい、ほら! 顔洗うぞ!」
「ん〜……」
漣が困った顔で手を引っ張り、右京はほとんど目を開けずにされるがままだった。
(え……かわいいです。あれは普通の女の子に見せたら卒倒しますよ?)
陽色は急に速くなる鼓動を感じながら、そう思った。自然と口角は上がった。
「陽色ちゃんって、ほんとに右京が好きなんだねぇ」
紫苑がキッチンから陽色に話しかけた。
「えっ!」
陽色は紫苑の方を見て、赤らんだ顔を手で押さえた。
「見てたらわかるよ〜。そりゃそんなに熱視線で見てたらね〜」
紫苑はニヤニヤしながら続けた。
「え、そんなに分かりやすいですか?!」
「とっても」
陽色が驚いたように言うと、紫苑は笑って返した。
「やっと終わったぜ〜」
その時、漣が右京を引っ張って、リビングに入ってきた。
「ごめんね〜、いつもありがと」
「いや、まあもうずっとやってるんで」
「そうね〜」
紫苑が少し申し訳無さそうに言うと、漣は軽く返した。紫苑もあまりしっかりと返事はしなかった。
「はい、これね〜」
「はい、食べさせま〜す」
紫苑が差し出した焼いた食パンと目玉焼きを、漣が右京の手元まで持って行って持たせて食べさせる。
「こうして見ると、右京くん、赤ちゃんみたいですね」
「そうなの〜、ほんとに手のかかる子でね」
「オネェ口調ちょっとキモいです」
「ひどい!」
陽色の冷たい言葉に、漣は大袈裟に反応した。
「よっし、終わったぞ〜」
皿の上に乗った食べ物を食べさせ終わった漣は、喜びの声を上げた。
「時間も丁度いいぐらいだし、じゃあ行くか」
「そうですね」
陽色は漣の言葉に頷いた。
そして、漣は右京の手を引きながら、駅に向かい、電車に乗った。
「ん? なんで柊がここにいるんだ?」
右京が今気付いたように声を上げた。
「お、起きたか……」
「ほんとに記憶が無いんですね……すごいですよ、これ」
2人は呆れたといった風に首を振ったり、肩を上げたりした。
「ちなみに、お前の寝起きが悪いところ、全部見られた後だから」
「は?! お前何やってんの!」
「起きないのが悪いも〜ん」
「大丈夫です! 可愛かったですよ!」
「そもそも見るなよ! 可愛いってなんだ!」
「いひひひ! あぁ……おもしろい!」
「漣! 誰のせいだと思ってんだ!」
「え、お前の寝起きの悪さ」
「くっ……否定が出来ん」
と3人で話していると、降りる駅に着いた。
「あ、うちの高校と同じ駅で降りるんですね」
「そうだよ〜、高校から近い場所にあるからね」
陽色の言葉に漣は軽く返した。当然のことだった。
そうして、3人は駅を出て歩いて行き、いつものカフェ“キャメル”へと辿り着いた。
既にドアプレートの字はOPENに変わっていた。
ドアベルを鳴らしながら、ドアを開けると、もういつもの3人は集まっていた。
「お、きた来た」
「いつも通り、右京の寝起きが遅かったね」
「陽色、おはよう」
「おはよう、日奈ちゃん」
「ほんとに大変だったわ」
「なんか悪かったな!」
6人は軽く会話をした。
そして席に付き、後から来た3人は注文をして、勉強会の2日目は始まった。
今回は少し短めでした。




