収獲 ●挿絵アリ
私、カリーナちゃん!
お友達のディアちゃんをつれて、領主様のお城へやってきたの! おてて繋いで仲良く敷地内をお散歩!
目的地はどこかしら? オバちゃんに連れられ、どんどん奥へと歩いていくわ。
「いやはや、それにしてもマリア婆が前領主夫人だったなんて。この巡り合わせは神様に感謝ですねー」
「まったくだよ。私らもカリちゃんがそんな凄い魔法使い様だなんて知らなんだ。どこで修行したんだい?」
「うーん、あっちの方?」
雑談しながら向かう先は前領主夫人、マリア婆の住む離れ。おととい潜入した所だ。
ってか歩くと広いなぁ。前は転移してたから意識してなかったけど。
かれこれ10分くらい歩いて、応接室へとやってきた。
「さて、着いたよ。じゃ、ここからはオバちゃん仕事モードだ」
「はーい。あ、私もかしこまった方がいい?」
「カリちゃんはそのままでいいよ。ここの主であるマリア婆のお友達で、大事なお客様だからね。――失礼しますマリアベル様。お客様をお連れしました」
仕事モードのオバちゃん、綺麗な声だなぁ。あれだ、電話に出た時のお母さんって感じ。
そんな風に思っていると、扉が開く。
中には、銀髪のエルフさんがいた。ディア君が女の子として成長したらこうなりますという見本のような、麗しのエルフさんだ。
それを見たディア君が、きゅっと私の手を握り、それからそっと離れていった。
一歩前に出て、キリっとした表情をお姉さんに向ける。
そして胸に手を当て、軽く会釈した。
「……姉様。御無事で何よりです」
「えっ!? ディー!? ディーなの!? なんでそんな可愛らしい格好を!?」
「え? あっ……」
ディア君は自分が今どういう格好だったかを思い出したらしい。エルフ耳の先まで真っ赤になっている。完全にフリーズしてるねこれ。つんつん、と頬をつつく。ぷにぷにだぁ。
前領主夫人としてドレスを着ているマリア婆が、困惑した顔で私に話しかけてくる。
「ちょっとカリちゃん。どういうことだいコレは」
「え? 超可愛いでしょ?」
「……いやまぁ、確かに私も男だと気付かなかったよコレは」
「どこからどう見ても女の子にしか見えないわ。嘘、ディーってば私より可愛くない? まぁなんてこと。国の外にはこんな世界があったのね……!」
お姉さんはディア君を見てなんか目を輝かせてる。素質を感じる。
一方でディア君は目端に涙を浮かべ、「ち、ちが、違うんです……ッ」とプルプルしてる。ヤバい最高。そのまま羞恥心を靴下にチャージしておくれ。
「あっ、申し遅れました。私、クミンと申します。この度は弟を助けていただき……? ありがとうございます?」
「これはどうも、カリーナです。妹さん超可愛いですね。あ、クミンさんも凄く美人で」
「ボクは男ですってばぁ!」
子犬が吠えるが如き可愛さのディア君を挟んで自己紹介を交わす。
「それでディー。なんでそんな可愛い格好をしているの? 姉様に教えて?」
「こ、これはその……えと、カリーナお姉さん、説明をお願いします……うう……」
顔を抑えてしゃがみ込むディア君。やはり男の自分を知る者に男の娘となった自分を見せる事はとても恥ずかしいようだ。
「……えーっと、確かその服は、ディアちゃんが自分に一番似合う服を自分で選んだ結果だったよね? 下着も女の子のだし。靴下も似合ってて超ヤバい可愛さでしょ? ディアちゃんは自分の可愛さを良く分かってるよね!」
「かわっ、あ、お、お姉さん!? せ、説明に重大な抜けがあります! 違うんです姉様! カリーナお姉さんが、可愛い服を着たら姉様を助けてくれると!!」
あわあわと涙目で言い訳するディア君。あー、めっちゃ可愛ぇー。
「そういえば先日公衆浴場に痴女のエルフが出たって聞いたけど……まさか」
「ほらディアちゃん、やっぱり女湯に入るべきだったんだよ!!」
「それは絶対に違いますよお姉さん!! あの、姉様! 信じてください! 僕は痴女じゃないですから!」
あー、可愛い。脳髄がジンジンと痺れる水で潤っていく感覚。身内に初めて女装姿を見られて顔を真っ赤にしてる男の娘でしか摂取できない栄養素がある。
そんなディア君の目端から涙が零れそうになったその時、マリア婆がパチンと手を叩いた。
「いやぁ、うん。私は変装としてすごく完成度が高いと思うよ。ねぇ?」
マリア婆がお姉さんに「変装だったんだよ」という事で纏めようと水を向ける。
なるほど、うまい解釈だ。前領主夫人は伊達じゃないなマリア婆。
「はっ、そ、そう、変装ね。ああ、だから女の子の格好をしてたのね、ディー」
「そ、そうなんです。この格好は身を隠すため仕方なく? で、ですよね、カリーナお姉さん!?」
仕方ないなぁ。あんまりいぢめるのも可哀そうだしこのくらいにしてあげよう。
「私はその格好の方が好きなんだけど……じゃあディア君。着替えていいよ? はい、これディア君の着てた服。返すね」
「あう。あ、ありがとうございます」
ディア君に、最初に着ていた服を手渡す。靴下だけこっそり新品に差し替えているのは御愛嬌。男の娘の、男の子だったときの靴下と併せて神様に提供したく存じます。
「では、着替えてきますね」
「え? ここで着替えればいいじゃん。男の子なら、何にも恥ずかしくないでしょ?」
「……いや恥ずかしいですよ?」
「じゃあ先に靴下だけ返して。ならいいよ」
「それくらいなら、まぁ……」
と、靴下を脱ごうとするディア君。しかし、今履いている靴下は黒のオーバーニーソ。つまり、太ももまである長い靴下。スカートを捲し上げて、手をひっかけようとすれば当然――みえ、みえたっ! ここだ!
「ディアちゃん。お姉ちゃん達にパンツ見えちゃってるよ?」
「ひゃえっ!?」
ディア君は、私の言葉で反射的にスカートを抑えた。再び顔を真っ赤にして、プルプル震えている。可愛い。
「あれー? どうしたのディアちゃん? スカートの中見られて恥ずかしいなんて、可愛いねぇ。さ、続けて?」
「う、うう……お姉さんの意地悪ぅ……」
ディア君は、私の狙い通りに羞恥にまみれながら、スカートの中身が見られないよう細心の注意を払ってニーソを脱いだ。そして、着替えを手にして隣の部屋へと向かった。
……私は脱ぎたてニーソを即座に収納空間へ片付けた。
じっくり育てた果実は、ついに収獲されたのだ。
神様、ご覧いただけましたか!
『大変ぐっじょぶです! 男の娘前後セットで100SPを約束しましょう! さらに査定額3倍のレッドチケットもお付けします。実質300SPですよ! ひゅー!』
おっと、脳内に直接感想が!……私は間違っていなかった! やったぜディア君、ディア君のおかげだよ!
「なぁ、私らは何を見せられていたんだい?」
「分かりませんが、ディーが大変可愛かったのは間違いありませんね」
弟が辱められているのをみて口端がニマニマしてるクミンさん。
やっぱり素質があると思うよ!
 








