私はお風呂を作る。
「それじゃ、ボクは部屋の明かりにする光の魔道具を作りますね」
空間魔法による空間自体の明かりだけだと調整が面倒だからね。私の部屋だけならともかく、ディア君の部屋の明かりは自分でオンオフできる方が良い。
「お風呂場やトイレの明かりにもするからよろしく」
「はい。といっても、仕上げや複製はカリーナお姉さんにお任せすることになりますが」
「うん、任せて!」
頼もしいなぁディア君。とはいっても、ディア君に作ってもらうわけにもいかない自分用の魔道具もあるので、私も魔道具作れるようにならないとね。
ただし、ただのマッサージ器具については健全なのでディア君に手伝ってもらっても良いものとする。
「ところでディア君。先日作ったマッサージ器具を小型化したいんだけど」
「小型化ですか? なら魔法陣の大きさを小さくしつつ、出力は大きくして……」
マッサージ器具の小型化だけならディア君に手伝ってもらっても良いものとする!
というわけで、ディア君に魔道具を作ってもらい、私はお風呂を作る。
ただへこませただけで完成とはいいがたいので、お風呂のふちには温泉っぽく石を並べて置いてみることにする。石は外に出ればわりとそこらへんにある。ある程度大きくて丸っこいのは川の付近を探せばあっという間だ。
川の石を選んでいるとイノシシが襲い掛かってきた。
今日の晩御飯はイノシシステーキになりそうである。野菜も欲しくなるな。
「エリアカッターからの、血抜き!」
イノシシは肉になった。
……この血はどうしようかなぁ。と、空間魔法で強引に吸い取った血の球体。このまま捨てるのもなんかポイ捨てみたいで気が引ける。
「内臓は森に捨てておけば動物の餌になるんだけど……スカベンジャースライムに食わすわけにもいかんしな、血の味を覚えて襲い掛かられたら困る」
普通に野営するときはそれほど血抜きはしないし、仮に血を抜いても土を掘って埋めて捨てるのが普通の手順だ、とブレイド先輩に教えてもらった。モンスターを呼び寄せてしまうからだ。
別にモンスターに囲まれたところで無双すればいいだけなんだが、まぁそれはそれ。
まぁ、イノシシの血もこんだけ綺麗に抜き取っておけば何かに使えるかもしれないし、収納空間に仕舞っておくか。収納しとけば腐らないし。
……と、血で思い出したけど、生理スキップ薬飲んでおこうかな。期間限定の方。
1年分も買っちゃったし、最初の1回分はもうスキップ確定でいいだろう。ごくん。
* * *
「ディア君みてみてー! 温泉風お風呂完成したよ!」
「こちらも明かりの魔道具の魔法陣ができました。1つの魔法陣で無段階明るさ調整をできるようにしてみたんです!」
「うわすげぇ、無段階明るさ調整を明かりの魔法陣に組み込んだの?……通常何個かの魔法陣に分けるって書いてあったのに、一つにできるもんなのか。はー、こんなんできるんだ……ちゃんと暗くすると魔力節約になるんだ、へぇー!」
「メンテナンスを考えると分けた方が良いんですが、魔石の節約を考えるとできるだけ纏めた方が良いんですよ」
うちのディア君が着実に魔道具の道を歩んでいる……!
いや、一応ジャンルとしては錬金術だっけ? 錬金術、幅広いなぁ。
「次は周囲の明るさを検知して、自動で一定の明るさになるようなのを作ろうと思ってます。無段階調整はその前段階ですね」
「重さの違う荷物を常に一定の高さに持ち上げる、とかそういうのにも使えそうだねぇ」
「そうですね! これはゴーレムにも応用できると思います!」
むふー、と得意げに笑うディア君。工学系女子っぽくて可愛いぞ。スパナ持たせたい。
「お姉さんのお風呂の方はどうですか?」
「うん、こっちも中々風情がある感じに仕上がったよ。おいでおいで」
ディア君を連れてお風呂に向かう。
そこには、露天風呂があった。正確には壁一面が大きな窓になっており、大自然を眺めつつお風呂に入れるというヤツだ。
浴槽の他にも排水溝がついており、あふれた水は適当に森の中に垂れ流している。体を洗うスペースもあるぞ。
「へぇ、広々としてていいですね。……これどこです?」
「ソラシドーレ近くの川を登っていったとこ。入ってこれたりはしないから魔物が目の前にきても安心だよ」
一応外側からは触れないし見えないようになってる。定点カメラだ。
もっと世界中のいろんなポイントに切り替えられるようにしても良いかもしれない。絶景を探して旅するのもアリだな。
「どう、一緒に入る? 背中流してあげるよ。あ、でもセッケンとかないなぁ」
「ふぁっ!? え、ええっと、遠慮しておきますっ! あ、いや、決してイヤというわけではないですがっ!!」
顔を真っ赤にして断るディア君。
からかい甲斐があるなぁ! そういうとこ大好きだよ!








