お姉さん、やりすぎでは?
世界は光に包まれた――
いや、世界滅亡したとかそういうわけじゃなくて、単に私達の視界が光に染まっただけなんだけど。
危うく目が潰れるかと思う閃光だった。
そして水晶はバチンッと弾けるように割れていた。破片が飛ばないように空間魔法でバリアを張っておいたが、思ってたよりは爆発しなかったなぁ。すごい光だったけど。
「め! 目が! 目がぁあああーーーー!?」
「すみませんラクト先生。先生にもサングラスを渡しておくべきでしたね」
のたうち回るラクト先生の横で、ディア君はちゃっかりとサングラスを付けていた。いつの間に……あ、レナが渡したのね。
「ごめんよラクト先生。ちょいと失礼、網膜修復……ヨシ!」
「はっ! 見えるようになりました!」
眼鏡をはずしてゴシゴシと目をこすり、また視界を確認するラクト先生。
「……あれ? なんか目の調子が良いですね。ん?」
「ついでに近眼も治しといたよ」
「えっ」
ぱちくり、と目を瞬かせる。その手には不要になった眼鏡。確認のためか再びかけて、そしてまた外し、かけて、外し、かけて……外した。
「この眼鏡、結構高かったんですが……不要になりましたね?」
「まぁお詫びということで」
「ええと、ありがとうございます?」
眼鏡オジサン好きには悪いことをしてしまったな……許せ。
「ああ!? っていうか本当に水晶爆発してるじゃないですか!!」
「言ったじゃないですか。お姉さんの魔力だと爆発するって」
「ディーアソルト君! 確かに言いましたけど、なんですか!? アレ間違いなく純粋な魔力でしたけど!? この人間族の人にドラゴン100匹分くらいの魔力があるということですか!?」
「ええ、あるんじゃないですか? だって、そのくらい光りましたよね」
「……はぁー、そりゃ測定不能ですねぇ。点数は最高点つけときますか」
切り替えが早い。ラクト先生はそう言ってメモを取っていた。
「あ、これ予備の水晶玉です、どぞ」
「……あ、助かります。ホントこれ高いんで……特に水晶部分が、この大きさでここまでの透明度のものがなかなかなくって」
「ん? じゃあ気泡とかない方が良い?」
「え。まぁそうですね。透明であればあるほど良いですが」
「じゃあ消しときますね」
よくよく見れば水晶には気泡とかインクルージョンなんかが若干だけ含まれていた。ない方が良いなら消しておこう。
私はラクト先生に持たせた水晶玉に布をかぶせて「ワン・ツー・スリー!」と手品のようにして、気泡などを消し均一に透明な水晶玉にしてみせた。私が作った複製なので、そこもちょちょいのチョイである。
「……!? え、ちょ!? ええ!? 本当に消えましたよ!?」
「お姉さん、やりすぎでは?」
「あ、戻した方が良い? ディア君がそう言うなら仕方ない。ラクト先生、ちょっと」
「いえいえいえいえ! とんでもない、ありがとうございます!!」
ラクト先生は私にまた何かされる前にと測定水晶をずぼっと袋に入れていた。
あ、こっちの割れちゃった方はもらってもいい? いいよね、いただきまーす。
「……ディーアソルト君。この人、何者なんですか?」
「えーっと。秘密です」
「秘密ですかぁ……」
なにやら深いモノを察したかのように、ラクト先生は遠くを見つめた。
いやいや、そんな裏なんてないよ? 正体って言っても単に神様の使いっ走りってだけだし。そこらの教会にいるシスターとなんら変わんない存在でしかないって。ね? フツーフツー。
「えーっと、では次は射撃系魔法の腕前を見せてください」
「はい先生! 射撃系魔法って、射程があればなんでもいいですか?」
「この試射場を壊さない程度のものでお願いします。一応防護魔法はかかっていますが、物事には限度というものがあるので」
おっと、ここで防護結界があるから何でもいいですよって言ったらエリアカッターでもしようかと思ってたのだけど、流石に水晶玉の惨事を見た後ではそうは言ってくれないか。
「的は今出しますね。――クレイターゲット!」
ラクト先生がそう言うと、試射場の壁際にボコっと的が生えた。ちゃんと棒に丸い板がついているような形だ。
ほほう。面白い魔法じゃないか、そう言うのもあるんだなぁ。
「ふぅ。それじゃあの的に当ててください。壁は壊さないようにお願いします」
「はーい。じゃあ折角だから私もクレイターゲット!!」
と言って空間魔法で土を増やしつつ的の下から同じ感じの的を生やした。ボコッ! 的は倒れた。
「どっすか!? 真下からでも的に当たったからOKっすよね?」
「……ディーアソルト君。アレ私のオリジナルだったんだけど。私、この人が生徒として教室に来ても教える自信ないよ?」
「大丈夫です先生。カリーナお姉さんは学校生活を楽しみたいだけらしいんで」
「あー、そういう? なるほどねー。ハイハイ……実際満点ですけど、少し減らしときますか? 注目されたくないならそう考慮しますよ」
「あ、満点で大丈夫でーす」
むしろ注目されてディア君も一緒に見られた方が神様的にはいいだろうからね……!
っていうかラクト先生かなり柔軟だなぁ、嫌いじゃないよ。これで美女教師だったら惚れてたかもね。
「じゃ、合格ね。ディーアソルト君と同じ教室で大丈夫だから、明日から好きに来てください」
「わーい!」
そういうことになった。教科書も明日の朝には間に合うといいなー。
あ! でも間に合わなくてもディア君に「教科書見せて?」ができるからそっちでもいいかもー!
(以下お知らせ)
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