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王子様男子と恋する乙女の恋愛譚  作者: シト
1年生、1学期
15/57

15話 勉強会、始動

 さて、時間が少しだけ戻って、体育祭の2週間程前のこと。

 一般的に普通科の高校、ましてや進学校というものには、テスト――中間テストなるものがある、というのは当たり前のことだろう。

 机の上にテストの結果を置いて、涙目になっている者が1人いた。

 5教科のうち、3個ほどは赤点だった。

 「ど、どうしよう……清那ちゃん!」

 「いや、私に言われても……あんたここまで成績悪くなかったでしよ」

 そう、天翼だった。

 涙目で清那に泣きついたが、清那は軽く返した。そこそこ良かったようだった。

 「そりゃそうだろ。ここ、桔梗学園だぜ? 日本屈指のエリート高校だから、テストもむずいわ」

 「寧ろこんなんで高得点取ってる方がおかしいからな」

 右京と漣は当然といった様子で指摘する。

 「でも、右京くんはめっちゃ高いじゃん!」

 「いや、低いだろ。平均80点は」

 天翼が怒ったように右京を睨みつけると、右京は悔しそうに言った。

 「そんな右京くんに質問です! その平均点を小数点以下一桁まで答えてください」

 漣がニヤニヤと笑いながら尋ねた。

 「ん? まあ良いけど。えっと……89.9だな」

 右京が思い出すように空を見つめながら言うと、

 「はい、それは普通、90点と言います。決して、80点と言わないでください」

 「右京くん……怒るよ」

 「化物だな」

 漣は注意、天翼は睨んで、清那は呆れた。

 「え、何で? 陽色は!」

 「私はそんなに良くなかったので、言いたくありません! ちょっと右京くんにイラつきました」

 「え〜……」

 そんな3人を見て、右京は陽色を指差したが、陽色は何も言わずに顔を背けた。その横で日奈が怪訝そうな顔で陽色を見たが、それに右京は気付かなかった。

 「ぐっ……、まあ勉強頑張れば良いだろ! じゃあ次の期末の時にでも、勉強会開くか?」

 「うん! しよう!」

 右京は狼狽えながら、その代わりのように案を出した。天翼が物凄い勢いで賛成したため、そういう流れになった。



 さて、またまた時間が跳んで、体育祭後、6月になって期末テスト一週間前になった。その日の放課後、金曜日だった。

 「右京くん、忘れてないよね」

 「ん? 何をだ?」

 「勉強会、開くってこと」

 まるで念押しをするかのように、天翼が机に座っている右京の肩を握りしめながらそう言った。メキメキという効果音が聞こえてきそうな強さだ。右京は不思議そうな顔をしたが、数瞬の後に思い出して、

 「あ……あぁ、覚えてるぞ! いつやるか」

 「じゃあ、今週の土、日曜ね」

 「わ、分かった! 皆にも伝えとく」

 「うん、よろしく」

 あたふたしながら言った。色々と予定が決まったが、右京は焦ってそれどころじゃなかった。

 「あれ? 俺その日バイトじゃね?」

 と右京が思い出したように呟いたときには、既に天翼は皆の元へと走っていた。

 「おう? 気の所為かな? いま氏王の口からバイトという単語が出てきたような気がするな」

 通り掛かった男の教師――右京の担任である――がそう言った。

 いかにも女子からバレンタインのときに大量のチョコを貰ってそうな顔だ。

 「この学校、バイト禁止だぞ〜」

 「柳田……俺はしっかりと申請したぞ。しかもあんたに」

 「ん? あぁ……そういや、そうたったな。すまんな」

 「はぁ……」

 柳田の言葉に右京は呆れながら返したが、柳田の言葉には重みが無かった。

 「じゃあな」

 「はいはい……」

 それだけ言うと、柳田は手を振りながら去って行った。

 「さて、どうしたもんかね」

 と右京は頭をかきながら1人呟いた。

 


 翌日、結局右京のバイト先であるカフェ『キャルム』に5人は来ていた。

 『キャルム』はカウンター席とテーブル席に分かれており、45人はテーブル席に座っていた。

 右京は店の制服に着替えていた。白いシャツを腕まくりし、黒いパンツに黒いカフェエプロンという、右京が着ると様になる制服だった。

 「何でこんな事に……」

 「お前が天翼を止めれなかったからだろ」

 そんな状況を見て嘆く右京に漣は冷たく返した。

 「まあ、それはそうだが……。すみません、店長。コイツラのせいで」

 右京はカウンターの内側にいる白髪の初老の男――とうに60は超えているらしい――に謝った。

 「いやいや、交友関係は大事だし、たまには若い人も来ないとね。こんな所、若い子は来ないから、店が明るくなるよ」

 「うるさくならないようにするんで」

 店長は微笑みながら首を振った。右京も笑い返して、少しだけ頭を下げた。

 ドアベルが鳴り、50代程の女が入って来た。

 「いらっしゃいませ、降矢さん」

 と右京が迎えると、女――降矢は天翼たちを見て、

 「あら、氏王くんのお友達?」

 と口元に手を当てて言った。

 「はい。少しうるさいかもしれません」

 「やだ、ちょっとうるさい位が若い子は良いのよ」

 右京が申し訳無さそうに笑って言うと、降矢は目の前で手で叩くような仕草をして返した。

 「そう言って頂けるとありがたいです」

 と笑って右京は返した。

 勉強会の始まりである。

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