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王子様男子と恋する乙女の恋愛譚  作者: シト
1年生、1学期
13/57

13話 体育祭 9

 入場で、右京はアンカーで、漣はその前のため、逆方向に分かれた。

 「いやぁ……カマしちゃいましたね、右京さん」

 と笑いながら話しかけてきたのは、清那だった。

 「口裏合わせやがって」

 「だって、あんな面白いの提案させられたら、ねぇ?」

 右京が忌々しそうに吐き捨てると、清那はニヤニヤとしながら右京の顔を覗き込む。

 そうこう話しているうちに、学級対抗リレーの1人目が、列に並び、走る準備をする。

 右京たちのクラスである、1年3組は、坊主頭の横田がそこにいた。

 「お、横田なのか」

 「そうなんだな、これが」

 「じゃあ、最初は1番で回ってくるな」

 「そだね」

 と2人は笑顔で話す。

 ジメジメとした視線を感じるが、それを一切無視することが出来るのが、この2人であった。というよりかは、そんな視線に慣れているのだ。

 そんなこんなで、始まりのピストルが鳴った。

 横田は走り出し、あっという間に1番になり、そのまま次の女子へと渡す。

 抜きつ抜かれつをそれから繰り返した。

 ただ、リレーの走順が悪かったのか、20人目程になると、急に順位が下がりだした。

 右京の学年は1クラス、40人で6クラスある為、まだ余裕はあるが、油断は出来ない。

 しかし、そんな思いとは裏腹に、どんどん順位が下がっていき、30人目までいくと、最下位になってしまった。

 「あらら〜、下がったね」

 「そうだな……まぁでも、まだお前と天翼と漣が残ってるからな。しかも、3人共俺の前」

 清那は予想していたと言わんばかりに、頭の後ろで手を組みながら言った。右京も心配している様子は無い。

 「あれ、陽色ちゃんじゃない?」

 「お、マジだ…………いや、速えな」

 「ホントにね」

 清那が驚いて指を指した方を見てみると、陽色が走っていた。陽色のクラスである1年4組は、2位だったが、今陽色が1位を抜いて、1位になった。

 清那と右京の2人は驚いていた。

 まさか、あれ程速いとは思っていなかったからだ。

 そして、いつの間にか天翼の順番に回ってきた。つまり、37人目ということだ。

 「清那、早く出ろよ」

 「ほいほい」

 右京は清那に言葉で急かし、清那は軽い調子で出て行った。

 天翼はかなり差の開いていた5番との距離を詰めていた。そこから、清那にバトンが渡る。

 「ごめん、清那ちゃん! 抜かせなかった!」

 「任しとけ!」

 天翼は申し訳無さそうに言ったが、清那は気にする様子もなく、すぐに5番目を追い抜いて、次の人に狙いを定めていた。もちろん、その歓声は凄いことになっている。

 「お疲れ、天翼」

 「あぁ、うん。この後は、漣と右京だから、だいじょぶだね」

 「任せとけよ」

 2人はそんな話をして、右京はトラックの中に入った。

 バトンの行方を見ると、清那はもう1人抜いて、漣に渡していた。現在の順位は4位。

 更に漣は物凄いスピードで走り、同じクラスからの応援を浴びながら、追い抜いていった。

 競っていた2クラスを追い抜いた為、順位は2位に上がった。

 『1年3組、物凄い追い上げです』

 アナウンスも注目している。

 「ははっ! やりやがる」

 右京は笑って漣を見る。クラスメイトからの応援が耳に痛い。

 (こんだけ期待されてんなら、マジで走らないとダメだよな!)

 右京は初めて、心の底からそう思った。

 半分はあの悪口を言いやがったクソ野郎への怒りだが、もう半分はこの期待に応えたいという思いだった。

 漣がコーナーを回って、右京の元へと走り込む。

 数秒前に、1位の忌々しい奴は走って行っている。

 「おし、後頼んだぞ! 王子様!」

 「お前後で覚えとけよ……分かってるわ!」

 右京は漣の声掛けに怒りを覚えつつ、笑顔で返した。

 相手はすぐ目の前だ。本気を出せばすぐに追い付く。

 右京はセーブすることなく、本気で走った。1秒後、奴のすぐ後ろに着いた。

 わざとらしく足を鳴らしたりして、煽ってみる。

 アンカーは一周走らなければならない。まだ余裕はある。

 そして、その後は横に並んでそのままキープして、顔をガン見する。

 「どうも〜、大して足が速くない、モテるだけの氏王右京です。ははっ! 人のこと煽った割に、足、遅いっすね」

 とだけ右京は言って、更に突き放した。

 背後で悪態をつく声が聞こえたような気がしたが、そんなことは関係無い。

 このクラスを優勝させてやりたいと思った。

 全力で走ったのはいつぶりだろう。いつもは抑えて手を抜いた。だからだろう。こんなに気持ちが良いのは。

 そんなことを思って右京は走り切り、1位でゴールした。

 その瞬間は、これまでに見たことの無い、笑顔だった。

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