コンニャク業者に違いない。
婚約者……
いや、聞き間違いだろう。コンニャク者、つまり御用達のコンニャク業者に違いない。
そっか、よかったよかった。じゃあ私も久々に玉コンニャクや刺身コンニャクでも――
ってんなわけあるかい!! 婚約者!?
そんな貴族じゃあるまいし――って貴族どころか王族かぁー。そりゃなんも不思議じゃねぇわ……
え? ってことはディア君、婚約者がいるのに男の娘してるってコト?
あいや、男の娘させてるのは私なんだけど。
えーっと、ディア君一人と女だらけの拠点……えっちなやつですね分かります。
あれ?
んんん?
ディア君って私の事好きなんだよね?(神様調べ)
えっと、婚約者をほったらかして船旅からの放浪の旅……そして平民の女を連れての凱旋……?
まて、まて、まて。どこかで聞いたことあるぞ。恋愛モノでよくある話じゃないか。
乙女ゲーではこういうのあるんだろ? 私は詳しいんだ。
王子が攻略対象者で、婚約者をないがしろにしてヒロインを溺愛するやつだ。
そんで本当の主人公はこの婚約者で、ヒロインと王子をざまぁするヤツ……!
い、いかん! 私、このままだとざまぁされてしまう! ディア君にあんなことやこんなことして、断罪される心当たりしかねぇーーー!!!
「――ぇさん! お姉さん、そういうことですからね!? 聞いてました?」
「ハッ! え、あ、うん! 聞いてたよ!? そういう事ね?!……あ、はは、はぁ」
「分かってくれたならいいんですが」
気が付けば、婚約者のフレアタルトちゃんはいなくなっていた。
しまった。脳内で『この間わずか0.1秒――』とかだと思ったのに普通に時間経過してたわ。あまりのショックで固まってたわ。
……こ、婚約者かぁ。ディア君、そういうの居たんだぁ……ふぅん。
でも、というか、そうだよねぇ。ディア君、偉い立場なんだから婚約者くらい当然いるよね。
ただ、その上で私の事好き、なんだよね……?(神様調べ)
うぅ。不貞や浮気は良くないと思うよ私!
私既に奥さん5人いるけど! ドワーフ文化では合法だから不貞じゃないし!
まぁそれをエルフ文化や人間文化で言ったら「は?」ってなるわけだけど。
恋人に獣人のマシロさんもいるけど、ドワーフ文化ではやっぱり合法だし!
まぁそれをエルフ文化や人間文化で言ったら「は?」ってなるわけだけど。
夜のお店でハルミカヅチさんとねんごろなコトもしてるけど……そういやドワーフ文化で言うとどうなんだろコレ。奥さんいるのに外でとか。
人間文化だと普通にアウト判定だろうけど。エルフも当然アウトそう。
……うん。私ってば不道徳まっしぐら、性欲まみれの脳内ピンクお花畑!
私、もしかしてディア君のそばに居ちゃダメなダメ人間なのでは? ダメ人間標本、見本そのものでは???
いやでも、ディア君って私の事好きだし……いやいやだからこそ、大人である私の方が節度をもって……
そんな風に考え事をしている間に、午前中の授業が終わった。
「カリーナ様、お話があります。少々よろしいですか?」
昼休みになると、薄緑色の長い髪をふわりと揺らしつつフレアタルトちゃんがまたやってきて話しかけてきた。
こ、これはお呼び出し……! 「平民女がディア君様を誑かして! 婚約者として釘を刺さねば!」的なやつ!?
「フレアタルト。お姉さんは君にかまってる暇なんてないんですが」
「そ、そんなこともないよ。ちょっといってくる!」
「え? あ、ちょっとお姉さん!」
庇ってくれるディア君をおしのけて、私はフレアタルトちゃんのお誘いに乗った。
うう、ディア君のことしっかり弁護しなきゃ! 私が全部悪くてディア君は悪くないんだよっ!
ディア君を教室に置いて、フレアタルトちゃんの手を引いてダッシュで教室を出る。
うっかり痛くないようにフレアタルトちゃんを無敵状態にしつつ3mm浮かして引っ張る。
「ちょ、ちょっとカリーナ様!? なんですの!? なんなんですのこれ!?」
「ま、ま、まぁ、ちょっとね! えっと、あっちの校舎裏の方でいいかな?」
「え、あ、はい」
そして校舎裏で二人きりになる私とフレアタルトちゃん。
レンガ壁の校舎に背を預け、話を聞く。
「……えっと、そ、それで。私に話って?」
「あ、その。えっと。カリーナ様は、ディーアソルト様のなんなのか、とお聞きしたくて」
ハッと気を取り直して私にそう聞いてくるフレアタルトちゃん。
……私が、ディア君の何か……? なんなんだろう……お姉ちゃん、は違うよな。クミンさん居るし。
当然恋人とかそういうのでもないわけで。かといってただの家主と居候とも言いたくない。
「あー、えー、あー。うん。お、お友達だよ」
「お友達、ですか」
あの距離感で。と言外に聞こえた気がした。
……くっ! なんだこれ、私の言動がまるで過剰なボディタッチで王子を誑かす平民ヒロインちゃんじゃん!! お友達ってのも「仲の良いお友達なの! そんな風に疑うなんて! ぷんぷん!」みたいなヤツにしか聞こえないよぉ!!
「ちがうの! 弁明させて!」
「え、お友達ではない、と?」
「いやお友達なんだけど……!! やましいことはホント一切してないから!!」
「アレで、ですか?」
「昨日制服デートして一緒にマシュマロ食べました……そのくらいだよ!」
「まぁ!」
口に手を当てて驚いた顔をするフレアタルトちゃん。
あ! そうだよね、婚約者からしたらデートした報告とか「なんだお前。喧嘩売ってるのか?」だよね……
でもなんだろうこの婚約者ちゃん、少し嬉しそうな感じだぞ?
「あれ、フレアタルトちゃんってもしかしてディア君のこと好きじゃない感じ?」
「いえ? お慕い申し上げていますわ?」
「だ、だよね。あんな可愛いのに嫌いなわけないよね」
「……男性の方に可愛いという評価はどうかと思いますが、ええ、まぁ」
くっ! ほかに好きな人が居るので婚約者辞めたい、貰って行ってくださいルートはナシか!!
「えと。フレアタルトちゃん」
「フレッタでよろしくてよ、カリーナ様」
「じゃあフレッタちゃん。フレッタちゃんは、その、ディア君と結婚、したいの?」
「当然ですわ!!」
くっ! 可愛い笑顔!! エルフ同士でお似合いすぎる……!!








