12話 体育祭 8
「「ふふふふふふ、ははははははははは…………」」
2人は声を合わせて笑い出した。
「うわぁ……出たよ」
「こういうときは、息ぴったりなんだよね」
「素晴らしく性格の悪さが出てますねぇ……」
清那は2人を見て引いて、天翼は呆れ、陽色は遠い目をした。
「え、何? この人たち。何で笑ってるの?」
「日奈ちゃん……気にしなくて良いよ」
驚いたように陽色を見る日奈に、陽色は諭すように言った。
「いやぁ……俄然楽しみになってきたなぁ」
「アイツの顔が歪む想像が浮かぶ浮かぶ」
右京と漣は意地の悪い笑みを浮かべている。
「さてと、俺は根回しに行こうかな」
「ん? 何だそれ」
「お前のためだよ」
「? 頑張れ〜」
「呑気だな…………ま、頑張るよ」
漣は立ち上がり、テントから出て行った。どうやら何かやることがあるようだったが、右京にはそれが何か分からなかった。
「あれ? 漣は?」
「あ〜、何か出てった。何かやるって言ってた」
「ふ〜ん。まあどうせアイツのことだからな。何かしらやらかすんだろ」
清那は漣がいないことに気づき、右京に話しかける。それに右京は応答した。
そんなこんなで話していると、いつの間にか学級対抗リレーの時間がやってきた。既に漣も戻って来ている。
「お、漣。何やってたんだ?」
「ん〜、ちょっとな。士気を上げに?」
「何だそれ」
右京の問いかけに漣は疑問形で答えた。右京は眉をひそめたが、対して深く問いはしなかった。
既にどのクラスも招集所に集まり、その場に並んで座っている。
そして、漣は急に立ち上がり、声を発した。
「1年3組の奴ら! 今から言う事をよく聞けよ!」
かなり大きい声で言ったため、当然注目が集まった。
「さっき我らがクラスの王子様がバカにされた! それに王子様は怒って本気を出そうとしている!」
右京のことを王子様と変えて、叫んだ。何やら考えがあるようだったが、当の本人は驚きすぎてボーっとしてしまっている。
「そして、王子様はアンカーだ! それでお前らやることは分かってるよな!!」
「「「本気で走って、氏王(右京)に渡す!!!」」」
そのまま漣は叫んでクラスの皆に尋ねる。それに皆は大きな声で返す。
「よし! じゃあ、一発かますぞ!!」
「「「おぉ〜〜!!」」」
漣は最後に呼びかけて、皆は掛け声で返した。
その余韻を残したまま、全クラスは立ち上がり、入場した。
「おい、漣……何やってやがる」
「ん? 別にお前の人望を見せてやろうって思っただけだ」
右京は歩いてグラウンドに入りながら連に尋ねる。漣はあくまで軽い調子で返す。
「俺も軽くいらついてたからな。やるからには徹底的に、ってな」
「いやいやいや…………、あれはどう考えてもサクラだろ」
漣は右京に笑いかけて答えたが、額に青筋が浮いている。だが、右京のツッコミどころはそこではなかったらしく、顔の前で手を振って言った。
「? 何言ってんだ。あれは正真正銘、お前の人望だぞ。俺はこうしようぜって呼びかけただけだ。横田とかにな。そこから話が広まったのは、お前だったからだよ。そろそろ自覚して貰おうと思ってな。結構お前は好かれてるんだってことをな」
あっさりとした様子で漣は返した。
右京は衝撃を受けたように固まる。
「マジか………………いや、ちょっと待て! 俺、そんな大層なことしてねぇぞ」
しかし、すぐに戻って漣に言い返す。
「お前は…………、知ってたけどやっぱり無意識か……」
漣は呆れたように首を振って、溜息を吐いた後、
「お前はこれまで、さり気なく人のことを手伝ったり、サラッと皆が嫌がることを終わらせたりしてきたんだよ! おまけに顔も良いが、彼女はいない! この時点で男子から。更に顔が良くて気遣いが出来る! これで女子からの支持が圧倒的なんだよ! 気付け! 分かれ! 察しろ!」
と早口でまくし立てた。後半は半分怒っていた。
「お、おー…………何かごめんなさい」
「分かりゃ良いんだよ」
その剣幕に押し負けて、右京は何となく謝った。漣も何故かそれを受け取った。どうやら溜飲は下がったらしい。
「ま、何がともあれ、これでお前の人望の面はアイツに見せつけたってわけだ。じゃあ後は?」
「リレーでボッコボコにする!」
「よっしゃ! やってやるぞ!」
2人は更にやる気――――殺る気を上げて、学級対抗リレーに臨む。




