ニコリとほほ笑んで誤魔化した(アイシア視点)
エルフの国、ベルトクス。
アイシアは空間魔法で作られた拠点の覗き窓から、そっと主であるカリーナと、その隣にて寵愛を受けるディア君を見つめていた。
町に入って二人並んで御者台に座ってイチャイチャしている。はたから見れば、微笑ましい姉妹のようだ。人間とエルフではあるが。
ちなみにこの覗き窓は拠点とのやりとりをするためのもので、外部からは見えないように偽装されている、らしい。声はやりとりできるし、拠点側から外を見る事もできる。丁度カリーナの少し後ろ、後ろから見守る位置に窓があった。
アイシアの傍らには五大老がひとり、リーダーでありテッシン女王のバーミリオンこと、ミーちゃんも居た。
「お、あるじ様がディア様を撫でましたね! 唐突に!」
「いやぁー、これはカリちゃん無意識に求めてるね……っ!」
尚、ミーちゃんの手には密談用の魔道具が握られている。外部の声は聞こえるが、内部の声は漏れなくなる一品だ。これを使って、一方的にカリーナとディアのイチャイチャを鑑賞する構えだった。
「そういえば、最近あるじ様、ディア様に自分のニオイを擦り付けるような行為が多いんですよね」
「なにそれマーキング的な?」
「はい。レナが来たじゃないですか?」
「あー、レナ様に対抗してかぁ。じゃあ仕方ないね」
うんうん、と納得して頷くミーちゃん。
尚、物作り大得意ドワーフ代表のミーちゃんなのだが、錬金術を司る混沌神の眷属たるレナには魔道具の分野でさすがに劣った。
細工物はともかく、道具の性能で負けたので、様を付けて呼んでいる。
(カリーナも神の眷属だが、こちらは内縁の妻妻という関係なので愛称である)
「ちなみにそのマーキングって、ディア君ちゃんはどういう反応なの?」
「ベタ惚れですからね。頭を抱きかかえるようにしてさりげなく腋を擦り付けられるのも、まんざらでもないというか、むしろ嬉しそうです」
「今度カリちゃんの腋のニオイの香水でも作ろっかな。そんでディア君ちゃんにもプレゼント!」
「あ、私も欲しいですミー様」
少し欲望にまみれたアイテムの話をしつつ、改めて御者台の二人を見る。
カリーナがディアの胴体を持ち上げて、自分の前に座らせた。後ろから抱えるような形で、実質カリーナが椅子になっているような状態だ。
二人が見守る後ろからは見えないが、きっとディアの顔は真っ赤になっているだろう。
「ミー様、これはディア様を誰にもあげないという意思表示でしょうかね?」
「色々当ててるねぇ。カリちゃんだし無意識の可能性あるけど。ポニテ嗅いでるねアレ」
「ディア様ドッキドキですね!」
「ウチらもアレやられたいよねぇ……! カリちゃんにアレをやられて喜ばぬ五大老はいないよ! あ、でも5人でカリちゃんを取り囲む椅子になるのも良いんだよ? アイシアも混ざる?」
「楽しそうではありますが、やめときます」
椅子になるのは興味はあるが、さすがにそこに祖母が居るとなるとドワーフ的にも混じるのはちょっとアレというか。母親ならまだしも。さすがに。うん。
「そういえばカリちゃん昨日お風呂入ってたっけかな?」
「馬車の御者台に座ってボーっとしてるだけですし、あんまりお風呂入ってて身綺麗にしてると行商人として怪しまれるとかで入ってなかったかと思いますが」
「ということは……ふむ、ディア君ちゃんは今、むわっとしたカリちゃん臭に包まれている……ディア君ちゃんのディア君ちゃんが大変なことになりそうだねぇ!」
アイシアはニコリとほほ笑んで誤魔化した。
(今月末(11/29)、「いつかお嬢様になりたい系ダンジョン配信者が本物のお嬢様になるまで」のコミック1巻が出ますわー。
原作私! あ、カクヨムで連載してたやつですわよ)








