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エリアカッター、略してエアカッター。●挿絵アリ


 ゴーレム。どうやら中に船員が乗っているらしい。見るからに重そうなゴーレムがドスンドスン歩いても甲板に穴が開いたりしないんだから、海神の加護が働いているんだろう。


「さて、ゴーレムが相手かぁ。楽しみだなぁ」


 ずしん、と目の前に並んだ2体のゴーレム。戦闘用らしく、港で見たゴーレムよりさらに騎士甲冑に近い。身長3mの巨人が全身鎧を纏ったような、なかなか味わいのある見た目。……だが、私の敵たり得るかは、別の話。

挿絵(By みてみん)


 2体ゴーレムがいるんだ、1体は壊してしまってもいいだろうか。でもまぁ、まずは1体を無力化しておこう。


「とう、エアカッター!!」


 と言いながら空間魔法で手足を外す――がこん、と胴体が甲板に落ちた。

 スパッと綺麗に落ちた手足。ケーブルやパイプ、装甲が滑らかな断面図を見せている。

 それを見たゴメスが目を見開いて叫ぶ。


「――は? ば、馬鹿なッ!? ゴーレムにも海神の加護がかかってんだぞ!? かすり傷だってつかないはずなのに!!」

「ん? そうなんだ?」


 スパッと切れたように見えるが、実際にはまだ繋がっているからかもな。

 そう思って、もう一体のゴーレムに今度は空間切断を試みる。


「もういっちょエアカッター!……確かに切れないな。へぇ、やるじゃん加護」


 空間切断で処理しようとしたところ、今度は腕にバチンと弾かれた。

 なるほど。切らなきゃ大丈夫だけど、傷つけようとすると加護に弾かれるのか。空間魔法は神様から貰った魔法だけど、加護とかではないからなぁ。


「おい! やられる前にやれっ! とっ捕まえろ!」

「い、行くぞゴーレム!」

「おっと」


 振り下ろされたゴーレムの拳を、私は腕で受け止めた。

 痛くもかゆくもない、なにせ無敵状態だからね! 加護で保護された甲板が壊れたりすることもない。


「とりゃー!」


 ゴーレムの腕を掴んで持ち上げる。


「嘘だろ!? ゴーレムの身体がどんだけ重いか知らねーのか!?」

「知ってても知らなくてもゴーレムの重さは変わらないでしょ。まぁ知らないけど……えいっ」


 そして、海賊の下っ端の方へと投げ捨てた。


「ぎゃひっ!? 踏まれたっ、どけてくれ!」

「たすけてくれぇ! 重いっ!」

「動くんじゃねぇ、潰れちまうぅ!」


 おおっ、これはやっぱり船員も保護されてんのかな? もうちょっと暴れてもいいかもしれない。


「チクショウッ、なんでだ!? お、おい、おまえら! 魔法を浴びせかけろ! 銃もだ! やれ、やれ!」

「え、あ、ウォーターボール!」

「バーストウォーター!」

「ブラインドミストぉ!」


 水系の魔法が私に向かって飛んでくる。ヒヤッと冷たいし、霧で視界が白くなる。

 その上でパチンパチンと鉄砲玉が身体に弾かれ跳弾していった。

 うーん、無敵(スター)状態じゃなかったら危なかったな。無敵だから大丈夫だけど。


「やったか!?」


 霧が晴れて、無傷の私を見て顔を引きつらせるゴメス。


「――ひっ!」

「残念、やってないねぇ。そんなセリフ言うからだよ?」

「バケモンがぁ!……こうなったら仕方ねェ。偉大なる海神、ポセイドンよ! 船に招かれざる客あり! 強制退艦!!」


 バチンッ!! と、私が船の外にはじき出された。……足場がない。下を見れば海だ。船に弾かれてしまったかぁ。


「おっ。これはこれは……」

「ははっ、どうだ、これであいつも海の藻屑――って、浮いてるッ!?」

「おう、何私を締め出してんだ。私は私の締め出しを許可してないぞ!」

「海に落ちろよぉ! このバケモンがよぉ!!」


 海上で船から追い出されるとはねぇ。やるじゃん。普通なら確かに海に沈むだろうし、海の魔物に食べられてしまうだろう。

 しかし私は空間魔法で座標固定することで落ちずにいられるんだ。っていうか浮けるし飛べる。


「ん? 戻れないなぁ」


 ……うん、でも再び船の中に入ろうとしても、なんかうまく入れないぞ? バリアが張られてる感じだ。


「馬鹿め、海神の加護に守られた船に入れるかよ! おまえら! 中からアイツを打ち落とせ!」


 ゴメスの声を合図に、再び魔法や弾が飛んでくる。

 ……えい、魔法の筒(マジックシリンダー)


「うわぁああ!? 反撃してきた!?」

「ば、ばかなっ! この船の中に攻撃が!?」


 おー、自分たちが撃った攻撃は戻ってくのね。

 でも、それだけで攻撃するのは手間だ。ゲームに出てくる親切な敵キャラでもあるまいし、自分達へ返されるような攻撃をいつまでもしてくれはしないだろう。

 つまり自分で攻撃してやらなきゃいけないわけだ。はー、めんど。


「――超エアカッター!」


 私が船の横から手刀を振るうと、船はずずんっと真っ二つに割れた。

 空間魔法(非切断)で船をサバ折りである。切った甲板の中央を蝶番のように、船首と船尾が天を向きはじめた。


「うわぁあああああ!?」

「ふ、船がっ! 船がぁああ!?」

「お、俺の腕が海に落ちたぁ!? 切られたのに痛みがないし血も出ない!?」


 乗り捨てられたゴーレムが海に落ちる。勿体ないのでその瞬間に回収だ。


「さぁ、みんな仲よく海で泳ごうぜ! 私は飛ぶけどな!」

「ば、馬鹿な、馬鹿な、馬鹿なぁあああああ!!!!」


 ゴメスをはじめとして、甲板に出ていた海賊たちは、一人残らず海へと滑り落ちて行く。

 おっと、ゴーレムを回収しておこう。中身はいつの間にか逃げていたし、結局傷はつけてないから無傷の2体、美味しいです!


「それとこれも貰っとくね」


 一通りが海に落ちたところで、真っ二つになった船を収納空間に回収した。

 船を丸ごともっとけば神器『ポセイドン』も回収できたってことになるだろ。多分?


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「あとはご自由にどうぞ!」の書影です! Ixy先生の書いたカリーナちゃんとディア君ちゃんだぁ!!!
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新作、コミカライズお嬢様ですわー!!
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― 新着の感想 ―
[一言] 誤字報告出してますが、 >……だが、私の敵足り得るかは、別の話。 『足り得る』→『たり得る』 ですね。動詞『足る』ではなく、助動詞『たり』です。 動詞『足る』を使うなら『私の敵に足る(…
[良い点] イラストありがとう〜 正直、仮にもあのメッチャ強い神様の使徒である主人公さんにここまで抗戦できたとは海神の加護というのはマジ本物ですね。 まぁ、このクズ海賊たちにはそろそろ五月蠅く思ってき…
[良い点] 空間魔法(非切断)強いww 船ごと神器をゲットだぜ! どっちが悪役だったっけww [一言] 更新お疲れ様です
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